ひな祭りに飲む「白酒(しろざけ)」をご存知ですか? また、中国にも「白酒(パイチュウ)」という蒸留酒があります。その2つにはどのような違いがあるのでしょうか?

当記事では、それら2つの違いや、ひな祭りに白酒を飲む由来などもご紹介しています。

■白酒の種類

表記は同じでも、日本のひな祭りに飲む「白酒(しろざけ)」と、中国酒の「白酒(パイチュウ)」は、似て非なるもの。ここでは「白酒(しろざけ)」と「白酒(パイチュウ)」それぞれの特徴を解説します。

日本の「白酒(しろざけ)」

白酒とは、蒸した白米と米麹(こめこうじ)を混ぜ合せ、それに酒や焼酎を加えて熟成させ、石臼でひいて造る、白く濁った甘味の強い酒のことです。

古来よりひな祭りの際に飲まれ、戦国時代よりも前から発達したものといわれています。

中国酒の「白酒(パイチュウ)」

中国酒の一種になるパイチュウは、キョクシという麹(こうじ)を用いて造られている蒸留酒。コーリャン(モロコシ)やトウモロコシ、ジャガイモを原材料に蒸しています。別名「高梁酒(コーリャンシュ)」とも呼ばれる、無色透明の酒です。

■ひな祭りにいただく日本の「白酒(しろざけ)」

ひな祭りにいただく日本の「白酒(しろざけ)」
ひな祭りにいただく日本の「白酒(しろざけ)」

甘く口当たりがいいため、ついつい飲み進んでしまう白酒。しかし、なぜひな祭りに白酒をいただくようになったのでしょうか? その由来は古来の中国にありました。

白酒(しろざけ)を飲む由来や意味

古代中国から伝わって日本に定着した暦である「節句」。特に、伝統的な年中行事が行われ、季節の節目となる日も「節句」と呼ばれます。

節句の日には、新しい季節を迎え入れるためのお祓いや、お清めの行事・儀式が執り行われていました。

1年の中でもさまざまな節句がある中、江戸時代に幕府が正式に定めたのが、1月7日の「人日(じんじつ)の節句」、3月3日の「上巳(じょうし)の節句」、5月5日の「端午(たんご)の節句」、7月7日の「七夕(しちせき)の節句」、9月9日の「重陽(ちょうよう)の節句」の5つ。これを「五節句」といいます。

中でも、上巳の節句に行われていた、人形とともに邪気を川に流す行事「流し雛」が、雛人形の始まりとされているようです。

またこの日は、同じく邪気払いのため、桃の花を清酒に浸した「桃花酒(とうかしゅ)」が飲まれていました。古代中国では、桃は邪気を払う仙木であり「桃の花を酒に入れて飲めば、百害を除き顔色を増す」といわれていたそうです。また、桃が百歳を表す「百歳(ももとせ)」に通じることから、桃花酒は薬酒としても飲まれていました。

そのため、上巳の節句が「桃の節句」と呼ばれ、のちに「ひな祭り」となり、ひな祭りには、桃花酒の代わりに白酒を飲むようになったとされています。

白酒を飲むようになった由来は諸説あります。

ひとつは、大蛇をお腹に宿してしまった女性が、3月3日に白酒を飲んで、胎内の大蛇を流したという説。それにならい、厄除けや厄祓いの意味から、女の子に白酒を飲ませるようになったともいわれています。

また、江戸時代には、庶民にもひな祭りという行事が広まりました。3月3日に白酒を飲む風習の仕掛人は、東京都千代田区の老舗酒店「豊島屋(としまや)」本店の創業者である、豊島屋十右衛門(じゅうえもん)という説もあります。

ある晩、「夢枕に紙びなさまが立ち、白酒の作り方を伝授していただいた」として、桃花酒の代わりに白酒を売り出し、江戸中の評判となったともいわれているようです。

白酒(しろざけ)と甘酒は違う

白酒(しろざけ)と甘酒は違う
白酒(しろざけ)と甘酒は違う

ひな祭りに飲む白いお酒や飲み物は、「甘酒」だと思っている方も多いのではないでしょうか。白酒と同じく、甘酒もその見た目は白く濁っているため、違いはわかりにくいですよね。

甘酒とは、白米などに米麹(こめこうじ)を混ぜ合わせた後に保温して発酵させ、米のデンプンを糖化させたもの。つまり、この製造法でつくられる「米麹の甘酒」は、酒とは名ばかりの甘口の飲み物のことを指します。

しかし甘酒も、米麹の甘酒と「酒粕(さけかす)の甘酒」の2種類があり、後者には少量ながらアルコールが含まれています。ちなみに酒粕とは、造酒の際に出る絞り粕のことをいい、初詣や縁日などで振舞われる甘酒は、酒粕由来のものが多いようです。

甘酒は白酒と見た目が似ていて、ノンアルコール(または、低アルコール)のため、女性にピッタリとのことから、昨今のひな祭りで飲まれるようになったのではないかとされています。

甘酒は、女性の美容健康をサポートしてくれる、うれしい作用がたっぷり詰まったヘルシー飲料なので、ひな祭りにもマッチしていますね。

白酒(しろざけ)の飲み方

白酒を飲むのであれば、白酒が持つ本来の味が楽しめるストレートをおすすめします。もちろん、オンザロックにしてもその口当たりはよく、水割りやカクテルなどにしても美味しくいただけます。

ストレートで飲むときには、シンプルなショットグラスがいいでしょう。ロックやカクテルの場合も、控え目でタイトなグラスが合います。

■本当においしくないの!? 世界三大蒸留酒「白酒(パイチュウ)」

本当にまずいの!? 世界三大蒸留酒「白酒(パイチュウ)」
本当においしくないの!? 世界三大蒸留酒「白酒(パイチュウ)」

ひな祭りに飲む日本の白酒と同じ表記の、中国酒「白酒(パイチュウ)」。

「パイチュウって、アルコール度数がかなり高くて、控えめに言ってあまりおいしくないお酒だよね…」なんて感想をお持ちの方も、いらっしゃるかもしれません。

しかし、そんなことはありません! 日中国交回復の式典で、両国首相が乾杯を交わしたとされるパイチュウの銘酒「茅台酒(マオタイチュウ)」は、スコッチウィスキーやコニャックブランデーと並び、世界三大蒸留酒に数えられるほど、評価の高いお酒なのです。

白酒(パイチュウ)の分類:「高梁酒」「包米酒」「大曲酒」「麩曲酒」「汾酒」「茅台酒」など

中国では、先にもご紹介した「高梁酒」をはじめ、「包米酒」、「大曲酒」、「麩曲酒」、「汾酒」、「茅台酒」など、中国全土のさまざまな産地で、特色のあるパイチュウがつくられています。原材料・麹などの違いによっても、味や香りが異なります。 

ですので、簡単に分類しづらいとされていますが、原材料や香りと味で分けると、以下のようになります。

原料による分類:コーリャン(モロコシ)が原料の「穀物白酒」、サツマイモが原料の「甘藷(カンショ)白酒」など

香型(シャンシン:香りと味)による分類:濃い香りと甘い後味のバランスがよい「濃香型」や、濁りのない香りと余韻が続く「醤香型」、上品で雑味のない味わいと香りの「清香型」など

中国国内で最も飲まれている、正式に格付けをされたパイチュウは、濃香型が多いとされています。

どんなときに飲むの?

中国のパイチュウは、食中酒としてはもちろんのこと、祝い酒としても飲まれています。乾杯の際にパイチュウを飲み干し、宴会の幕を開くといった飲み方が有名です。

ちなみに、パイチュウのアルコール度数は45度や50度、中国山西省汾陽県産のパイチュウ「汾酒(フェンチュー)」などになると、60度を超えるものも珍しくありません。小さなグラスに注がれたからといって、ビールのように一気に飲むのは控えたほうがいいでしょう。

白酒(パイチュウ)の飲み方

アルコール度数の高さが際立つパイチュウですが、芳醇な香りを特徴とする格式の高いものも多数あります。飲む前にアルコール度数を確認した上で、香りを損なわない飲み方を意識しましょう。

パイチュウをストレートで飲む場合、チェイサー(口直し用の水)を用意しておくと、悪酔い防止になります。

また、オンザロックで飲めば、氷が舌の火照りを抑え、パイチュウが味わいやすくなるため、お酒があまり得意ではない方にもおすすめです。

■高級白酒(しろざけ)のおすすめ

日本の白酒は比較的リーズナブルなものが多く、手に取りやすいのも人気の秘密。今回は、そのような白酒の中でも、厳選した「高級白酒」をご紹介します。

「博多練酒」(若竹屋酒造場)

「博多練酒」(若竹屋酒造場)
「博多練酒」(若竹屋酒造場)

室町時代の名酒製法の書「御酒之日記」 に記された製法をもとに10年がかりで復元に成功した「博多練酒」。

一般的な白酒よりも非常に飲みやすく仕上がっています。その口当たりは、フルーティーでまろやか、程良い酸味があり、まるで米を溶かしたようにも感じる酒です。

アルコール度数は3%程度のため、お酒の弱い方や食前酒としてもおすすめの白酒です。 

楽天市場で詳細をチェック!>>

「旭富士 藤澤藤左衛門商店 白酒 1.8L 」(旭富士)

「旭富士 藤澤藤左衛門商店 白酒 1.8L 」(旭富士)
「旭富士 藤澤藤左衛門商店 白酒 1.8L 」(旭富士)

スプーンですくって食べる(飲む)白酒、「旭富士」。アルコール度数は8度で、飲みやすく、まろやかさが人気です。

高級料亭では、焼き魚などに軽く塗ったりなど、調味料としても使われています。 

amazonで詳細をチェック!>>

■高級白酒(パイチュウ)のおすすめ

年間100億リットル以上が消費されているとされる中国のパイチュウですが、ここでは国内外で数々の受賞歴を持つものや、八大銘酒の一つに数えられるものなど、誰もが認める「高級白酒」を選んでみました。

「五粮液(ごりょうえき)52度 500ml」(五粮液)

「五粮液(ごりょうえき)52度 500ml」(五粮液)
「五粮液(ごりょうえき)52度 500ml」(五粮液)

「五粮液(ごりょうえき)」は「茅台酒(マオタイチュウ)」と並び評される銘酒。自然の恵みを受けた四川省で造られた重厚で上品な一品です。

コーリャン、もち米、ウルチ米、小麦、トウモロコシの5種類の穀物を使用、中国で綿々と受け継がれてきた「大曲」という特別な麹で長い時間を掛けて熟成させた高級パイチュウになります。 

amazonで詳細をチェック!>>

「国台酒(コクダイシュ)53度 750ml」(TASLY国台)

「国台酒(コクダイシュ)53度 750ml」(TASLY国台)
「国台酒(コクダイシュ)53度 750ml」(TASLY国台)

銘酒・茅台酒の「国台酒(コクダイシュ)」は、産地・貴州省茅台鎮の中でも最も製造に適している特別な地域で造酒、品質管理が徹底されたパイチュウです。

国内外でも数々の受賞歴を持つ、一般入手の可能な最上級の茅台酒といっても過言ではありません。

この国台酒は、約15年もの間貯蔵された古酒であり、まさに「ヴィンテージパイチュウ」の名に相応しい出来栄えとなっています。 

amazonで詳細をチェック!>>

「一品景芝(ケイシミャウピン)42度 500ml」(景芝)

「一品景芝(ケイシミャウピン)42度 500ml」(景芝)
「一品景芝(ケイシミャウピン)42度 500ml」(景芝)

山東省の良質な高粱(コーリャン)や小麦などを使って蒸留させた高純度なパイチュウ、「一品景芝(ケイシミャウピン)」。

飲んだ後にごまの香り(芝麻香)が口に残る、不思議な後味のスピリット酒です。 

楽天市場で詳細をチェック!>>

日本の「白酒(しろざけ)」と中国の「白酒(パイチュウ)」

当記事では、ひな祭り(桃の節句)に飲む日本の「白酒(しろざけ)」と、中国酒の「白酒(パイチュウ)」の違いをご紹介しました。

また、ひな祭りに白酒を飲む由来や意味、白酒の飲み方、甘酒とは違うことも解説いたしました。

さらに、おいしくないと評されることもある中国のパイチュウの種類や飲み方、高級白酒(しろざけ・パイチュウ)のおすすめもチェックしてみました。

日本と中国、それぞれの白酒には、深く長い酒造の時間とともに、さまざまな味や香りを持った銘柄が誕生してきました。そんな歴史に思いを馳せながら白酒を楽しんでみると、また違った魅力を感じることができそうです。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。