「三谷さんから『全シーン、笑わせて』と言われたときは驚きました(笑)」瀬戸康史さん
―――『笑の大学』の作・演出を務めるのは、2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の脚本家・三谷幸喜さんです。三谷さんは瀬戸さんのことを「今、最も信頼する俳優」と本作の公式コメントでも発表していました
ありがたいですね。加えて「全作品にも出てほしい」とおっしゃっていただき、俳優冥利に尽きます。俳優は、演出家や監督にオファーをいただいて成立する、「正解がない」仕事です。全力を出し切っても、それがその作品、もしくは演出家にはまっているかどうかはわかりません。クランクアップの後に、「また一緒に作品を作ろう」と言っていただいても、それが本意かどうか知ることはできないんです。
その点、三谷さんは、2020年に舞台『23階の笑い』で初めてご一緒し、翌年のオリジナルミュージカル『日本の歴史』、そして『鎌倉殿の13人』と連続してお声がけいただきました。僕に期待をしてくださっているのだと感じています。
――瀬戸さんは『鎌倉殿の13人』で、瀬戸さんは主人公・北条義時（小栗旬）の異母弟・北条時房（ときふさ）役で出演。劇中では父・時政（坂東彌十郎）や後鳥羽上皇（尾上松也）から“ときふさ”を呼ばれるときに「トキューサ」と聞こえることから、毎週日曜日の夜は、SNS上で“トキューサ祭り”になっていました。
北条時房がSNSでトレンド入りをすると、三谷さんから「トキューサ盛り上がっているね。大人気じゃないですか」と連絡いただきましたね。
三谷さんは俳優をよく見ています。脚本を読んでいると、1人1人を思っていることがわかる描写があり、愛を込めて書いていることが伝わってくるんです。だから、ダークな役柄であっても、憎めない部分が残るのだと思います。
「トキューサ」については、僕の童顔をいじった描写などもあり、そこに愛を感じました。僕は見てもらったり、ほめてもらったりすると伸びるタイプなので、うれしかったです。ただ、三谷さんから「全シーン、笑わせて」と言われたときは驚きました。あのとき、三谷さんは真顔で、真剣に無茶ぶりされたんですよね(笑)。
――『笑の大学』は、脚本家・三谷幸喜の代表作ともいえる作品。今回、三谷さんが本作を初めて演出します。瀬戸さんはこれまでに、2作の三谷作品に出ています。演出家としての三谷さんは、どのような方なのでしょうか。
現場では自由にさせてくれています。「好きに演じてください。やり過ぎたら僕が止めるんで」というふうに、見守ってくれていることを感じています。
といっても、僕の場合、性格的に狙ったり計算したりできないんです。相手からの反応も含め、周囲を意識すると、いやらしさのようなものが出てしまう。脚本のまま、大真面目に演じることが、僕にとっての正解なんです。 特に舞台は真正面から取り組んだ方がいいと思っています。
――ドラマ、映画と様々な作品に出演している瀬戸さん。舞台作品の魅力とはなんでしょうか？
まずは、いただいた役、そして作品について考える時間が長いことです。映像作品だと、自分の出演シーンがメイン。言ってしまえば「自分の出番が終われば、それで終わり」ですが、舞台は幕が上がって降りるまでの数時間、集中して演じます。また、稽古から千秋楽まで数カ月に及ぶこともあり、その間一つの作品に入っていられることが魅力です。
あとは、ライブ感ですね。演者としても観客としても「舞台は生き物だ」と感じます。お客さんの反応、空気感など、耳と目だけでなく、肌で感じることができて、それが心を豊かにしてくれる。表現の幅も広く、柔軟でもありますよね。
『笑の大学』も、そんな作品だと感じています。今から稽古も本番も待ち遠いです！
――Vol.02は、１月28日公開予定。初共演・内野聖陽さんへの思いを語っていただきます。
■PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『笑の大学』
■あらすじ
舞台は戦時色が濃厚になる1940（昭和15）年。登場人物は、警視庁検閲係・向坂睦男(さきさかむつお)(内野聖陽)と劇団「笑の大学」座付作家・椿一(つばきはじめ)(瀬戸康史)の2人のみ。向坂は椿に対し「非常時にコメディなど断じて許さない」と上演中止に追い込むために、執拗なまでに脚本の改定を要求する。椿はなんとしてでも上演許可がもらいたい。そこで、向坂が要求する無理難題を逆手に取りながら、あくまで真正面からの書き直しに挑戦する。警視庁の取調室という密室で、権力対表現者の攻防戦を描くコメディ。
■作・演出：三谷幸喜
■出演：内野聖陽 瀬戸康史
■公演日程・会場：
2月8日(水)～3月5日(日) 東京・PARCO劇場
3月11日(土)・12日(日) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
3月18日(土)・19日(日) 長野・まつもと市民芸術館 主ホール
3月23日(木)～3月26日(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
3月30日(木)～4月2日(日) 福岡・キャナルシティ劇場
4月6日(木)～4月9日(日) 宮城・仙台 電力ホール
4月13日(木)～4月16日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
4月20日(木)・21日(金) 沖縄・那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
- PHOTO ：
- 中田陽子(MAETTICO)
- STYLIST ：
- 小林洋治郎
- HAIR MAKE ：
- 須賀元子
- WRITING ：
- 前川亜紀
