クラシコイタリアという言葉を持ち出すまでもなく、日本のメンズクラシックのマーケットにおいて、「スティレ ラティーノ」の存在はひときわ眩しい。ブランド創立時、オーナーのヴィンチェンツォ・アットリーニ氏にインタビューをした経験のある、メンズプレシャスのエグゼクティブファッションエディター・矢部克已が、リニューアルした伊勢丹メンズ館のオーダー会で来日した氏と再会。旧交を温めながら、無二の服づくりの哲学を聞いた。

服作りの秘密をオーナーのヴィンチェンツォ・アットリーニ氏に直撃!

体のラインに沿う、しなやかな仕立てのスーツは、着心地に優れるだけでなく、着る者の個性を引き出す。ヴィンチェンツォの洒脱な着こなしを、日本男児も大いに参考にしたい。
体のラインに沿う、しなやかな仕立てのスーツは、着心地に優れるだけでなく、着る者の個性を引き出す。ヴィンチェンツォの洒脱な着こなしを、日本男児も大いに参考にしたい。

「スティレ ラティーノ」が誕生したのは2005年。ブランドが立ち上がった翌年、ミラノのスーパースタジオ(注)で開催された「スティレ ラティーノ」の展示会で、ブランドのオーナーであるヴィンチェンツォ・アットリーニ氏にインタビューしたことがある。自社のスーツに身を包んだアットリーニ氏は、他に類を見ないしなやかさと色っぽさを備えていた。あれから12年。デビュー以来、日本でも着実にメンズクラシックのマーケットに浸透してきた「スティレ ラティーノ」の魅力を、生地選びやスタイルの特徴などから、アットリーニ氏が熱く語った。

(注)ミラノ随一のフォトスタジオで、ファッションウィークの時期には展示会場としても使用される。

生地選びへのこだわりが生む男の色気

 
 
肉厚で、しっかりとした感触の生地は、「スティレ ラティーノ」の伝統。伊勢丹メンズ館で開催されたオーダー会では、多くのエクスクルーシブな生地が用意された。
肉厚で、しっかりとした感触の生地は、「スティレ ラティーノ」の伝統。伊勢丹メンズ館で開催されたオーダー会では、多くのエクスクルーシブな生地が用意された。

 まずは、ブランド名の由来から。

「ブランドを立ち上げるとき、フォーマルから少し距離をおくのが狙いでした。完璧なフォーマルではなく、少し柔らかな男らしさを追求した結果、『ラテンの男』をキーワードにしました。男らしい服装にプラスして、少しセクシーな香りを漂わせるスタイル。それが『スティレ ラティーノ』と命名した理由です」

 しなやかなナポリスタイルに、色気がにじみ出る「スティレ ラティーノ」は、その素材使いからも独自の雰囲気をつくり出している。一説にクラシックなスタイルは、「生地がスタイルの80%を印象づける」といわれるほど、生地選びはブランドの「顔」を映し出す。

「ブランドを立ち上げた頃から変わらずに、イギリス、あるいはスコットランドの肉厚でしっかりとした感触の生地を選んでいます。織りや柄もこだわったものを選び、多くの生地がエクスクルーシブです」

しなやかな仕立てで生地の魅力を引き立てる

伊勢丹メンズ館のオーダー会には、ヴィンチェンツォ氏のふたりの息子たちも帯同。「スティレ ラティーノ」の、揺るぎなき服づくりの哲学は、彼らに引き継がれていくに違いない。
伊勢丹メンズ館のオーダー会には、ヴィンチェンツォ氏のふたりの息子たちも帯同。「スティレ ラティーノ」の、揺るぎなき服づくりの哲学は、彼らに引き継がれていくに違いない。

 アットリーニ氏は、素材選びで入念なリサーチを重ねる。生地メーカーとの綿密な打ち合わせを経て、独自の風合いや色合いを備えた生地が、「スティレ ラティーノ」のために用意されるのである。今季は、これまでよりも少し落ち着いた色調をそろえた。オーバーチェックなどのほか、繊細なマイクロチェックの生地で、さりげないアクセントを提案。そうした生地が「スティ ラティーノ」の持ち味であるしなやかな仕立てで、一層個性が増すのだ。

「程よいフォーマル感を残した柔らかい仕立てが、『スティレ ラティーノ』のスタイルです。生地が体に沿い、軽く柔らかなラインをつくるために、生地と相性のいい極薄の芯地を使い分けたり、縫い糸についても、生地の特性に合わせて選別し、縫製しています」

 充実したジャケットのコレクションに加え、今季は豊富なデザインをそろえるキャメルコートや1930年代のスタイルを彷彿とさせるラグランスリーブのコートも見どころだ。「スティレ ラティーノ」のラインアップは、男の力強さとともに、色気を漂わせるスタイルがなによりの魅力である。稀代のマエストロが創造する逸品を、伊勢丹メンズ館でぜひ確かめていただきたい。

■問い合わせ先
伊勢丹新宿店
TEL:03-3352-1111(大代表)
http://isetan.mistore.jp/store/shinjuku/

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この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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