いつものバー。
 バーではカクテル派の俺は、ただ注ぐだけ
のウイスキーなんてつまらないと思っている。
しかし今日は客もいないし、ちょっと意地悪
質問してみよう。
「ウイスキーに飲み方はあるの?」
 なじみのバーテンダーは、ほう、いい質問
だというように完爾(かんじ)と微笑み、棚
から一瓶を取り、小さなウイスキーグラスに
三分の一ほど注ぎ、さらに同じグラスに水を
注いで脇に置いた。
「まずストレートで、口を濡らす程度」
 では。うん、ウイスキーらしい強いアタッ
クが切れる、これはうまいウイスキーだな。
「次に水を2滴入れてください」
 お、香りが立った。
「あと2滴」
 あ、うまくなった。何か味わいが現れた
みたいだと感心する俺に、にやりと言った。
「蛇が放たれたんです」
 ウイスキーの本場スコットランドでは、
生のウイスキーに閉じこめられている、フ
ルーティな香り、ハーブの風味・苦味、麦
の甘味・旨味、また野性味、その反対の貴
族的気品などを、湿度ある舌滑りで引き起
こすため、数滴の水を加えることを「releas
e the serpent=蛇を放つ」と言う。蛇は古
典説話に登場する幸福の使途だ。
 ふだん無口な彼が詳しく続けるのは、ま
さに「いい質問」だからだろうか。
「そうやって、自分の加水を決めてゆくの
が、ウイスキーの楽しみなんです」
 ウイスキーと水が同量1対1を「トワイ
スアップ」と言うそうだ。
 使う「グレンモーレンジィ オリジナル」
は、その「放った蛇」により、硬さから、
まずバニラ香が立ち、次いでオレンジのフ
ルーティが現れ、伸びやかな甘さが女性ら
しいセクシーさを持ってどんどんひろがっ
てゆく。うーん、なるほど、こいつはおも
しろい。しかしこれ以上加水すると大事な
ものが消えそうだ。
「俺はトワイスアップ。寸止め、ここまで
!」
 そしてわかった。これは自分で作るウイ
スキーと水のカクテルなんだと。


グレンモーレンジィが堪能できる、今宵のおすすめバー

グレンモーレンジィ オリジナル

 1843年、スコットランドのハイランド地方の海岸沿いの小さな町、テインで生まれたグレンモーレンジィ シングルモルト・スコッチウイスキー。スコットランド産の大麦のみを使用。最高級のオーク樽で熟成、“テインの男たち”と呼ばれる熟練の職人たちの技で丁寧に仕上げられた 「完璧すぎる(Unnecessarily Well Made)」ウイスキーは、伝統と最新技術を融合させるパイオニアとして高い評価を受けている。そんなグレンモーレンジィの特徴であるフルーティーでフローラルな風味は、スコットランドで最も背の高いポットスチルで生まれている。

 さて、今宵の一杯は、完璧なバランスでウイスキー初心者から愛好家まで多くの人に愛されているグレンモーレンジィ オリジナルを、風味をよりいっそう豊かに感じさせるトワイスアップで。

 渋谷を代表する大人のバーで供される、グレンモーレンジィ オリジナルを使ったトワイスアップ。トワイスアップとは、ウイスキーに同量の水を加える飲み方で、本来の芳香や味わいが、より華やぎをもって口の中に広がる。ウイスキーの個性を楽しむには、うってつけの飲み方だ。タワーズバー「ベロビスト」では、メジャーやバー・スプーンは使用しない。スコットランドでボトリングされたグレンモーレンジィ オリジナルの風味を最大限に活かすため、ステンレス素材を介さず、慎重かつ繊細に、グラスに直接、酒精と水を注ぎ込む。完璧すぎるウイスキー、グレンモーレンジィ オリジナルの風味が、高い技量を持ったバーテンダーにより、いっそうの馥郁(ふくいく)さを持って、ゲストを楽しませてくれる。

ベロビスト

遙か高みから見渡せる東京の大パノラマ、これ以上のロケーションはなかなかお目にかかれないだろう。東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルの40階に位置するのは、タワーズバー「ベロビスト」。正統派のカウンターバーとしてはもちろん、カップルシートやカジュアルなハイカウンター席、ボックスソファ席など、大人の社交場としてのさまざまな使い方が広がる。

~ tonight’s bar ~

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この記事の執筆者
TEXT :
太田和彦 作家
2018.11.13 更新
1946年生まれ。グラフィックデザイナー/作家。著書『日本のバーをゆく』『銀座の酒場を歩く』『みんな酒場で大きくなった』『居酒屋百名山』など多数。最新刊『酒と人生の一人作法』(亜紀書房)
PHOTO :
西山輝彦