「スクリプトリウム」とはラテン語で「書かれたもの」という意味で、書物や手紙などのことを意味する。フィレンツェ旧市街にある筆記具専門店「スクリプトリウム」は手書き文化にこだわり続ける専門店だ。

知る人ぞ知るフィレンツェの老舗文房具店「スクリプトリウム」

紳士の嗜みはここにあり!

「スクリプトリウム」があるのはプッチ宮殿の1階。そう、あのエミリオ・プッチ創業の地であり、貴族の館は職人たちに店舗を提供している
「スクリプトリウム」は実際の書斎のように空間が構成されており、書棚には革製のノートやダイアリー、テーブルにはレターセットなどが並ぶ

作家の書斎のような店内にはレターセットや革の想定の手帳や本、筆記具などで埋め尽くされている。これだけメールやSNSが発達した時代でも、大事な時に手書きの良さにこだわるのは日本人もイタリア人も同様。「スクリプトリウム」は、ウエディングやパーティなどの招待状やレストランのメニュー、賞状などの紙製品を扱う店としてルネサンス発祥の地フィレンツェでも一目置かれた存在なのだ。

今回「スクリプトリウム」で、紳士が持つべき4大アイテムを聞いてみた。

【1】レターセット

「スクリプトリウム」で実際に使用されている封蝋と刻印。初心者はその使い心地を体験してみることもできる

イタリアでも弁護士や公証人など、士業と呼ばれる男性の多くはオリジナルのレターセットを使用しており、印鑑の代わりに手書きのサインが効力を発揮することはいうまでもないだろう。

日本同様イタリアにも手漉き紙の伝統が昔からあり、「スクリプトリウム」でレターセットに使われる最高級品は和紙に似た触感を持つアマルフィ産のカルタ・アマルフィターナだ。

他にも羊皮紙ペルガメーナ、金糸いりのフィリグラーナなど個性的な紙も多いので好みの紙をまず選んでみるのがいいだろう。住所氏名やレターヘッドはオフセット印刷もできるが、ここは最も格が高い、レリーフ効果のある銅版画カルコグラフィアやレリエーヴォを試してみるのもいい。

【2】封蝋

常駐するスタッフはフリーハンドのカリグラフィや、革製品に刻印するブッセートの技術を持つ職人だ

蝋をアルコールランプで溶かし、オリジナルの刻印で封をするシジッロ(シーリング)はイタリアの伝統で、招待状や礼状などフォーマルな手紙に使うと効果大だ。一般的によく使われる赤蝋はじめ、金や銀、白、黒など各種そろえてあり、刻印もシンプルにイニシャル入りのものやオリジナルのデザインを注文することも可能だ。

【3】名刺

一般的にイタリア人は日本人ほど名刺を持ち歩かないが、社会的ステイタスの高い人は別。以前出会った旧貴族の紳士は名前と家紋、宮殿名だけ書かれた名刺を持ち歩いていた。「スクリプトリウム」で名刺を注文するなら紙はもちろん、鋳型から注文制作するオリジナルの名刺はいかがだろうか。専門の職人が真鍮で作る鋳型を使った印刷は、通常のオフセット印刷とは一味も二味も違う。また、コルシーヴォ(イタリック)と呼ばれる筆記体もイタリアならでは。こちらもカリグラフィ専門の職人がいるので数十枚単位で全て手書きの名刺を注文するのも面白い。

【4】名刺入れ

そうした名刺を入れるにはやはりクラシックな名刺入れが不可欠。イタリアではコインパースや名刺入れには名前やイニシャル、家紋を刻印するのが一般的だ。これも専用の鋳型をアルコールランプであたため革に直接刻印するブッセットという手法で行われる。現代的な名刺入れほど収納量はないが、大量に配るのではない、重要な名刺にはそれなりの名刺入れを使いたいものだ。

ATELIER SCRIPTORIUM FIRENZE

Via dei Pucci, 4 Firenze
Tel+39-055-238260
10:00〜13:00、15:30〜19:00
https://www.atelierscriptorium.it/index.html

この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。