グレース・ケリーの美貌を受け継ぐ、モナコ公国のシャルレーヌ妃
モナコ公国は、世界で2番目に小さいにもかかわらず、華やかさという点では、確実に世界有数の国であろう。「美女と恋、ジェットセッター」というハリウッド顔負けの伝説がついてまわるようになったのは、有名な「世紀の結婚」がはじまりである。アカデミー賞を受賞したばかりの、グレース・ケリーと熱烈な求愛をしたグリマルディ家のレーニエ3世との恋物語は、民間から王室へ嫁ぐシンデレラストーリーの先駆けとなった。
金髪のクールビューティー、静かな佇まいと優美さをたたえた、並ぶものなき美貌。モナコの正統派といえる美の系譜を引き継いだのは、王室のメンバーではなく、レーニエ大公とグレース妃の長男であるアルベール2世へ嫁いだ公妃シャルレーヌ・ド・モナコ、その人である。
アスリートからモナコ公国のプリンセスへ
南アフリカ出身、両親は、ドイツ系、英国系の移民で、父親はセールスマネージャー、母親は水泳のインストラクターという一般的な家庭で育った。
シドニーオリンピックで、南アフリカ代表として、競泳女子4×100mのメドレーリレーで5位入賞を果たしたアスリート。18歳のときに南アフリカのチャンピオンシップで優勝。1999年のアフリカ大会では、自由形背泳ぎリレーで金メダルを受賞した実力派だ。アルベール2世と出会ったのも、2000年にモナコで開催された国際水泳大会であった。
177cmのスタイル抜群の長身は、水泳で鍛え抜かれたもので、競泳選手の頃から、はちきれんばかりの健康的な笑顔に、ときおり儚げな現在の面影が見え隠れし、美貌を予感させていた。
アルベール大公も、ボブスレー競技でなんと5回も冬季オリンピックに出場しているベテランアスリートである。アスリート同士の会話からはじまった交際は、アルベール公の熱烈なアタックで、20歳の年の差を超え、見事に身を結んだ。出会って11年目の2011年に結婚。今や双子のジャック公子、ガブリエラ公女の母親である。
ヘルシーかつエレガント。誰もが羨む美貌とファッションセンスで話題に
シャルレーヌの美しさには、独自のスタイルがあり、ほかの王族と比べると、一目瞭然だ。肩ぐらいの長さをゆるくカールさせた巻き髪や、好感度は高いがコンサバティブな装いがベースであるロイヤルファッションに対して、小さな公国という事情も手伝ってか、極めて自由に、似合うものを身につけている。
特にトレードマークになっているショートカットは、シャルレーヌの繊細な顔立ちを額縁のように引き立たせ、ときにはオールバックになでつけるという、ほかのプリンセスには見られないモダンで清新な印象がある。
お気に入りはヴァレンティノ、ジョルジオ アルマーニ、アクリスなど
ファッションは、落ち着きのあるシンプルなものを好み、それがまた、ほっそりと身長がある彼女によく似合う。公の席では「白」を好んで着ているが、清楚で気品のあるカラーが、シャルレーヌのイメージをさらに高め、まるで生まれながらのロイヤルファミリーのような高貴なエレガンスを漂わせるのだ。
ウエディングドレスはジョルジオ アルマーニをチョイス、公の席ではアクリスを多く愛用するが、F1 モナコグランプリのときには、スポーティなサイドラインが入ったコンビネゾンや各国の旗を思わせるカラフルなプリントドレスを着るなど、TPOに合わせた装いも話題になっている。
背泳の選手だったために、肩の筋肉の付き方が、全体のほっそり具合に対して、大きい。だが、これも大きい肩幅を隠すより、大胆に露出することで目立たなくするデザインを選び、鎖骨の美しさを際立たせている。短所には長所がついてまわるのだ。
ちなみにモナコグランプリでは、恒例のシャンパン掛けで、マグナムボトルを渡され、かけるどころか、重いボトルを軽々と持ち上げ、ラッパ飲みするという体育会系らしいノリのよいパフォーマンスを見せ、場内は大爆笑。「憂愁の妃」や「笑顔がない」などの負の噂を一蹴した。
モナコのグリマルディ家は、衆知のように、男女関係に関するスキャンダルもハリウッド並みに多い。一般的な堅実な家庭で育ったシャルレーヌにとって、夫であるアルベール大公の婚外子など、到底認められる問題ではなく、結婚前には相当悩んだといわれる。
だが、現在シャルレーヌは「プリンセス シャルレーヌ財団」を立ち上げ、水の安全性に対する意識に焦点を当て、特に子どもや女性を水の事故から守る、キャリアにふさわしいチャリティに情熱を注いでいる。ちょうど、グレース・ケリーが「プリンセス グレース財団」を作り、ダンスの新進アーティストを支援したように、見事に自分らしさを生かした天職とモナコで出会ったのである。
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- TEXT :
- 藤岡篤子さん ファッションジャーナリスト
- PHOTO :
- Getty Images