民間から王室へ!華やかなロイヤルファッションが話題のマキシマ王妃
オランダ国王の妃である、マキシマ・ソレギエタ・セルティ。ひまわりのような天性の明るさと、辺りまでゴージャスな輝きで包み込むシャンデリアのような華やかさが魅力だ。
実際マキシマ王妃の、大きな目鼻立ちと、破顔一笑と呼ぶにふさわしい爛漫の笑顔は、周りまで、幸せな気分にしてくれる無邪気さを感じさせ、国民の好感度が国王に次いで高いというのも、頷ける。
マキシマ妃の結婚までの苦難とは?
マキシマ妃は、この世代の王妃の多くがそうであるように、民間出身で、自身も大学で経済学を学び、ニューヨークの銀行に勤めていたバリバリのキャリアウーマンである。
民間出身の女性がプリンセスになるためには、プリンスや王室からの深い愛情と理解が何よりも大切になる。だが、マキシマ王妃の場合は、ことが重大であった。アルゼンチン人で、裕福な家庭に育ったマキシマは、自身のことではなく、その家庭環境と家族が大きな障害となったのだ。父親のホルヘは、'70年代アルゼンチンの独裁軍事政権であったビデラ政権の農林大臣を務めた閣僚であった。ビデラ政権は、無実の市民を左翼ゲリラ掃討の理由で逮捕、大量虐殺など弾圧を加え、国内外から強い非難を浴びた政権である。
ふたりの交際が公になるにつれ、そんな人権抑圧政策を引き起こした内閣の実力者の娘とオランダ王室の王位継承者との結婚を許していいものか、結婚を選ぶなら王位継承権を放棄すべきでは、という議論や抗議行動が国内で巻き起こった。オランダは元来、幾つかの歴史的判決でもみられるように、人権擁護の意識が極めて高い国民として知られる。
王室、皇太子、首相と何回も結婚についての話し合いがもたれ、結局父親ホルヘは、大量虐殺には一切関与していなかったとの結論に達した。父親は「好ましからざる人物」ではあるが、当時小学生であった彼女が間違ったことをしたわけではない。皇太子の継承権をかけての強い愛情があってこそであるが、 マキシマはこうやって、オランダ王室に迎え入れられた。
そして結婚式。愛を貫いた代償に、父親ホルヘは出席できず、夫をひとりにすることはできないと母親マリアも欠席するなかで執り行われた。式の最後に故郷アルゼンチンのタンゴの名曲アストラ・ピアソラの『アディオス・ノニーノ(さよならお父さん)』が流れたとき、それまではにこやかに振舞っていたマキシマは大粒の涙を流したという。
奔放で個性的な装いが注目の的!
やがて時は流れ、今や3人のプリンセスの母親となり、父親のホルへも孫の洗礼式には参加することができ、順風満帆な人生を歩み出した。
王妃となった今、太陽のような笑顔にぴったりの、個性的なファッションを公私共々に楽しむことでも注目を集める存在となった。
マキシマ妃の着こなしの特徴は、美しい大きな目の派手な顔立ちと推定180cm近い身長を引き立たせる、まるで大きなカンバスに描かれた絵画を見るかのような目を引く華やかさだ。
キャメルのケープやネイビーのフィット&フレアのドレスなど、王室規範に沿うスタイルも、公務ではよく見かけるが、多くの場合、大きなつば広ハットを合わせ、無難なスタイルには決しておさまらない、派手やかな存在感を強調するような着こなしをしている。
サッカーチームのユニフォームでもお馴染みの、オランダの国のカラーである「オレンジ」を始め、カナリアイエローのドレス、フューシャピンクのアンサンブル、コバルトブルーなど、鮮やかで印象の強いカラーがマキシマ妃の好みだ。加えて、大きなパネル柄の花柄や大胆なプリントやカラーブロッキングなど、従来の王室ファッションには見られなかった奔放で個性的な装いが、よく似合う。
ヴァレンティノやドルチェ&ガッバーナなど、自国のデザイナーに限ることなく、ワードローブの選択も闊達でのびのびとしている。
マキシマ妃は、セレモニーなどの場では、ロイヤルファミリーに求められる抑制の効いた品格のある装いを、バレエ鑑賞など個人のパフォーマンスが発揮される場では、自分の顔立ち、個性を生かした装いで登場し、そのギャップの大きさが、いかにもマキシマ王妃らしい自由さを感じさせる。きっとさまざまな過去のしがらみからも解き放たれたのだろうなと思わせる、その開放感は見ているだけでも「幸せ」という気持ちが伝わってきて、見る人を微笑ませてくれる。
ファッションの基本は「まず自分を知ること」。自分に似合うカラーやデザインを熟知しているからこそ、「節度」と「個性」のバランスが取れてくる。希少な自分の時間を色鮮やかに彩り、だからこそ周りにも幸せパワーを発散するのだろう。
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- TEXT :
- 藤岡篤子さん ファッションジャーナリスト
- PHOTO :
- Getty images
- EDIT :
- 渋谷香菜子