日本人も納得できる「ほんまもんの日本」を感じる宿

伝統文化が息づく街・京都でも時代の波に押され、実は「ほんまもん」の維持という問題を抱えています。そんななか、数寄屋造りの元老舗料亭を改装したラグジュアリーホテル「そわか(SOWAKA)」がオープン。2018年後半から週末のみの営業を経て、この春に本格オープンしました。

八坂神社からすぐの緑の暖簾が目印。向かって右は町家スタイルの離れの部屋です。
八坂神社からすぐの緑の暖簾が目印。向かって右は町家スタイルの離れの部屋です。

本館は大正後期から昭和初期にかけて技巧を凝らし建築された数寄屋造りの元料亭を大規模リノベーション。スタンダード、スーペリア、デラックス、スイートの4タイプ11室があり、どの部屋も現代では再現不可能な繊細な職人の技法が使われていて、実際に触れることができるのです。

ホテルのロビー。向かって右に見える楕円形のものは、かつて井戸だった名残。
ホテルのロビー。向かって右に見える楕円形のものは、かつて井戸だった名残。
ロビーの部分は、料亭の台所だった部分を使用。こちらはかつて収納庫があった場所に板をいれ、空間のアクセントとして残しています。
ロビーの部分は、料亭の台所だった部分を使用。こちらはかつて収納庫があった場所に板をいれ、空間のアクセントとして残しています。

SOWAKAの支配人 矢島さんによると、もともとは老舗料亭があった場所にマンション建築の計画がもち上がったところ、この場所の取り壊しはあまりにももったいないと、SOWAKAの現所有者と、京都市などが協議した結果、元々の建物を生かした形でのホテルを運営することになったといいます。

テーマとしているのは、「本物に触れていただきたい」ということ。

「今、日本を感じられるデザインを取り入れた大型のホテルが増えていますが、実際に日本人が訪れてもそう感じられるのかといえば残念ながら違います。しかし、この建物であれば、我々が胸を張ってこれが日本のスタイルだといえるのではないか。かつ、海外のお客様が旅館に泊まると、ハウスルールがかっちりしていて1度でいいかなと思ってしまう。一見旅館のように見えるところに、ホテルのルールを持ち込んだことで、海外からの宿泊者の方にもご満足いただけるのではと思っております」(支配人 矢島さん)

部屋は番号もいいけれど、宿泊した際には隠れた愛称を聞くべし

こちらは宿泊する部屋によってルートが限定されています。部屋によっては、外からの直接のアクセスが可能な「お勝手口」的な入口がついたものもあるなど、構造からして独特です。

部屋も申し込み時は「108 ガーデンビュー スイート」「102 プライベートガーデン付」などの名前から選びますが、実は「ほら貝の間」や「ひょうたんの間」など、部屋の天上や襖の細工に由来した名前がつけられています。巴型に板を張った天井や琵琶床を備えた床、楕円形の円窓などが料亭だったころの気配が強く残る空間に導入されたベッドも特注品。

とても面白いのが、もともとが茶室だった部屋「104 メゾネット茶室付」。京都で1951年から続く伝統的な茶会「祗園献茶祭」の場としても使用されていたこともある茶室の名残をあちこちに感じられる部屋は、お茶を嗜む人はもちろん、日本の伝統文化を強く感じたい人におすすめです。

こちらは1階に茶室だった部屋をリビングスペースに、床の間のある部屋を寝室にし、2階に檜のお風呂があるという構造。お風呂上りには畳敷きの小部屋で涼むことができます。この小部屋がかつて「ひょうたんの間」と呼ばれていたことから、こちらの部屋の愛称も「ひょうたんの間」となっています。

蓋をあけるとかつて使われていた炉が。今後活用してくことも考えているそうです。
蓋をあけるとかつて使われていた炉が。今後活用してくことも考えているそうです。
ついついいろいろ探検したくなります。
ついついいろいろ探検したくなります。
「104 メゾネット茶室付」の寝室。窓を開けると小さな庭があります。
「104 メゾネット茶室付」の寝室。窓を開けると小さな庭があります。
「104 メゾネット茶室付」の2階にある檜風呂。
「104 メゾネット茶室付」の2階にある檜風呂。

逆に、お風呂が階下にあるのが「105 ガーデンビュースキップフロア」。大きな窓から自然光が差し込む吹き抜け式の洋室で中心にベッドルームがあり、奥の階段下にバスルーム、手前に小さな和室がある3層構造。こちらはスーペリアクラスのお部屋です。

「105 ガーデンビュースキップフロア」の中心部分。
「105 ガーデンビュースキップフロア」の中心部分。
ベッドから見上げる位置にある、小さな書斎のような小部屋。
ベッドから見上げる位置にある、小さな書斎のような小部屋。
階下にあるお風呂。
階下にあるお風呂。

本当に1室1室が元の料亭を生かしているため、従来のホテルや旅館とは発想が異なる構造。お気に入りの部屋をリピートするのもいいですが、泊まらないと見られない別の部屋を体験してみたくなるはず。

大広間だった部屋はふたつに区切り、使用しています。
大広間だった部屋はふたつに区切り、使用しています。

こちらのホテルでは、1室のみラグジュアリーホテルとしては手が届きやすい価格のスタンダード(27平米、1泊¥30,000から)を用意。これは「そわか(SOWAKA)」ならではの職人の高い技術や日本の美を少しでも若年層に体験いただきたいという想いからつくられています。

ちなみに、ホテルの名前の由来は、インドのサンスクリット語の「幸あれ」を意味する言葉。古来と現代が見事に融合し、次の時代へとつなげるホテルが平成という時代の最後に生まれたことは、宿泊する人に多くの幸せを感じさせてくれるかもしれない。そんな予感のするホテルに出合えました。

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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2019.3.28 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
北本祐子