昼休みにリフレッシュして、いざ午後の始業。「さあ、やるぞ!」とスパートをかけようとしても、眠気に襲われたり、何となく気怠かったりして、なかなか仕事に集中できない……という悩みはありませんか? そのお悩み、実は昼食に原因があるかもしれません!
ランチに何を食べるか、どのように食べるかは、午後からのパフォーマンスを大きく左右するようです。今回は、管理栄養士の浅野まみこさんと、精神科医の樺沢紫苑さんから、午後の仕事に悪影響を及ぼす「NGなランチの食べ方」について教えていただきました。
栄養学的に見て、午後の仕事に悪影響を及ぼす「NGなランチの食べ方」
まず、管理栄養士の浅野まみこさんから、栄養学的に見てNGなランチの食べ方のポイントを2つ、伺います。
■1:炭水化物中心のメニューを食べるのはNG
浅野さんによれば、午後から仕事を頑張りたい人が避けるべきなのは、ラーメンやざるそば、うどんなどの粉物、炭水化物中心のメニュー。午後の仕事の効率を落としてしまう理由は、以下の2つです。
(1)「血糖値の乱高下」を招き、睡魔に襲われる
「空腹時に、ラーメンやざるそば、うどんなど粉物、炭水化物中心のメニューをとると吸収が早く、血糖値が急上昇します。
血糖値が急上昇すると、血糖値を下げようと、すい臓から大量のインスリンが分泌され、今度は血糖値が急降下してしまうのです。このように食後の短時間に、血糖値が急上昇・急下降することを“血糖値スパイク”と呼び、血管の炎症や酸化ストレスを起こしやすくなるほか、動脈硬化が進む原因にもなります。
昼食の後に、強い眠気に襲われたり、ぐったりとした疲労感を感じたりする方は要注意。血糖値スパイクを起こしている可能性があります。
ラーメンやざるそば、うどん以外にも、炭水化物中心メニューはまだまだあります。たとえば、忙しくて、ジュースだけを飲んだり、お菓子パン、カップラーメン、おにぎりだけで済ませたりするランチも、血糖値の乱高下を招く危険性が高いです」(浅野さん)
(2)「ビタミンB1」が不足し、体のだるさを招く
「炭水化物中心メニューのもう1つの問題点は、満足感が低いことや、ビタミンB1が不足してしまうこと。たくさん炭水化物を食べていても、栄養バランスが偏っていると、食欲が収まらないことがあります。肉や魚、卵などタンパク質を摂取することで、食欲が抑えやすくなります。
また、ビタミンというと、野菜や果物に含まれるイメージですが、ビタミンB1は肉や魚にも多く含まれています。
ビタミンB1は、糖質の代謝をサポートする栄養素です。ビタミンB1が不足すると、いくらたくさん食べても、糖代謝が滞り、エネルギーに効率的に変換されないので、体のだるさや疲労感を招くこともあります」(浅野さん)
お昼にガッツリ食べても、午後から力が出ないのは、炭水化物中心メニューのせいかもしれませんね。
ちなみに、浅野さんによれば、午後から仕事を頑張りたい人におすすめのランチは、タンパク質を中心に、野菜、米飯、汁もの、海藻などをバランスよく摂れる「和定食」メニュー。ご飯よりも先に野菜を食べれば、糖質の吸収が穏やかになり、血糖値の乱高下も予防できるとのことです。
といっても、毎日、定食屋に通わなければならないわけではありません。たとえば、牛丼屋では、味噌汁やサラダ、そば屋ではトッピングホウレンソウのおひたしなどのサイドメニューを活用すれば、定食メニューに近づけることはできます。コンビニエンスストアでも、定食メニューの選び方は可能。できるだけ多種多様なものをいただいて、バランスのよいランチを心がけましょう。
■2:「朝食を抜いた状態」でランチを食べるのはNG
浅野さんによれば、昼食後に強い眠気に襲われたり、ぐったりとした疲労感があったりするのは、ランチの摂り方以前に、そもそも朝食を抜いてしまうことも関係しているとのこと。朝食抜きでランチを食べると、前述の血糖値スパイクが起きやすいようです。
「朝食を抜くと、次の食事での血糖値上昇の幅が大きくなることがわかっています。
朝からガッツリと食べる必要はありませんが、卵や牛乳、豆腐などタンパク質や脂質、または野菜などの食物繊維を摂ることがおすすめ。これはセカンドミール効果といい、次の食事(セカンドミール)であるランチでの血糖値上昇を抑える働きがあるためです。
朝食を食べることで、代謝も上がりやすく、またランチのタイミングで食べ過ぎてしまうことも防ぐことができます。朝食をしっかりと食べるというより、朝は水分の摂取と、軽めの栄養補給と考えておくとよいでしょう」(浅野さん)
朝は慌ただしかったり、食欲がなかったりする人も多いでしょうが、午後から眠くなったり気怠くなったりするのを避けるためには、少しでも食べておくほうがよいのですね。
脳科学的に見て、午後の仕事に悪影響を及ぼす「NGなランチの食べ方」
続いて、精神科医・樺沢紫苑さんの著書『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』を参考に、脳科学的に見てNGなランチの食べ方をご紹介します。
■3:ランチを「いつも社内で食べる」のはNG
お昼休みのランチ、あなたはどこで食べていますか? 大きく分けると、“自炊のお弁当やコンビニなどで買ってきたものを社内で食べる”、“外食する”の2パターンがあると思いますが、樺沢さんによれば、午後からの仕事のパフォーマンスを上げるには、後者がおすすめとのことです。
というのも、昼休みは午前の仕事でたまった疲れを癒し、集中力を回復する絶好のチャンス。それなのに、「忙しい」「時間がない」からといって、会社のデスクで慌ただしくランチを済ませると、集中力が十分に回復せず、かえって午後の仕事に支障をきたすおそれがあるのです。
また、癒しやリラックス、平常心にかかわる脳内物質のセロトニンを活性化させるためにも、外食は有効とのこと。セロトニンはずっとデスクワークしていると低下し、イライラや意欲の減退につながりますが、日光を浴びながら少し歩くことで、セロトニンが復活するそうなのです。
午後からさわやかな気分で仕事を効率的に進めるためには、昼休みはオフィスにこもらず、ぜひ外でランチを摂りましょう。お店でいただく以外にも、テラス席や公園など、自然に近い場所でお弁当などを食べるのもアリですよ。
■4:よく噛まずに早食いするのはNG
セロトニンを活性化させる方法は、“日光を浴びる”、“歩く”以外にもうひとつ、“咀嚼”が挙げられるとのこと。歯ごたえのあるものを10分以上かけてよく噛むことで、セロトニンの活性効果が表れるそうです。
逆に、栄養ゼリーだけでランチを済ませたり、やわらかい麺類やパンなどを慌ただしく食べたりしては、午前のデスクワークで低下したセロトニンを十分に回復させることができません。
また、咀嚼しながら言語脳を同時に使うと、セロトニン活性効果が弱まるとのことなので、食事しながらスマホを見たり、仕事をしたりするのも望ましくないようです。
効果的にセロトニンを回復させるためには、食事に集中して、しっかり噛みましょう。
■5:いつも同じ店で、同じメニューを食べるのはNG
ランチを何にするのかあれこれ考えるのも面倒なので、行く店がある程度、ローテーションで決まっていたり、同じメニューばかり選んだりしていませんか? そのほうが、はずれが少ないというメリットはあるものの、脳科学的にはおすすめできません。
というのも、人間の脳は、いつもと違う行動を取ることで、アセチルコリンという物質が活性化するそうです。アセチルコリンは、創造性やひらめきに関わる脳内物質で、仕事の企画やアイディアを考える、重要な役割を担っています。
仕事でスランプに陥っている人は、もしかすると脳への刺激が足りず、アセチルコリンが不足しているのかもしれません。いつも同じ店で同じメニューばかり頼むのではなく、「おいしい店かどうかわからないけど、ちょっと入ってみよう」「このメニュー、初めてだけど食べてみよう」などとチャレンジして、脳を生き生きとした状態に切り替えましょう。
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以上、栄養学的見地と、脳科学的見地から見た、午後の仕事に悪影響を及ぼしてしまう「ランチのNGな食べ方」をご紹介しました。
日頃の昼休みを振り返ってみて、実は午後のパフォーマンスに悪影響を及ぼすランチの摂り方をしていた……と気づいた人も多いのでは? 午後からバリバリ働くためにも、ぜひこの機会にランチ習慣を改善してみましょう。
公式サイト
『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』樺沢紫苑・著 大和書房刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 中田綾美