パリにいても東京にいても生活のペースはあまり変わらないわね。まずは浦島太郎にならないように、すぐニュースを見ます。フランスにいるときも、日本のニュースは全部見てますよ。テレビのほか、新聞も週刊誌も取っています。遠くにいると、どういう本が日本で出ているのかわからなかったりするので、書評なんかも役立ちますね。あとは、面白いコラムやコメントもたくさんありますしね。仕事で忙しくしているときも、習慣として読んでいます。

島田順子さん

このマンション(島田さんの東京のご自宅)は亡くなった夫と住んでいた家で、こんなにビルがいっぱいあって東京のど真ん中なのに、真下に皇居が広がっていて違うところにいるみたい。シチュエーションとしてはすごく気に入っています。パリのおうちも自然がいっぱい。ボロ家を見つけて、改造したって感じよ。前が小さい公園になっていて緑がいっぱいで、空が見えてとても気持ちがいいのです。パリの街の中では公園などはすべて人工的につくられたものが多いので、ゴルフや犬の散歩で森に行ったりして自然を感じています。

マンションのテラスで話す島田さん

自然の中で自然に関わるライフスタイルが当たり前で、この東京のマンションでずっと暮らしていたら狂っちゃうかもしれない。私はダメなんです。時間があったら飛び出して、自然の中にいたいですね。

好きな時間は、ひとりの時間。夕日が沈むまでの時間を、本当にひとりでポカーンとしているのが大好き。無駄だと思うんだけど、その無駄が大好き。ぼんやりぼんやり。仕事は忙しないというか、そういうポカーンとした時間が一番大事だから、あえてそういう時間をつくってるわね。つくるというか、それがある前提でスケジュールを決めているわね。

 

ボケッとしてると本当に何もしないんです。本も読んだりするけど、一番好きなのは空っぽになっているときです。みなさんのようにアクティブじゃないんですよ。私が必死に仕事する時間はすごく短くて、パッとやっちゃう。そんなに集中力を維持できないんです。持久力がないのね。パッと思いついたらワーッとやって、2時間くらいでパッと終わったりします。

 

ひとつのコレクションをつくるのにも、そんなにダラダラやらないです。やろうとして、消しゴム置いて、鉛筆置いて、用意してるけど、全然描けなかったりして。そういう何も進んでいない時間も、ポワーンとしてる時間ね。私が何も思いつかないとアトリエ全体が進まないから、何かは進めないといけない。だから夜眠れなかったり、朝起きてから書き始めたり、思いつくと早いけれど、そこまでの無駄な時間が多いんですね。仕事の仕方は、若いときと変わっていないんじゃないかしら。

この記事の執筆者
1941年7月7日生まれ。杉野学園ドレスメーカー女学院デザイナー科卒業。1966年、渡仏。1968年、パリの百貨店・プランタンの研究室へ入る。1970年、デザイナー集団マフィア入社。1975年、キャシャレル社入社。1976年、女児出産。1981年、パリに「JUNKO SHIMADA DESIGN STUDIO」設立。パリにて初めて「JUNKO SHIMADA」コレクションを発表。東京にて初めて「49AV.JUNKO SHIMADA」コレクション発表。1988年、山地三六郎氏と結婚。1996年、日本ファッションエディターズクラブデザイナー賞(FEC賞)受賞。2010年、孫が誕生。2012年、フランス文化勲章シュヴァリエ授与。2013年、東京オリンピック招致委員ユニフォーム監修(AOKI)。2016年、パリコレクション70回・35周年を迎える。 好きなもの:子供、友達、仕事、食事、料理、包丁、皿、台所用品、動物のもの、ガラス
クレジット :
撮影/篠原宏明 構成/安念美和子