料理家・吉田麻子さんの主宰する料理教室には、現在、大阪、東京合わせて200人の生徒さんがおり、さらに入会待ちの方も多く、「予約の取れない教室」と呼ばれています。第2回では料理を教える上で大切にしていること、譲れない想いをうかがいました。

>>【第1回】本格始動は40歳を超えてから。スロースターターの料理家が伝える日本料理

日本料理の素晴らしさをもっと伝えたい

「旬の食材を取り入れた料理や出汁を生かした素材を生かした味つけ、時候に合わせた器や花、しつらえなど、日本料理ってよく考えられた素晴らしい料理だと思うんです。日本の家庭では自分のお箸とお茶碗があるのが当たり前ですが、マイカトラリーを持つ国ってほかにないですし、それだけ食を大事に考えている料理です。私は、日本料理がこんなにおいしく、豊かな料理だということを多くの方に伝えていければと思っています」。

洋食や弁当、デザートなど、吉田さんは日本料理以外のレシピ提供やメニュー開発も行っている。色とりどりのミニトマトをホワイトバルサミコ酢とはちみつで合えたトマトのマリネ
洋食や弁当、デザートなど、吉田さんは日本料理以外のレシピ提供やメニュー開発も行っている。色とりどりのミニトマトをホワイトバルサミコ酢とはちみつで合えたトマトのマリネ

実のあるレッスンを信条に、本物を知ってもらう

「お稽古では日本料理のスキルを身につけていただきたいと考えています。お野菜を切ったり、お出しを取ったり、生徒さんにも実際に作業をしていただきます。

4月の教室5月の節句に向けて粽寿司をつくりました。粽を巻くのはなかなか難しいですが、知ってると知らないでは、これからいただく時の気持ちも変わってくるでしょ。粽は、無病息災を願うために食べられていたり、時候に合わせた料理や食材にはそれぞれ意味があるのだということも、知っていただきたいのです。

また、私の教室では四季折々の素材の味わい、二十四節気・節句・雑節などの年中行事、多種多様に富んだ日本の器など日本のすばらしいこと、楽しいこと、おいしいことをお伝えしたいと日々思っています。

食卓の上は、器とお花だけというとてもシンプルなもの。時候に合わせた料理をつくり、器を使い、花を活ける。先人たちが行ってきたことを受け継ぎ、伝えていきます」。

日本料理は難しいものではありません

吉田さんの教室では、中央市場から魚を仕入れ、極上の昆布、かつおを惜しみなく使って出汁を取るなど、材料はすべてが選び抜かれたものです。

「ちゃんと出汁を取るだけで、料理が格段においしくなることを体感してほしくて。化学調味料やうまみ調味料を一切使用していない、おいしい濃縮出汁も出ているので、忙しいときはそういうものを利用したらいいと思いますよ。

お世話になっている方へのお礼やおもたせには、自分が愛用している調味料を贈ることも多いそう。左は加熱していない生はちみつ『大阪ハニー』、中央と右は『こんぶ土居』の濃縮出汁

魚貝や肉、魚も家庭ではスーパーで買ったものを使うと思うのですが、料理教室では一流の素材を使い、その味を知ってもらいたいと思っています。

教室では料理屋さんで出されるようなハレの日の料理だけでなく、煮炊き物など、普段ごはんも教えていますよ。

和食って『手がかかるだけでそんなにおいしくない』と思われてるでしょ。野菜の炊き合わせとか、私も小さいとき、母がつくってくれても全然うれしくなかったけど、大人になるとしみじみおいしいと思うようになりますよね。先日、教室で干し椎茸の含め煮をつくったんですが、それを生徒さんが家庭で披露されたら、3歳の息子さんがぱくぱく食べて、『ママ、ここの料理教室やめないで』って言ってくれたそうです。それを聞いてとてもうれしかったし、私のつくった料理が生徒さんのご家庭の味になるんだと思うと、責任重大だなって思いました」。

大阪にある和菓子の老舗、『菊寿堂』の生菓子は大切な方へのおもたせに。「どの菓子も上品で本当に大好きなんですが、葛ふくさは特に大好きです」

料理については妥協を許さず、納得いくまでとことんこだわるという吉田さん。次回は吉田さんのプライベートの過ごし方や、人を惹きつける魅力についてご紹介します。

>>【第3回】支え合い刺激を受けるのは、経験豊富な先輩や楽しい女友達

PROFILE
吉田麻子(よしだ・あさこ)さん
大阪生まれ、奈良・学園前在住。「吉田麻子料理教室」主宰であり、大阪、東京で日本料理の教室を行うほか、企業の商品・メニュー開発、雑誌・新聞、WEBへのレシピ提供、TV出演など、活動は多岐に渡る。
http://www.asakoyoshida.com/

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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2017.7.5 更新
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クレジット :
文/天野準子 撮影/香西ジュン