正解は・・・ 2:実は特殊な図形であり、その特殊性の効果により、コードとしての画期的な機能が付帯している。 です。

意外ですよね? 白黒三重の、単純な正方形に見えませんか? しかしこの形は、計算されつくした「ほかの印刷物に最も登場しにくい、特殊な比率の図形」なのだそうです。

開発者の原氏は、素早くコードを認識させるためには「『ここにコードがある』という『位置情報』」をつけたらどうだろうか?」と考えました。そこで、他の印刷物などに存在しにくい=当該コード以外の情報と混同して読み込まれにくい特殊性を持った「切り出しシンボル」を、四角いコードの三つの角に配置し、コードの「上下左右」「コードのある範囲」を素早く特定できる機能を持たせたわけです。

「切り出しシンボル」の効果で、読み込むツールが多少傾いていたりしても、QRコードを認識できるのです。
「切り出しシンボル」の効果で、読み込むツールが多少傾いていたりしても、QRコードを認識できるのです。

この画期的な発想を実現するまでに、原氏の開発チーム(といっても開発当初はたった二人)は、帳票などのあらゆる印刷物(絵や文字)を白黒に直して分析し尽くし、「ほかと最も混同されにくい、特殊な比率の図形」を突き止めたのです。

そして開発から1年半という短期間で、その後世界中の電子情報社会に多大な貢献をする『QRコード』を誕生させたのでした。

「すばらしい発明だからこそ、独占しない」…日本企業と開発者の高潔な心意気に感動!

開発の動機は、原氏の所属企業の事業に関わる工場や配送センターの作業を、円滑化するためでした。しかし、そこにとどまらない多大な可能性を秘めていた『QRコード』は、世界中のあらゆる産業に利用される、2次元コードのグローバル・スタンダードに成長したわけです。

『QRコード』が世界中に広まった要因として、イノベーティブな素晴らしい発明であったのと同時に、開発者が「特許は取得するけれど、ソースコードを公開(オープン・ソース化)し、規格化された『QRコード』に対し特許権を行使しない」という姿勢をとったことも大きかったでしょう。

つまり開発者が事実上、『QRコード』という強力な発明品を独占せず、「誰でも、どこでも、この便利な発明を自由に活用してください」と、最初から広く世界に公開=この世界にプレゼントしてしまったわけです。

開発者の原氏はインタビューで「多くの人に利用してもらって、一緒にいろいろな使い方を考え、実現していく。(中略)それが私のポリシー」と語っておられます。(出典:『QRコードドットコム』/株式会社デンソーウェーブ)

実は世界には、自国内で「QRコード読み取り機」の特許を取り、事実上国内での利権を独占する企業が出現し、莫大な利益を上げた例もあるのです。そうした事象にともない「日本人がQRコードの特許権をビジネスに利用しないのは、馬鹿げている」という意見も見たことがあります。それもまた、一理あるかもしれません。

しかし筆者は、開発者の決断を尊敬し、敬愛します。「仕事」とは、人間にとってお金を得るためだけの行為ではない、と示してくれる先人のいる国に生まれたことを、誇りに思うのです。

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Precious.jp編集部 
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参考資料:『FNN PRIME』(2019年8月9日)/『QRコードドットコム』株式会社デンソーウェーブ/『データのじかん』データのじかん編集部
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