小学館・週刊ビッグコミックスピリッツにて好評連載中の、バレエをテーマにした話題作、『ダンス・ダンス・ダンスール』。

主人公の村尾潤平(むらお・じゅんぺい)は、幼いころ、父の死をきっかけにバレエから離れたという過去を持つ中学生。そんな潤平が、転校生の美少女、五代 都(ごだい・みやこ)と出会い、再びバレエの世界で輝きだす…という物語です。

ジョージ朝倉さんの繊細かつダイナミックな作風と、プロも唸らせる本格的な描写により人気を博し、単行本は1〜5集が発売中! そして、7月12日ごろには最新刊の6集が発売されます。

左から/主人公の潤平、福岡雄大さん、井澤 駿さん

そんな『ダンス・ダンス・ダンスール』の作中に、登場人物の憧れのバレエダンサーとして、新国立劇場バレエ団の福岡雄大(ふくおか・ゆうだい)さんと井澤 駿(いざわ・しゅん)さんのお名前が登場! これをきっかけに、作者のジョージ朝倉さんと、福岡雄大さんと井澤 駿さんの3人による、スペシャルトークが実現しました。

プロのバレエダンサーの実情から、男性ならではの「あるあるネタ」まで、煌びやかなバレエの世界についてお話を伺いました。

「本当にやりたかったことはバレエ」それぞれのプロへの道

ジョージ朝倉(以下、ジョージ) おふたりはプロのバレエダンサーとしてご活躍されていますが、「習い事としてのバレエ」と、「プロという目標を見据えたバレエ」とでは、やはり違いがあるのでしょうか?

福岡雄大(以下、福岡) その違いはあると思います。『ダンス・ダンス・ダンスール』のヒロインである都は、お母さんもバレエをしていて…といった環境ですが、僕の場合は姉が先にバレエを習っていたというくらいで、7歳で始めたばかりのころは「バレエの世界でプロフェッショナルを目指したい!」という気持ちはありませんでした。そのため、バレエについて深く理解することができていないまま、単純に「楽しいから」という理由で踊っていましたね。

ジョージ では、なぜプロのダンサーになろうと?

福岡 コンクールなどで出会う同年代のダンサーや、教室にあったコンクールの古いビデオを観て刺激を受け、「バレエを職業にできたら幸せ」と思いはじめたからです。教室の先生にその気持ちを打ち明けてからは、プロのバレエダンサーを目指し、レッスンも毎日通うようになるなど、先生と相談しながら少しずつ変わっていきましたね。高校へ入学する頃には、完全にプロを目指す方向へシフトしていきました。

ジョージ 井澤さんは、プロのダンサーになるまでの生い立ちが福岡さんとは少し違っていらっしゃいますよね?

井澤 駿(以下、井澤) 僕は、兄が先に習っていたことがきっかけでバレエ教室に通い始めました。小さいうちから自然とバレエに親しんでいたので、当時は兄を目標にバレエを頑張っていたのですが、実は中学生のときに一度バレエをやめています。それまでは毎日しっかりとレッスンに通っていたのですが、ある日、なぜ自分がバレエをやっているのかがわからなくなってしまったんです。

それを機に一度バレエから離れ、きっかけがあり数年後に再開したものの、バレエを本気でやっていこうという気持ちはありませんでした。学業と両立しながら、趣味でバレエをやってもいいのかな、と考えていたほどです。大学に入学後、「職業としてバレエを踊りたい!」と思い直したのですが、10代はバレエダンサーにとって大事な期間なので、「若いうちにもっとやっておけばよかった」と、プロのバレエダンサーになってから後悔したことは正直ありますね。

ですが、大学では、勉学はもちろん、友人などかけがえのない一生の財産ができました。そういった学びや出会いは、本当によかったと今でも思っています。

ジョージ 幼いころからバレエ一筋の方が多い中で、すごく珍しい経歴をお持ちですよね。そういった時期を経て、バレエ以外にやりたいことができたりはしなかったんでしょうか?

井澤 他のことに目を向けようと思ったこともありましたが、最終的にはバレエの世界に戻ってきた…ということは、本当にやりたかったことはやはりバレエだったのでしょうね。不思議です。

©ジョージ朝倉/小学館「ビッグコミックスピリッツ」連載中

競争の激しいバレエの世界。海外でも日本でもそれは同じ

ジョージ バレエには国内外でさまざまなコンクールがありますが、どれくらいの頻度で出場されていましたか?また、コンクールにはどのような意味があるのでしょうか?

福岡 頻度や方針については、通っている教室や個人によっても異なると思います。自分の教室では、舞台経験や舞台度胸を養うために出場していました。

井澤 コンクールは、バレエダンサーにとってはひとつの目標というか、続ける上でのモチベーションを保つためのものとしての位置づけもあります。僕の場合は、新国立劇場のような舞台で全幕ものを踊るのと、コンクールでバリエーションだけを踊るのでは少しフィーリングが違うというか。

つまり、たった数分の作品を踊るコンクールは、練習、本番、そして反省という、いわば自分との戦いなんですよ。大勢のお客さまやスタッフが関わってできている全幕ものの舞台は、自分のためだけに踊るコンクールとは気持ちがまた違いますね。

ジョージ 井澤さんはお兄さんと教室に通われていたとのことですが、私が以前お話を伺った男性ダンサーの方は、「教室に男子がひとりしかいなくて非常にモテた」と(笑)

福岡 自分はそういったことはまったくなかったですね、本当に(笑)

井澤 僕も全くなくて、むしろいじめられているくらいでしたよ。女の子たちは強いので。

ジョージ 女性ダンサーには気の強い方が多いんですか?

福岡 気が強いというよりは、芯の強い人が多いです。女子のバレエ人口は、男子に比べてとても多いので、希少価値も違いますし、プロになれる確率もものすごく低い。ですから、その世界で生き残るためには芯が強くなければならないのだと思います。

ジョージ 女子は大変だなあ…。やはり、プロのバレエダンサーになるのは狭き門なのだと思いますが、日本と海外ではどのような違いがあるのでしょうか?


福岡 海外は、日本とは規模がまったく違います。バレエ団も国立や王立が多いですし、舞台数も年間100以上あり、3日に1回のペースで公演に出演することもザラです。厳しい世界なので、そのぶん精神的にはとても鍛えられましたし、自分の生活をしながらお金を稼ぐということの大変さも学ぶことができました。日本も弱肉強食の厳しい世界ということには変わりありませんが、公演数が少ないので、ひとつひとつの舞台を大事にしている傾向があります。そのため、公演後の達成感は非常に大きいですね。

ジョージ 海外では3日に1回! それでは、リハーサルなどがかぶったりするのでは?

福岡 「今日はバレエ、明日はコンテンポラリーダンス」といった過密スケジュールもありました。とても大変だったのは間違いないですが、それが楽しくもありました。男性ダンサーの仲間同士で競い合ったり、お互いに教えあったりしていたのが印象的ですね。今は、日本でもローザンヌ国際バレエコンクールなどの知名度が上がりましたが、以前は海外に留学すること自体が希少でした。いずれにせよ、日本、そして海外でも、プロのバレエダンサーになるというのは本当に狭き門です。

ジョージ それでも、プロになりたいという気持ちは変わらなかったのですね。

福岡 僕の場合は変わりませんでした。というより、バレエ以外にやることがなかったという感じですかね(笑)

ジョージ そこまでバレエがお好きだと、普段から話題の中心はバレエのことですか? 男性のダンサーの方は、バレエ以外にはどのようなお話をされるのでしょうか。

福岡 テレビドラマやお笑いなど、普通の話ももちろんしますよ。さすがにリハーサル中などは関係ない話をしたりしませんが、常にバレエの話をしているというわけではないです。もちろん、漫画の話も!

 

後編では、『ダンス・ダンス・ダンスール』の主人公・潤平も直面している、成長期の急激な体の変化についてのお話も登場します。男性バレエダンサーならではのエピソードと役作り、そして『王子の条件』とは一体?

【ジョージ朝倉×男性バレエダンサー】後編はこちら

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Precious.jp編集部 
2017.7.3 更新
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クレジット :
撮影/五十嵐美弥(小学館写真室) 取材・構成/難波寛彦(LIVErary.tokyo)