「自分の幸せは自分の内側にある」ということ
――そもそも、ヨガを始められたのはなぜですか?
19歳のときにL.A.でヨガに出逢って、その魅力にはまりました。そして、22歳でさらにヨガの知識を深めようと、インストラクターの資格を取るために、ハワイ島のヨガの合宿に参加したのですが、そこで衝撃的なことがありました。その合宿の場所が、ネイキッドビーチで、そこにいる方々が皆さん、裸で自由に過ごせる場所だったんです。
はじめはその環境に慣れることができず、ヨガの先生に「帰りたい」と泣きついたんです。そしたら先生に「自分の価値観で、他人をジャッジしないで」と言われて、それから固定概念が壊れていきました。
ヨガの哲学で「比較しない」「ジャッジしない」というものがあります。ヨガは、もともとインドで発祥したものなのですが、当時「食べるものがない」「毎日が苦しい」というときに、「自分の幸せは自分の内側にある」ということを、瞑想をすることで悟ったこと、が始まりと言われています。
心と体を整える、五感を閉じていって、終わった後に「無」になる感じ。これがもともとのヨガの形です。
被災地から始まった、ヨガのインストラクターとしてのキャリア
――ヨガを教えるようになったのはなぜですか?
2011年の3月11日の震災の後、岩手県の仮設住宅に住んでいる方々に、ボランティアでヨガを教える機会をいただきました。その時に、参加してくださった大変な境遇に置かれている方々が「楽しかった」「気持ちが楽になった」など、前向きな気持ちになってくれたことが、とてもうれしかったんです。
そのとき、ヨガを教えることで、困っている人や、助けが必要な人たちのサポートができるのではないか、と思いました。その後、NPO団体で2年間ほど、ボランティアでヨガ講師をしながら、インドをはじめ、ノルウェー、アメリカ、メキシコなどを回り、解剖学的側面と、ルーツ的側面からヨガをさらに学びました。
メソッドと哲学を十分に学んだあと、2014年にリーボックのアンバサダーとなり、今に至ります。
現在の活動と今後の目標
――今はプロアスリートにもヨガを教えていると聞いていますが、どんな方々に何を教えていますか?
日本代表のサッカー、バトミントン、ラグビー、フットサルの選手などを指導しています。
ビンヤサヨガという、流れるような、踊っているようなヨガの流派なのですが、動的ストレッチを行うことで、プロアスリートがパフォーマンスを向上させ、同時に、怪我をしない身体づくりをサポートしています。
ヨガを取り入れたことで、走るのが早くなった、というプロアスリートの方もいらっしゃいます。
ーーヨガを通して、社会に伝えていきたいことは何でしょうか?
私自身、ヨガを学ぶことで、生き方がとても変わりました。昔はもっと「これは正しい」「これは間違えている」と、自分のものさしで判断して、新しく誰かと出会っても「この人とは合わない」など、一方的に思って近づかないような人間でした。
でも、「比較しない」「ジャッジしない」というヨガの哲学を学んでからは、自分の違うタイプの方と会うと、「自分を成長させてくれる人に会えた」と、思えるようになりました。人生が豊かになりました。
自分がいいと思っているから、人に伝えられる。でも、押し付けではなく、いいと思ったものだけ、受け取ってもらえればいい。このことを、いつも皆さんにお伝えしています。「このヨガのポーズは、私はプレゼントしているつもりでいるので、これを受け取るか、受け取らないかは、皆さんがご自身できめてください」って。心地が悪いものは、受け取らなくていいんです。
「絶対こうでなければならない」というような偏ったものではなく、みなさんに自然に取り入れていただけるようなヨガを、これからも発信し続けて、社会とヨガをつなぐ架け橋になっていきたいと思っています。
以上、ヨガ指導者の京乃ともみさんにお話をお伺いしました。
「比較しない」「ジャッジしない」というヨガの哲学は、SNSなどで情報があふれる現代社会において、「自分」を見つめ直す、大切なメッセージだと感じました。また、無理なく、「今の自分」にあったヨガを取り入れることで、心身ともに健康を維持できるとわかりました。
京乃ともみさん、この度は快くインタビューに応じていただきありがとうございました。社会とヨガをつなぐ架け橋としての、京乃さんの今後のご活躍を楽しみにしております。
- TEXT :
- 岡山由紀子さん エディター・ライター
- BY :
- 働くみんなの1分すぐ楽ヨガ いつでもどこでも瞬間リフレッシュ! 京乃ともみ著 学研プラス
公式サイト:OKAYAMAYUKIKO.COM
- EDIT&WRITING :
- 岡山由紀子