この夏、大きな注目を集めた『サマージャンボPresents 氷艶 2019 -月光かりの如く-』が、ついにBS日テレで放映決定!

本作は、『源氏物語』をモチーフにした世界初のアイスショー。現役復帰を果たした高橋大輔選手を主役に、荒川静香、ステファン・ランビエル、ユリア・リプニツカヤといった世界で活躍するスケーターが参加したことも話題に。そして、俳優陣には西岡徳馬、柚希礼音、平原綾香といった豪華な顔ぶれが名を連ねました。

『氷艶 hyoen 2019』キャストと演出家の宮本亜門さん。(c)氷艶 hyoen 2019
『氷艶 hyoen 2019』キャストと演出家の宮本亜門さん。(c)氷艶 hyoen 2019

演出に宮本亜門を迎え、アーティスティックコンサルタントとしてヴォーグ ジャパンが参加した本作は、とにかくドラマティックで、すべてが予測不可能!

そして、この公演でインタラクティブ プロジェクションを担当したのが、アート集団・チームラボ。今回は、デジタル テクノロジーを駆使し、横浜アリーナという大きな空間をダイナミックに演出した彼らに、このアイスショーの裏側についてお話を伺いました。

世界初の、氷上ファンタジーはこうして生まれた

■平安絵巻の中に、演者が入り込んだような世界を

雛壇や雲型のスクリーンを効果的に取り入れたセット。(c)氷艶 hyoen 2019
雛壇や雲型のスクリーンを効果的に取り入れたセット。(c)氷艶 hyoen 2019

-前作『氷艶 hyoen 2017-破沙羅-』に続いての参加ですが、演出の宮本亜門さんからはどのようなリクエストがありましたか?

「亜門さんからは最初に、作品の核となる重要な構成と、イメージの方向性を伺いました。映像の細かい部分については信頼していただき、我々のイメージを提案し、とても気に入っていただきました。今回は、舞台美術や照明のチームなど、テクニカルスタッフと協力しあってバランスよくパフォーマンスを発揮することができたと思います」

-横浜アリーナという大きな会場を演出するために工夫された点は?

「舞台美術が、御簾に見立てた幕上げ式のスクリーンと、その周りには金屏風に見立てた雲型のスクリーンが組み合わさった設計になりました。そこにデジタル映像を投影し、いかに効果的に『源氏物語』の各シーンを描き、表現していくかがとても重要でした。

氷上だけでなく、雛壇や船などの立体舞台美術と映像とすべてが合わさることで、物語の空気が生まれ、実際に『源氏物語』の世界を体験しているようになったと思います」

ユリア・リプニツカヤが紫の上を演じたことも話題に。(c)氷艶 hyoen 2019
ユリア・リプニツカヤが紫の上を演じたことも話題に。(c)氷艶 hyoen 2019

デジタル映像演出ならではの醍醐味を、感じられるはず

■演者を近くで見ることだけが、アイスショーの魅力ではない

-舞台転換の速さや、海や炎のダイナミックな演出などは、チームラボならではですね。

「全編にわたってすべての空間に映像を投影することにより、まるで『動く絵巻』の中に演者さんが入り込んだような世界にすることができました。今までのアイスショーは、演者を近くで見ることがいいとされてきましたが『氷艶』では、上の席から鑑賞しても、多くの人に楽しんでもらうことができたと思います」

-たくさんの感想が届いているかと思いますが、一番手ごたえを感じられた点は?

「やはりどこの席から見ても、さまざまな印象で楽しめるアイスショーになった点だと思います。特に上の席から見ると、一つの美しい『動く絵巻』として、より良く鑑賞することができました。遠い席からでも、違った見え方で十分楽しめるということは、映像演出の持つ力かと思います」

■高橋選手が演じる光源氏の存在を、より引き立たせるために

光源氏の心情を表したという、美しい月の演出。(c)氷艶 hyoen 2019
光源氏の心情を表したという、美しい月の演出。(c)氷艶 hyoen 2019

-平安時代を演出されるにあたり、参考にされたものは?

「『源氏物語』では、様々な表情の月が詠まれています。今作品でも月の表情によって、物語の情景や心情を写し、高橋さん演ずる光源氏の演技に深みを持たせたいと思いました。また、平安時代の御所や都は極彩色に施し、艶のある金屏風を使用したり、金粉をちりばめたりして、雅な動く絵巻の空間を表現しました。制作期間中は、国宝・源氏物語絵巻についての資料をよく参考にしました」

歌や演技のほかに、華麗なフライングにも挑戦した高橋選手。(c)氷艶 hyoen 2019
歌や演技のほかに、華麗なフライングにも挑戦した高橋選手。(c)氷艶 hyoen 2019

オーディエンスを驚かせた「歌くらべ」のシーンに注目!

■チームラボが一から作り上げた、システム

-高橋選手とステファン・ランビエルさんの対決シーンでは、二人のスケーティングに合わせて氷の上に筆が走っていく演出がありました。

「亜門さんから『和歌をスケートで表現したい』とご提案いただき、瞬時にチームラボらしいシーンが表現できると思いました。スケーターの動きを最新のセンシング技術で追い、タイミングに合わせて書が書かれていく演出を、エンジニアが一からシステムを作りあげて実現しました。実際に、高橋さんとステファンの演技に合わせて、リアルタイムに調整することにより、表現豊かな和歌のシーンが実現したかと思います」

■フィギュアスケートのエンターテイメント的な可能性を感じて

-『氷艶』は、本番二日前のリハーサルまで出演者もスタッフも全貌が見えないと伺いました。本番ですべてが組み合わされた状態をご覧になった時の感想は?

「亜門さんの演出と各セクションのプロフェッショナルが融合したときの大きなエネルギーのようなものと、フィギュアスケートのエンターテイメント的な可能性を感じました」

荒川静香さんは弘徽殿女御を熱演。(c)氷艶 hyoen 2019
荒川静香さんは弘徽殿女御を熱演。(c)氷艶 hyoen 2019

この経験は、我々のアートの分野にも必ず生かされる

■世界にとって、人類にとって意味があることを実現したい

-今後もこういった舞台やショーの演出に取り組んでいかれる予定ですか?

「伝統的な舞台やショーなどのプロジェクトに、新しい表現の作り手として参加できるということは、我々が普段制作しているアートの分野にも必ず生かされると思っています。機会があれば、ぜひ取り組んでいきたいですね」

-令和の時代に入り、来年には東京オリンピックも控えています。チームラボさんの今後の展望は?

「僕らはずっと『長い時間の中で連続していること』、『おびただしい連鎖の中にあること』をテーマとして作品をつくってきました。これまでしてきたことを、これからも連続させていきたいです。

今年は、海外の大都市2か所にチームラボボーダレスのような常設美術館がオープンし、来年もさらに海外の3都市に展開する予定です。世界にとって、人類にとって意味があることを、いつかできればいいなと思っているので、世界中で作品を発表していきたいです」

実は女性である海賊の長を演じたのは柚希礼音さん。(c)氷艶 hyoen 2019
実は女性である海賊の長を演じたのは柚希礼音さん。(c)氷艶 hyoen 2019

チームラボがインタラクティブ プロジェクションを担当した『サマージャンボPresents 氷艶hyoen 2019 -月光かりの如く-』は、BS日テレで2019年9月1日(日)12:00より放映決定。また2019年12月18日(水)には『氷艶 hyoen 2019 -月光かりの如く-』のオフィシャルアートブックが発売。さらに2019年12月25日(水)からは、そごう横浜店にて衣装展が開催されるなど、まだまだ盛り上がりを見せそうです。

主演の光源氏を華麗に演じた高橋大輔選手は、今シーズンのショートプログラムでThe Fall OutBoyの「The Phoenix」を、フリープログラムは昨シーズンも演じた「Pale Green Ghosts」を披露すると発表。『氷艶』でさらに磨かれた演技力を武器に、どのようなスケーティングを見せてくれるのか、期待が高まります。

Precious.jpでは、今後も最新のエンターテイメントや、高橋選手をはじめ、強く美しく戦うフィギュアスケーターたちを応援すべく、さまざまな情報を発信してまいります。どうぞ、ご期待ください!

 

※高橋大輔選手の「高」は正式には「はしご高」です。
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
Fuyuko Tsuji