正解は… 苟(いやしく)も です。

こんな字を書くんですね…!
こんな字を書くんですね…!

「いやしくも」、一度は耳にしたことのある表現ですよね? しかし、自分で使ったことがある、という方は少ないのではないでしょうか?

「苟も」という言葉、文脈的にまったくわからなくはないものの、「意味を説明しなさい」と言われると、ちょっと戸惑いませんか? 確実な意味が説明できないと、自分で使うわけにもいかない…そんな日本語ではないでしょうか?

「苟も」の「いやし」には、もともと「卑し」の意味もあったようです

「(自分のような卑しい身分の者が)身分不相応にも」と謙遜する意味から「かりそめに現在の地位についている」という状況を表現する言葉になりました。

ですので、たとえば第三者に向かって「苟も教鞭をとる人間なら…」などと使う場合には、「教職にふさわしくないような人かもしれない」という疑いを前提に、この言葉を放っていることになります。なかなか苛烈な状況ですよね?

難しいのはヒントの例文のように、自分自身に向けて使用する場合です。「苟も」の意味は「自分のような低俗な者が、かりそめにも」ではありますが、ヒントの例文(「苟も会社の経理を預かる身として、このような領収書は決済に回せません!」)は、謙遜しているようには聞こえませんよね?(笑)。

発言者の意図を組んで「超訳」するなら、こんな感じでしょうか?

「経理という大変おごそかな、私にはもったいないような大役を仰せつかっている身といたしましては、あなたの馬鹿げた領収書は受理しませんよ!」

「苟も」という表現で謙遜するというより、謙遜し過ぎて逆に、自分のついている身分がいかに凄いかを、力説するような論法になっているのです。

このように「苟も」は、第三者に使用するなら叱責するとき、自分自身に使用するなら、謙遜している体でその実ものすごく威張っている印象を与える、という特殊な日本語なのです。

汚職を疑われている政治家などが、「苟も区政を預かる者として、誤解を受けるような行動をとってしまい…」などとのたまっている…そういうシーンで、皆さま「苟も」を耳にされていいたのではないかと思います。

反省しているんだかしていないんだか、シュンとしてるんだか威張ってるんだか、真意が疑わしいですね。

ご自分でこの言葉を使われる機会はないかもしれませんが、この言葉を使う人物には要注意、かもしれません(笑)。

…というところで、もう一問、「身分に関する日本語表現」のクイズです。

【問題2】

とても身分が高い方を表現する「やんごとない」という日本語を、漢字表記にするとしたら、以下のどれでしょうか?

1:止ん事ない

2:柔ん事ない

3:弥ん事ない

さて、正解は?

意味と漢字がリンクしていますよ!
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小出 真朱