ペルノ・リカール・ジャパンCEOのノジェム・フアドさんに仕事や私生活のお話を伺います

ペルノ・リカール・ジャパンCEO ノジェム・フアドさん
ペルノ・リカール・ジャパンCEO ノジェム・フアドさん

シーバスリーガルやアブソルートウオッカ、アネモネのボトルデザインが特徴的なシャンパンのペリエ ジュエなど、お酒好きな人なら聞いたことのあるブランドの輸入・販売を行っている、お酒の世界的リーディングカンパニー、ペルノ・リカール グループ。

現在、日本法人のCEOとして活躍しているのはカナダ出身の女性ということ、ご存知でしょうか? 才色兼備の彼女に、マネジメント術や職場の多様性、ジェンダーについて、家庭と仕事の両立について、日本人女性の素晴らしいところ、足りていないもの、美の秘訣やパートナーとの私生活のコツなど、多彩なお話を伺ってきました。

8か国でのマネジメント経験を経て、日本法人のCEOに就任

2019年4月に行われたペリエ ジュエの新ボトル発表会でのノジェム・フアドさん
2019年4月に行われたペリエ ジュエの新ボトル発表会でのノジェム・フアドさん

Precious.jp(以下同)――フアドさんの経歴を教えてください。

カナダで大学を卒業後、大手広告代理店に入社し、カナダ、ラテンアメリカでリージョナルアカウントマネージャーとして働きました。その後ペルノ・リカール グループに転職し、北米、中米、南米のマーケティングディレクターに就任、その後スウェーデンではアブソルート、ロンドン、香港などで免税市場の仕事を担当していました。

そして2019年1月に、ペルノ・リカール・ジャパン株式会社の代表取締役社長(President & CEO)に就任しました。現在8か国目です。

成功するマネジメント術とは?

ーーフアドさんのマネジメント論を教えてください。

リーダーとして必要なものは大きく2つあります。

1・明確なビジョン

2・目標達成のための戦略

また、そこには、人材、一緒にはたらく人々の存在が欠かせません。強いリーダーというのは、一緒に働く周りの仲間たちを良く知り、彼らにフォーカスすることがとても大切だと考えています。どんなに明確な目標や戦略があっても、そこに息を吹き込ませるのは人材だからです。

会社を成長させるため、ブランドを成長させるために必要不可欠なのは人材です。できるだけ、結束が強く、ダイバースなチームをつくりたいと常に考えています。

日本人の働き方は「プロ精神」「信頼関係を大切にする」「長期的なものの見方をできる」ところが優れている

ーー国によってマネジメントが変わると思うのですが、フアドさんから見て日本人はどのように映りますか?

すべての国で文化が違いますし、人も違います。ですから、その国の文化と人を理解することから始めます。自分は外から入ってきた人間である、という認識のもと、「話を聞く」、「理解する」。それぞれの国の特徴、考え方、物事の動機づけ、懸念事項、そのようなことを「聞いて理解する」ことから始めるようにしています。

また、国によってリーダーとしての在り方や位置づけが違います、たとえば4年ほどいたスウェーデンは、話し合いを重視する国でしたので、常に周囲とのコンセンサスを得ながら、マネジメントしていました。逆に上下関係に重きを置く国もあります。

日本に来て、日本人と一緒に働いて思うこと…彼らはとてもプロフェッショナルで忠誠心がある国民性です。仕事に対する取り組み方が真摯で、ひとつひとつの仕事を十分に配慮して、人と人との関わりを重視して働いていますよね。日本人の働き方を見ていて、褒める言葉しか思い浮かびません。

これにふたつ、付け加えたいことがあります。

ひとつ目は、日本では、同僚同士でもビジネスパートナーとでも、信頼関係を大切にするということ。築いた信頼関係を長期に維持できる国民性であるように見受けられます。

ふたつ目は、ロングヴィジョン、「長期的なものの捉え方」ができるということです。常に長い目で物事を考えて行動していることが、素晴らしいと思います。

ーー日本では今後、どのようなマネジメントの展開を考えていますか?

繰り返しになりますが、マネジメントをするには、一緒に仕事をする人を深く理解しなければいけません。人間関係を尊重するということ。戦略という長期的目標ももちろん持っているのですが、常にそこにある文化と人々にとって、何が重要であるかを考えています。

と同時に、自分らしい部分も展開しています。違う物の見方、世界を渡り歩いてきたからこその物事の視点、これらを提供できると思います。世界的ブランドを多く扱っているので、そのような視点も重要です。

この国が大切にしている、「人間関係や長期的なビジョン」というものが、自分の考え方ととても近いので、日本でマネジメントすることは自分に合っていると考えています。

ーーそうすると、日本でのマネジメントは難しくないということしょうか?

そうですね。今まで8か国で働いてきましたが、それぞれの国で文化や人々を見てきて、違う部分もありますし、似ている部分もありますので、どの国へ行っても、自分との共通点を見つけて、理解して、マネジメントをするということを心がけています。

強力なチームづくりには「お互いのことを知ること」がまず大切

ーーいままでマネジメントをしてきた国で、日本と似ていた国はどちらでしょうか?

日本はとてもユニークだと思います。私にとっての一番のチャレンジは、「彼らが心の中で何を考えているのか」を知ることです。正直、これには時間がかかります。「本当に考えていることは何か」を言ってくれないんですよね。

私自身はカナダ人で、オープンで民主的な考え方を持っています。日本でもオープンで民主的なマネジメントをしたいと考えていますが、なかなか本音が見えないので、難しいと思うこともあります。

ですので、まず日本に来て行ったことは「オフサイトセッション(※)」です。お互いの事を知るために、業務時間外に多くの時間を取りました。マネジメントチームは5名いるのですが、信頼関係を構築するために、外からコーチを呼んでさまざまなセッションを行い、お互いがどのような性格なのか、どのような考え方なのか、それぞれの人間性を理解しあうために時間をかけました。

※オフサイトセッション…現場を離れた場所、オフサイト(Off-site)での交流

その結果、現在、強力なマネジメントチームができあがったと自負しています。とても有意義な時間だったと思います。結束力がある、信頼関係のあるチームが構築できました。

日本法人の社員と共に、ビーチの清掃をするボランティアなどにも積極的に参加し、多くの社員と交流している
日本法人の社員と共に、ビーチの清掃をするボランティアなどにも積極的に参加し、多くの社員と交流している

バランスをより整えるために女性社員を増やしたい

ーー現在の社員数と男女比は?

日本法人は、180名ほど社員がいます。職種柄、男性のほうが多いのですが、マネジメントチームは5名中、女性2名、男性3名で、とても誇りに思います。弊社の日本法人では女性の育休からの復帰率が100%で、時短で働く女性も少なくありません。今後は女性社員を増やして、よりバランスのとれた組織にしていきたいと思っています。

ーー今まで駐在してきた国では男女比はどうでしたか?

スウェーデンは、女性リーダーが多くいました。女性が働き続けるための、ほかの国との違いは、産休、子育てなどの国のサポート制度の違いでしょうか。しかし、すべての国において、会社全体でバランスのとれた職場を構築しようという動きがあります。ジェンダーだけではなく、国籍や保持するスキルを含め、多様性を重視しています。

ーージェンダー平等を意識していますか?

もちろんです。重要なテーマです。女性一人一人がどのような選択をするのか、仕事するのか、しないのか、それぞれの気持ちを尊重しているので、女性も仕事しなければいけない、と思っているわけではありません。個人的な話ですが、自分の祖母、母、叔母もキャリアウーマンで、子育ても同時にしており、それを見て育ってきたので、私は働き続けることを選んでいます。

現在、6歳と4歳の子供がいますが、子育てを通して、自分は「リーダーとして、より成長できた」と思っています。「効率的にできるようになった」、「優先順位が明確になった」、「決断力がついた」。子供を持つことで、より相手を理解しようとする気持ちが高まりました

息子と娘にとって、自分が生き方の手本でありたいと思っていますので、子育てをしながら私は働き続けています。

仕事と家庭の両立のコツは「仕事のアウトプットを重視」「完璧にやると思わない」「家では家族100%、職場では仕事100%」

ーー家庭と仕事の両立は大変だと思うのですが、日本人女性へ両立のコツを教えてください。

夫のサポートなしでは、自分のキャリアは形成できていません。夫の存在が不可欠です。仕事と家庭を両立するためには、まず、誰か周りにサポートしてくれる方を見つけること、同時に相手をサポートすることですね。

そして、自分はOKだ、と思うこと。自分を許す、完璧でなくてもいいと思うこと。自分にプレッシャーをかけないこと。女性は常にすべてを完璧に行わなければならないと考えがちですが、すべてを完璧にやらなくてもOKだと、自分で思うようにすることです。

また、フレキシビリティを持つことも大切です。どのように限られた時間を有効的に使うのか、インプットの時間を重視するのではなく、アウトプットを重視すること

どのくらいの時間、会社にいたか、とか働いたか、とかではなく、「どれだけの成果を出せるのか、何をどれだけ会社に提供できたのか」に重きを置くことが大切です。

例えば、自宅にいるときは100%家族のことに力を入れる。会社にいるときは100%仕事に力を入れる。

私は、仕事中に、ランチを外で食べることがありません。自席でランチを食べています。ランチのために外出する時間をセーブすることで、仕事により集中することができます。子供を産んでからは特に、すべてのことに効率性を重視しています。

ペルノ・リカール・ ジャパンの働きやすい仕組みとは?

ーーペルノ・リカール ・ジャパンではフレックスタイム制度を導入していると聞いていますが?

10時~16時がコアタイムのフレックスタイム制度を導入しています。時短勤務の女性社員も多いです。先ほどからお話ししていますが、日本人は勤勉で忠誠心が高い国民性ですので、自由があると、よりよいアウトプットをしてくれるように思います。信頼を示せば、成果を出してくれます。

また、アルコール製品を取り扱うという仕事柄、営業の男性社員が夜遅くまで働くことが多いので、そういう方の出社は遅く、など、職種によって多様な働き方ができるような仕組みを構築しています。

ーーフアドさんご自身は何時から何時まで働いていますか?

もともと朝のほうが頭が働くのですが、出張や夜の会食などがあるので、その日によって働く時間帯が違います。何時間会社にいたか、より、「何をどれだけアウトプットできるか、何を成し遂げなければならないのか」、を考えて働いていますので、それによって働く時間帯も変わってきます。

連日、遅くまで会社にいなければいない時もありますし、早く帰ることもあります。

ーー今のポジションだと、世界中と連絡を取り合うために、夜中に働くようなこともあるのではないでしょうか?

ロンドンや香港にいたときは、グローバルなリテールの仕事を担当してたので、米国との真夜中のカンファレンスなどがあり、大変なことがありましたが、現在のポジションはそのようなことはありません。しかし、月曜日にパリでミーティングがあり、週末に移動しなければならないこともあります。

「貴重な時間をどう効率的に使うか」、常にそれを考えています。いろいろと同時に行わなければならないことがあるのですが、すべてを卒なくこなすことは、簡単なことではありません。でも、私はこの仕事が好きで、会社がとても好きです。だから毎日楽しく働いています。

ペルノ・リカールには、働くすべての人に可能性があり、常にチャレンジできる環境が整っています。自身を動機づけできる、素晴らしい会社です。今後も常に成長したいと考えています。

ペルノ・リカール・ジャパンの記者懇談会の様子
ペルノ・リカール・ジャパンの記者懇親会の様子

母として「子供のこと」は譲れないが、仕事人として「仕事でこれだけは譲れない」はもたない

ーー仕事人として、これだけは譲れないということはありますか?

母として「子供の事は絶対に譲れない」、ということはあります。次世代を担う、子供たちのことは譲れません。

仕事にはコミットしていますが、「これは絶対譲れない」ということはありません。常にフレキシビリティを持って仕事をしています。

ーー業務上で、次に成し遂げたいことはありますか?

私のゴールは自分自身の成長です。常に成長し続けること。与えられた任務を責任をもって果たし、結果を出すこと。居心地のよいところにとどまるのではなく、常にチャレンジし続けて成長したいと思っています。

そしてもうひとつ、同じくらい大切なのは、自分の周りの人々の成功をサポートすることです。成長をサポートし、促すこと。自分の成功には周りの方々の成功が不可欠です。

周りの方々のキャリアアップが、会社の成長にもつながります。メンター役、コーチ役として貢献したいと考えていますし、人材育成のパッションも大きいです。

日本人女性がより成功するためには「メンターやコーチを見つける」「柔軟性をもつ」ことが必要

ーーフアドさんのように成功するために、日本人女性に足りないものは何でしょうか?

とても難しい質問ですね。なぜなら社内でも社外でも、素晴らしく成功している日本の女性に沢山会ってきて、日本人女性に足りないものはない、と思っているからです。私はとても信頼できるメンターに恵まれて、今のポジションにいます。そういう意味では、日本ではメンターやコーチが不足しているかもしれません。

もうひとつ、あえて言わせていただくなら、日本の方々は常に正しい方向に向かっているとは思いますが、フレキシビリティをもう少しだけ持てると、さらに成長ができるのかもしれません。

ーーフレキシビリティとは、精神的にでしょうか、それとも物理的にでしょうか?

両方です。私も、もっと若いころは「マネジメントはこうあるべき」という固定観念がありましたが、いろいろな国を回る中で、フレキシブルに対応していかなければならないと学びました。「リーダーにも多様な形が必要とされる」と、考え方が変わりました。自分らしいリーダーとは何か?と。

仕事のスタイル、仕事へのアプローチ、仕事への理解、時間の使い方、などに対して、柔軟な考え方を持つようになれると良いのかもしれませんね。

ーー40歳という若さで、今のポジションを築けたのはそれが理由でしょうか?

そうですね。それもありますが、チャレンジ精神、家族のサポート、強いメンター、会社の柔軟性。提案されたものを躊躇せずに常に飛びついてきた結果、今があると思います。

沖縄で行われた全社員カンファレンスでspeechを行う様子
沖縄で行われた全社員カンファレンスでスピーチを行う様子
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この記事の執筆者
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EDIT&WRITING :
岡山由紀子