壁に穴を開けずに床置きできる収納システム、ストリングの「フリースタンドシェルフ」の魅力に迫ります
身長156cmのインテリアエディターが「大人の家具選び」をレポートする連載・第20回は、北欧を代表するスウェーデンのモジュール収納ブランド「String(ストリング)」の「フリースタンドシェルフ」をご紹介します。
モジュール収納とは、決められた寸法体系で板や部品を組み合わせて、自由なレイアウトをつくることができる収納のこと。設置方法は、壁に固定したり床に置いたりとメーカーによって異なります。引っ越しや、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応でき、自分の持ち物に合わせてすっきりと収納できることが魅力です。
一方で設置方法が難しかったり、施工の費用が高額だったり、シンプルなだけの安易なデザインだったりと、実はなかなか「ちょうどいい」ものが見つかりにくいアイテムでもあります。
そこで今回は、Made in Swedenのロングライフデザイン、世界中で愛されている「String」の床置き式収納「フリースタンドシェルフ」の魅力をご紹介します。
北欧デザインの代表的な収納、「ストリング」とは?
ほっそりとしたはしご状のパネルに、棚板やボックスを自由に配置できる壁付収納システム「String(ストリング)」。北欧インテリア好きなら誰もが一度は目にしたことがある、今年70周年をむかえるロングライフデザインです。
軽やかで設置するだけで北欧感の漂うStringに憧れはあるものの、壁に穴が開けられなくて …と諦めていた皆さんに朗報です。今回ご紹介するのは、Stringを自立させることができる「フリースタンドシェルフ」です!
壁に穴を開けず「立つストリング」として活用できる「フリースタンドシェルフ」
フリースタンドシェルフの高さは118cmの一種類となります。今回は、リビングの片隅に仕事スペースをつくることを想定した組み方をご紹介します。
「素材」と「目線の高さ」を変えれば気分も替わる。「フリースタンドシェルフ」を使った間仕切りの効果は絶大!
ふたつの顔をもつフリースタンドシェルフのつくり方は、とっても簡単。
自宅のお仕事コーナー側には、グレーのフェルトのパネルと白のバーとシェルフでシンプルに仕上げた面を。リビングダイニング面には、オークのキャビネットを取り入れた組み方をしました。
女性でも手軽に組み立てることができるのが「フリースタンドシェルフ」の利点!
フリースタンドシェルフをつくるには以下のようなセットを、まずは組み立てて、収納したい持ち物に合わせてシェルフ(棚板)やキャビネットを引っかけるようにして配置していきます。
私自身、自宅で壁付けタイプを組み立てたことがありますが、フリースタンドシェルフは、床に寝かして組み立てられる分、さらに簡単そうでした。
隣り合った棚板でも、同じ高さに設置できるよう、金具の取り付け位置や隙間の寸法などに細やかな配慮が施されているため、自由自在にシェルフ(棚板)やキャビネットを設置できます。
キャビネットは上下4か所のフックをかけるので、ふたりいた方がスムーズです。シェルフ(棚板)だけなら、休日に気軽にひとりで設置可能なほどの手軽さで、いつでも棚板の位置を変えることもできます。
今年で70周年!デザイナーの概念をもとに進化し続けるMade in Swedenのロングライフデザイン「ストリング」の過去、現在、未来
「String」は、幅60cmと80cm、奥行き20cmと30cmの規格に基づいて、多彩な色や素材を組み合わせ、独自の収納システムを無限につくることができる収納システムです。
今ではスウェーデンのクラシックデザインとして位置付けられています。1954年にミラノトリエンナーレで金メダルを受賞するなど、これまで数々の賞や認証を得ています。2009年には著作権法のもとでストリングが応用美術に分類され、2016年にはドイツデザイン賞を受賞しています。
今年70周年を迎える「String」の出発点は、2回あるといわれています。
美しさだけでなく、世界で初めてのフラットパック(輸送時に平面にできることで、輸送費が安くすむこと)や難しい加工をしない分、余計なコストがかからないため、スウェーデン製の高品質な商品でありながら、驚くほど手ごろな価格である点も「String」の魅力です。
そのあまりにも大ヒットしたデザインは、時代の流行りに翻弄され、世代交代のなかで「前時代的な退屈なものの象徴」と認識される不運な存在となったこともありました。
「ストリング」をデザインし、未来へと託したニルス・ストリニングとカイサ・ストリニング夫妻
1917年にスウェーデン北部の小さな町のストリンニンゲンと呼ばれる農場を所有していた家庭に生まれた、建築家のニルス・ストリニング。学生時代に知り合った、カイサと結婚し、ふたりで協働して「String」をつくり上げました。
「String」が衰退したのと呼応するかのように、1978年にふたりは離婚しています。その後、「String」は時代の変化に紆余曲折しますが、ペーター・エーランソンとペール・ヨセフソンの熱心なアプローチをきっかけに、「Made in Sweden」にこだわり、ブランドの立て直しが始まります。
生産物流がスモーランドの小さな溶接工場や家具メーカー、マルメの本社まで迅速に組織されました。そしてついに2004年12月、ニルスとカイサ・ストリニングによって契約が締結され、新会社「ストリング ファニチャー」が2005年に事業を開始しました。
この再出発に不可欠だったのは、並外れた斬新さでした。定番のシリーズ「ストリング システム」のミニサイズ版「ストリング ポケット」の誕生です。CD、香水、手帳などの小物類を収納し飾るシェルフとして、2005年後半に発売されました。
ニルスは自身が生み出したコンセプトをもう一度洗練させ、現代のインテリア市場にしっかりと根付かせることに成功したのです。ちょうどミニマリズムがスウェーデンに広がりを見せ始めていたことも、若者に熱狂的に受け入れられた所以となりました。翌年の2006年、ニルスは89年の生涯を終えました。ストックホルムに居住していたカイサは、2017年の秋95歳で亡くなりました。
「String」の概念は、ふたりのデザイナーたちと共に終わったわけではありません。ニルスの膨大なプランと図面のコレクションは、同社で保存されています。つまり、まだつくられていない形や、生産中止になったデザインが、見つかる可能性があるということです。
ヴィンテージにしかない部品や、現行版、未来に生産されるストリングのさまざまなアイテムを使って、時代を超えるあなただけの「String」、つくってみたくなりますよね?
問い合わせ先
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- TEXT :
- 土橋陽子さん インテリアエディター
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