超高齢化社会を迎え、長寿大国と言われる日本。食生活の見直しの重要さやアンチエイジングについてなど様々叫ばれる中、効果の大きさから脚光を浴び、老化抑制物質として世界から注目されている「ポリアミン」。
すべての生物種に存在すると言われるその「ポリアミン」とは、一体どんな物質なのでしょうか。
「ポリアミン」が長生きには必須と言われる所以とは?
ポリアミンは、すべての生物が生きていく上で欠かせない物質と言えます。それは、細胞の成長や分裂を助けて細胞の状態を正常に保つ、という生命維持するための重要な役割を持っているからです。
細胞が正常な状態に保たれると、病気は起こりません。ポリアミンは、健康寿命を延ばすことに必須である奇跡の物質とも言えるかもしれないのです。
また、ポリアミンを体内で作る能力は、加齢によって減少することがわかっています。「老化は、ポリアミンを自身の細胞で作れなくなることから始まる」という観点では、世界中で様々な研究が進行中とのこと。
90代〜100歳以上の人(百寿者)の血中ポリアミン濃度調査で、60〜80代の平均より大幅に高く、30〜50 代に近い値が出たという研究結果も。つまり、60〜80代の時の血中ポリアミン濃度が高かった人が長寿になっていると推測できるようです。
このため、ポリアミンは新しいアンチエイジング物質として、世界的に大きな注目を浴びています。
老化や病気は「ポリアミン」の減少から始まる!?
先述の通り、ポリアミンは腸の健康を保つために必要な物質です。腸とポリアミンの関係を見てみると、赤ちゃんが生まれてから飲む母乳には、分娩後数か月経った母乳と比較すると、ポリアミンがたくさん含まれていることも分かっています。
これは、未熟な赤ちゃんの腸の組織を速く成熟させ、消化吸収機能やバリア機能を高めるためと考えられています。細胞の増加などに必須のポリアミンは、生まれる前から細胞内に存在し、生後も細胞内で作られ続けます。しかし、加齢とともにポリアミンを作る能力は低下し、量が減ってしまいます。
そこで今、ポリアミンの合成能力の低下が、老化や病気を招くと考えられ、長く健康に生きるためには、加齢により減っていくポリアミンを補うことが大切、と言われるようになりました。
実際、ポリアミンと老化防止の関係を示すマウス実験では、ポリアミンの量が2〜3倍の高ポリアミンの餌を食べさせた高齢のマウスは、血中のポリアミン量が上昇。生存率も、高ポリアミンの餌を食べさせたマウスのほうが、そうでないマウスに比へて上がるという結果が出て、毛並みもよくなり、老化進行が遅くなるという結果も出ているとのこと。
ポリアミン濃度を一定レベルに保っていくことが、非常に有効な健康増進法で、アンチエイジングにつながるのかもしれません。
血管や細胞も若返る!?腸を丈夫にするアンチエイジング効果はどんなものか
ポリアミンは体内でどんな働きをし、効果をもたらすのでしょうか。
ポリアミンには、健康的に長生きするために有益なさまざまな役割・効果があることが確認されています。まず、大きな役割として挙げられるのが、体の設計図ともいえる遺伝子が含まれる核酸(DNA, RNA)を守ることです。細胞内に存在するポリアミンの多くは、RNAと結合しています。また、DNAの経年劣化を防ぐため、酸化ストレス、発がん性物質、さらに加齢に伴い起こりやすくなる、遺伝子に生じる突然変異や異常化が起きないように安定させるという大事な役割を果たしています。
つまり、究極のがん予防に繋がるとも考えられています。
以前から注目されているのが、抗炎症作用です。全ての生活習慣病には炎症が関わっているのですが、ポリアミンは白血球の仲間による、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の過剰な分泌を抑制します。また、これら炎症に関わる白血球が、炎症部位に接着するときに使う分子の活性化も抑制します。つまり、白血球が炎症部位にくっついて、さらに増悪化するリスクを減らすのです。
最近、特に注目されているのがオートファジーと呼ばれ、細胞内に発生する異物を自己消化分解する作用です。細胞内で発生したゴミは細胞の活動を邪魔するため、これを廃棄処理してクリーンな細胞内環境を維持する作用で、まさに、細胞の健全化に直接的に関わるポリアミンの機能といえます。一生入れ替わらない脳細胞や神経細胞、寿命が比較的長い血管内皮細胞などが関わる病気は、この作用が予防に重要と考えられています。
腸管のバリア機能を充実化させる機能も重要です。バリア機能とは、腸管内の悪い微生物や物質が生体内に入らないように守ること。腸管バリア機能が弱りがちな高齢者やアレルギー患者は、高いバリア機能を維持することで、有害物質、有害微生物、アレルゲン(アレルギーの原因物質)の腸から体内への侵入を防ぐことができます。また、口から摂取したポリアミンはほとんどが小腸で吸収されるため、有害物質が産生される大腸のバリア機能には、腸内細菌がつくるポリアミンが極めて有効とされています。
これらを総合し、現在、有効性が確認されているのが、動脈硬化症の予防。動脈硬化発症の初期段階には血管内皮機能、いわゆる「血管のしなやかさ」の低下が見られます。腸内のポリアミン生合成を促進する食品によって腸内ポリアミン濃度が上昇すると、血管内皮機能が改善されることが明らかになっています。おそらく、抗炎症作用とオートファジー促進作用により、血管内皮の健全性が回復したことによるものではと考えられているようです。
こうした働きこそが、ポリアミンがアンチエイジングの「奇跡の物質」として注目される理由と言えそうです。
【ポリアミンの主な4つの働き】
◆DNAの保護
◆抗炎症作用
◆オートファジー(細胞内に発生する異物を自己消化分解)促進
◆腸管バリア機能の充実
ポリアミンを減らさないためにできることは「取り入れる」「作らせる」の2つ
では、加齢で減っていくポリアミンを補うにはどうしたらよいでしょうか。
一つは、『食品としてとる方法』です。植物を含む全生物にポリアミンは存在するため、どんな食品にも含まれます。しかし、量は食品によって千差万別と言えます。
例えば、手軽に取り入れられることで特に注目されている食べ物に、納豆があります。健康な男性成人が、1日平均60g(大きめ1パック)の納豆を食べ続け、8週間程で全員のスペルミンというポリアミンの一種が上昇したという実験結果があります。
また、体内で減り続けるポリアミンを補うもう一つの方法が、腸内細菌のポリアミン生合成を促進する、つまり作らせる食品を摂ることです。例えば簡単なのは、腸内環境のバランスを改善するビフィズス菌『LKM512』とアルギニン入りのヨーグルトなどを食べることで、ポリアミンが腸内に増えやすくなると言われています。
たくさん摂取したい!「ポリアミン」を多く含む食品とは?
ポリアミンを増やすには、食生活から取り入れていくことが一番早いと言えます。どんな食品に豊富に含まれているでしょうか。
特に多いと言われるのは、精製していない穀類に含まれる麦芽やふすま、大豆や小豆などの豆類、野菜やキノコ類、魚介類。魚介類は、身の部分には少ないものの、内臓や魚卵には多く含まれると言われています。
ポリアミンは独特の臭いがあり、サプリメント摂取はほぼ行われていないとのことなので、やはり食べ物から摂取していくことが良さそうです。また、アミノ酸の一種のアルギニンと特定のビフィズス菌(LKM512)を一緒に摂取することで、多くの人の腸内細菌のポリアミン生合成を高めることが可能とのことなので、前述の通りヨーグルトを食生活にうまく入れ込むこともおすすめです。
納豆やぬか漬け、緑茶など、日本の伝統的な食事にはポリアミンが豊富に含まれています。大豆食品や発酵食品を中心とした日本食と長寿の関係は言わずもがな。やはり、日本食生活がよいと改めて見直すきっかけにもおすすめです。
しかし、健康や長寿に関するポリアミンの働きに期待して、ポリアミンばかり豊富な食品だけを意識すると、栄養バランスは偏りかねません。また、疾患によって食事制限をしている人がポリアミンの摂取を心掛けた食生活をしたいと思っている場合は、主治医と相談してから始めるようにしましょう。
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気温が下がっていくことで、体への気遣いがより必要となるこれからの季節。食生活も気にすることでポリアミンを積極的に摂取して、健康的な体と美肌・美髪を目指してみてはいかがでしょうか。
監修者
松本 光晴さん
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- Sachi Tamura