落語に興味を持ったら、ぜひ一度足を運びたい「寄席」。

とはいえ、初心者にとっては敷居が高いイメージもあるかもしれません。しかし実は、「近くに来たからついでに」と気楽に寄れるのが寄席の魅力のひとつ。東京メトロ 新宿3丁目駅からすぐの寄席「新宿末廣亭」にお邪魔して、実際の寄席について、そして知っておくともっと楽しめる豆知識も交えながらレポートします!

新宿に佇む老舗の寄席「末廣亭」を訪問!

末廣亭の歴史は明治30年まで遡ります。当時は、明治通りに面した繁華街の一角に位置していましたが、戦争で焼失。昭和21年、今の場所に再建されました。今年で創業71年目。現存する最古の木造建築の寄席がここ、末廣亭です。

寄席では、テレビ『笑点』で活躍するようなベテランの噺家から若手による落語のほか、コント、曲芸などの演芸をいつでも楽しむことができます。

「番組表」と言われる入り口に大きく掲げられた看板では、その日の出演者を確認することができます。この番組表や、寄席の高座(噺家が噺をする場所)のめくりに用いられる文字は、「寄席文字」という独特なもの。肉太で大きく隙間のないように書かれた文字が特徴的です。墨を観客に、余白を客席に例えて「寄席がお客さまで一杯になりますように」という願いが込められている、縁起のよい文字なんです。落語の演目は、黒い文字で。色物と呼ばれるマジックや漫才、紙切りなどの演目は赤い文字で書かれています。

毎月1日~10日を上席(かみせき)、11日~20日を中席(なかせき)、21日~30日を下席(しもせき)と呼ばれ、十日毎に出演者が変わります。末廣亭のホームページから、前もって出演者をチェックすることができます。

座席は「当日販売」、「自由席」が末廣亭の基本!

このタイルはドイツ製。これも昭和21年当時のものがそのままに

出入り口は「木戸」と呼ばれています。事前予約はなく、全席当日販売になっています。「木戸銭」と呼ばれる入場料は、大人一般3,000円、学生2,700円、小学生2,200円。

昼の部は12:00〜16:30、夜の部は17:00〜21:00。末廣亭の場合は通常、昼夜入れ替えがないため(特別興行は除く)、ひとりの演者を聴くだけでも、昼から夜まで通して過ごしても料金は同じです。一日中落語に浸るも良し、お目当ての噺家さんに時間を合わせてサッと演目を楽しむのも良し。ただし、一度出ると再入場はできないのでご注意を。

木戸銭を払ったら、いよいよ館内一階へ

桟敷席の人が出入りをする通路。木造ならではの趣がある
館内写真提供/末廣亭

館内はすべて自由席になっています(特別興行などは指定席販売もあり)。一階には、中央の椅子席と舞台の両側にある桟敷席があります。畳敷きの桟敷席では、靴を脱いでくつろぎながら寄席を楽しむことができます。週末などの混雑時には、全体を見下ろすことのできる二階席も開放されます。

落語は、和服を着て座布団に座ってひとりで喋る、というとてもシンプルなスタイル。小道具は手ぬぐいと扇子のみで、ほぼ会話だけであらゆる物語をつくりあげます。聴く側は、たとえ演目のあらすじを知らなくとも、いつの間にかその世界に引きこまれて笑ってしまう。

堅い雰囲気はまったくないので、その日の気分で聴く場所を変えてみたり、と自分なりの楽しみ方を見つけるのも楽しそうです。

リラックスして聴ける寄席は、みんなでつくっていくもの

新宿にある老舗の寄席「末廣亭」は、現在広報を務める林美也子さん(以下、林さん)の祖父がこの場所に構えたそう。ここからは、初代席亭であった祖父のもと、幼いころから末廣亭に慣れ親しんだ林さんのお話を交えながら、知っておきたい寄席のマナーや魅力ついてご紹介します。

売店ではお弁当や飲み物、オリジナルグッズなどが購入可能

末廣亭では、飲酒と酒気を帯びた人の入場は禁止されています。「なぜってね、聴く人にリラックスしてもらいたいんです。(お酒を)飲んでいる人はリラックスしているかもしれないけれど、もし隣に酔っぱらいのおじさんがいたら、くつろげないんじゃないかなって」(林さん)。

落語には、お酒を飲み交わす噺もたくさん。お酒が恋しくなる時もあるかもしれませんが、繁華街が近い末廣亭。ここは、寄席の後のお楽しみにしたいですね。

「初代の席亭がお酒を飲まない人だった、ということもあるけれど、すべての人が安心して噺を聴ける環境づくりが私たちの役目ですから」。そう優しく語る林さんが印象的でした。

公演中の携帯電話はご法度!

堅苦しい決まりはない寄席ですが、携帯電話はご法度。公演中は電源を切るのがマナーです。「噺が盛り上がって、クライマックスに向けて観客の皆が固唾を飲んで耳を澄ましているところに携帯電話が鳴ったら、せっかくの噺が台なしになってしまうから」と林さん。

寄席は、公演中でも入場可能。また、都合によっては途中で退出しなければならない時だってあるはず。「ただ、それは演目と演目の切れ間である”高座返し”の時にお願いできたら」(林さん)。末廣亭の場合は、ひとつの演目が15分。切れ間を待ってからの移動が、高座に立つ演者にも、他の観客の方への配慮ですね。

子供は入場できますか?

末廣亭では、「○歳以上から入場可能」と年齢に言及していません。落ち着いて座って噺を聴けるなら子連れも大歓迎とのこと。「私もね、祖父の家でもあったこの場所(末廣亭)に、小さいころから母に連れられてしょっちゅう来てたもの。3,4歳のころかしら、落語の内容は覚えていなくても、この雰囲気やドキドキしながら見ていた紙切りの情景って今も覚えているのよ」(林さん)。

噺家によっては、子供が客席にいるのを見かけたら、有名な「寿限無」だったり、縁日で小さい子供がお父さんにおねだりする「初天神」を話してくれることもあるそう。そういった、客席の反応を探りながら楽しませてくれる「ライブ感」もまた、落語の魅力です。

「若いお客さま、増えています」

場所柄、客層も幅広いという末廣亭。特にこの1~2年は若者や女性、仕事帰りのサラリーマンの姿もぐんと増えたそう。また、通常の興行のほかにも毎週土曜夜に若手の噺家による「深夜寄席」も賑わっています。入場料は1,000円というさらに手ごろな料金で、寄席の雰囲気を味わうことができます。用事の合間に、仕事帰りに。ふらりと訪れてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

  • 新宿末廣亭 TEL : 03-3351-2974
    営業時間/昼の部12:00~16:30 、夜の部17:00~21:00、
    深夜寄席(土曜日のみ)21:30~23:00 
  • 住所/東京都新宿区新宿3-6-12


この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2017.10.30 更新
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渡辺修身
EDIT&WRITING :
八木由希乃