落語を一度は聴いてみたいけれど、何を聞けばいいの? どこへ行けばいいの? そんな不安や疑問に対して、「気軽さこそが、落語の魅力」と語るのが、落語専門誌の編集人 佐藤友美さん。大人だからこその「落語の楽しみ方」を教えていただくインタビューの第2弾です!
【参照記事:初心者のための寄席ことはじめvol.1 達人に教わる!「落語の楽しみ方」インタビュー】

落語には、大人だからこそ共感できる要素がたくさんある

――― 佐藤さんの考える落語の魅力とはどういったところでしょうか?

佐藤友美さん(以下、佐藤) 聴く側が自分の頭で想像してストーリーを描く楽しみ、でしょうか。ある程度人生経験があったほうが鮮やかにイメージできると思うんです。だから昔は、落語=おじいちゃん・おばあちゃんが聴くもの、という印象が強くあったのかもしれません。

もちろん子供が聴いても楽しめるんですが、落語って男女の仲や結婚を題材にしたもの、離れ離れに暮らす親子が再会する噺など、自分の経験と重ねながらその噺の世界に入っていけるんですよね。あとは、同じ噺でも演者によってこんなにも印象が変わるのかという聴き比べも楽しいですよ。

――― 落語を題材にした漫画やアニメも人気と聞きました。

佐藤 昔から落語をモチーフにした漫画はありますが、雲田はるこさんの『昭和元禄落語心中』(講談社)は、画のタッチも繊細で登場人物もかっこいいので、女性ファンがとても多いと聞きますね。同漫画を原作とするテレビアニメも人気でした。尾瀬あきらさんの『どうらく息子』(小学館ビックコミックス)は人気落語家のひとりである柳家三三師匠が、この作品の監修に付いているので、落語界の描写がリアルだと私たちの編集部でも話題なんですよ。

――― Precious.jp読者にオススメなお噺はありますか?

佐藤 個人的な好みになってしまいますが「あくび指南」は、仕事で辛いことがあっても一瞬それを忘れさせてくれるようなバカバカしさが楽しい演目かと思います。文字通り、あくびの仕方を教わる噺なのですが、あくびを教え・教わるという、実のなさが落語らしいと思います。

「らくだ」もオススメです。お酒が好きな人ならきっと思い当たる節があるような噺です。脅す男と脅される男、という力関係の二人が、お酒を飲み進むうちにだんだんと立場が逆転していく様子に注目です。

落語は日本の四季を感じさせる演目も多いんですよ。ちょっと季節を先取りする噺をしてくれる。二月からお花見の噺が聴けたり、夏が近づけばほおづき市や屋形船の出てくる噺や暑さを忘れるような怪談噺がかかることも。仕事や家事で忙しいと、季節の移り変わりを感じる余裕がなく日々が過ぎ去ってしまうかもしれません。でも、落語から四季や風情を感じるのも、粋な楽しみ方ですよね。

――― 気軽に、でも大人だからこそ楽しめる伝統芸能が落語なんですね。

佐藤 そうですね。伝統芸能であり、娯楽でもありますね。実は今年は特に、真打昇進が多い年なんです。各寄席では真打披露興行と呼ばれるイベントが行われています。その時には、落語協会の会長や理事、その一門の師匠方が一同に集まるので、普段の寄席ではなかなかそろわない豪華な顔ぶれを見ることができます。お祝いの華やかなムードもいいものです。

例えばですが、映画館に行って観た映画が仮に面白くなかったとしても、映画そのものを嫌いになる人はいないと思うんです。落語も同じ。何度か足を運んでみて、好きな演者を見つけたり、自分ならではの楽しみ方をつくってくださいね。何はともあれ、まず寄席や落語会に足を運んでライブで接してみてください。

『東京かわら版』の創刊は、昭和49年(1974年)11月。創刊当初は落語を含む演芸情報のほか、映画やスポーツ情報なども扱う総合情報誌だった。
『東京かわら版』の創刊は、昭和49年(1974年)11月。創刊当初は落語を含む演芸情報のほか、映画やスポーツ情報なども扱う総合情報誌だった。
PROFILE
佐藤友美(さとう ともみ)
日本で唯一の演芸専門誌「東京かわら版」編集長。愛読していた『東京かわら版』記事を見てアルバイトとして入社。2004年より編集人を務める。
この記事の執筆者
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クレジット :
取材・文/八木由希乃