普段、何気なく食べているご飯のお供、「とろろ」。最近では納豆やオクラなどの「ネバネバ食材」のひとつとして、健康目線からも注目を集めています。

そんなとろろ、ご飯や麦飯にかけていただくと格別ですよね。

今回は、そんな「とろろご飯」を最高においしくいただくためのヒントをご紹介します。

とろろ汁が名物の静岡県静岡市「丸子(まりこ)」の地で、400年以上にも渡ってとろろ汁を提供し続けている「元祖 丁子屋(ちょうじや)」へとインタビューした内容は必見です!

とろろ芋をすりおろして味付けをしたり、のばしたのが「とろろ汁」

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「元祖 丁子屋」のとろろ汁と麦飯

現在、「とろろご飯」として親しまれているのは、とろろ芋をすりおろしてつくるとろろ汁を、ご飯にかけていただくもの。

とろろ芋には、日本原産の自然薯(じねんじょ)や山芋、長芋などが使われます。とろろ芋をすりおろしたものに魚の煮汁に醤油や卵を入れ、さらに味噌汁やすまし汁などでのばすなどして味付けがされます。

特に、濃いとろろ汁を麦飯にかけて食べるのは「麦とろ飯」として知られています。

そのとろろ汁が名物の場所といえば、江戸時代に、東海道五十三次の20番目の宿場町として賑わったとされる丸子(まりこ)宿。

静岡産の自然薯をすりおろしてつくられるとろろ汁と麦飯のセットは、多くの旅人の空腹を満たし、活気づけてきたといわれています。

「山芋(大和芋)・長芋・自然薯」の違いとは?

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自然著

現在、とろろ汁に使うとろろ芋といえば、山芋(大和芋)や長芋がポピュラーではないでしょうか。また、伝統的な自然薯を使って、本格的なとろろ汁を楽しむこともできます。

とろろ芋の違いによって、とろろ汁はどう変わるのでしょうか?

丸子の地で、江戸時代から受け継がれてきた、とろろ汁を味わえる丁子屋の担当者に、「山芋(大和芋)・長芋・自然薯」それぞれでつくるとろろ汁の違いを教えていただきました。

強い粘りが特徴の山芋(大和芋)

「山芋は自然薯に比べ、しっかりした強い粘りがあります。だしや味噌汁でのばすとろろ汁には向いています。自然薯ほど風味が強くないので、自然薯が苦手な方にはおすすめです」

サラサラした食感で水分が多い長芋

「長芋のとろろ汁はサラサラとした食感に仕上がります。水分が多く、風味も粘りも弱いので、すりおろしたものに醤油などの味の濃いものを少し加えるとよいです。水分が多すぎるので、味噌汁やだしでのばすとろろ汁には不向きです」

伸びやかな粘りが特徴の静岡県産の自然薯

「静岡県産の自然薯は、土の香りと伸びやかな粘りが特徴です。香り豊かで、だしと白味噌の風味をお互いに引き立たせてくれます。粘りがありながら、きめ細かな食感になります」

とろろ芋の種類によって、とろろ汁の食感や味わいに違いが現れるようですね。なんとなく手に取っていた芋ごとの特徴を、改めて味わってみたくなります。

最高に美味しいとろろご飯のポイントは?

とろろご飯の最高のおいしさをはどんなところから生まれているのでしょうか? 丁子屋の担当者に伺いました。

1.静岡県産の在来自然薯を使用

「一番とろろ汁を美味しくするのは、古くからとろろ汁に使われてきた静岡県産の在来自然薯。薯の香りが強いのが特徴です」

2.自家製白味噌の塩気と風味

「味噌汁の味噌は、国産高級大豆と生きた糀(こうじ)を使用した白味噌を使用しています。その白味噌の塩気と風味も欠かせないとろろ汁の引き立て役になります」

3.かつおだしの風味

「丁子屋のとろろ汁には、焼津産の香り高いかつおぶしのだしのきいた味噌汁を使用しています」

4.「麦3:白米7」の炊き立てご飯

「とろろ汁をかけていただくご飯は、やはり麦飯が合います。おすすめは『麦3:白米7』の炊き立てご飯です。麦2割だと白米の粘りがくどくなり、4割だと逆に麦のサラサラ感が強くなります。一番、のど越しのいい塩梅(あんばい)が3:7なのです」

5.よりおいしくなる食べ方

「とろろご飯は、食べ方も大事です。よりおいしくなる食べ方があります」

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丁子屋の定番メニュー「丸子(まりこ)」¥1,400(税抜)

これらの条件、自宅でも食材がそろえば実現できそうです。ぜひトライしてみましょう!

そして気になるおいしい食べ方は、次で教えていただきます!

元祖 丁子屋が推奨!とろろご飯の美味しい食べ方

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たっぷりととろろ汁をかけて

丁子屋に伝わる、とろろご飯のおいしい食べ方を教えていただきましょう。

其の一 麦飯を茶碗に半分程度盛ります。
其の二 米粒がおよぐぐらいに、たっぷりととろろ汁をかけます。
其の三 お好みの量の薬味をかけます。
其の四 ザーザーと音をたて、流し込むように食べてください。

「素材にはこだわっていますが、最終的にとろろご飯のおいしさを決めるのは、お客さま次第。まず、米粒が泳ぐぐらいとろろ汁をたっぷりかけてください。そしてとにかく泡立つくらい、ご飯ととろろ汁をよくかき混ぜてください。おいしさの質が変わります。

最後に、音を立ててザーザーとかき込んでください。音を立てるというのは、空気をより多く吸い込むということ。自然薯・かつおだし・自家製白味噌の香りをより多く楽しめます」

ポイントは、とろろ汁をたっぷりかけることと、かき混ぜること、そして音を立てて食べることといえそうです。ぜひ実践してみましょう!

とろろ芋をふんわりと、美味しくすりおろすコツ

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ふわふわにすりおろすにはすり鉢を使う!

ところで、とろろ汁を作るときに欠かせないのが、とろろ芋をすりおろす工程です。ふんわりとすりおろすコツはあるのでしょうか?

「すり鉢でおろすのが一番! きめ細かくふんわりと仕上がります。ない場合は、おろし金で、前後、つまり縦に動かしながらすりおろすと、風味が増します。実は一番香りのある部分は、皮と実の間なんです。ときおり、鉛筆削りのように回転させると、皮の部分も上手にすりおろせますよ」

これまで、うまくすりおろせなかったという人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。


今回は、とろろご飯を最高においしく食べる方法をご紹介してきました。とろろ芋の違いによる食感や味わいの違い、5つの最高にとろろご飯をおいしくする条件、おいしい食べ方、ふわふわにするすりおろし方などを参考に、とろろご飯をおいしくいただきましょう。

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子、榊原淳