近年、世界で日本の「抹茶」が評価されていることもあり、日本でも洗練された抹茶スイーツが次々と登場しています。「洋」の要素がプラスされた商品も多く、新たな魅力を引き出しているものも。
今回ご紹介する5つの抹茶スイーツは、どれも抹茶の特性を見極めた逸品ぞろい。そのこだわりと共に、抹茶を菓子に使うときのポイントをインタビュー。繊細な作業を経て生まれた、極上の抹茶スイーツを味わってみましょう。
5つの高級感漂う抹茶スイーツ!そのこだわりとは?
■1:高級抹茶ケーキ手土産の代名詞!ブーランジュリートーキョーの「抹茶のテリーヌ」
抹茶ケーキのなかでも、高級感漂い、手土産としても筆頭にあがるのが、ザ・プリンス パークタワー東京のベーカリー・ケーキショップ「ブーランジュリートーキョー」の「抹茶のテリーヌ」。そのこだわりを、ザ・プリンス パークタワー東京のシェフパティシエ 長田和也さんにうかがいました。
「濃厚な抹茶にチョコレートを合わせ、抹茶本来のうま味を一気に凝縮し、オーブンでじっくり焼き上げています。口の中でふわっと溶けるしっとりなめらかな味わいが特徴です。焼き立てはもちろんのこと、少し冷やしてお召しあがりただくのもおすすめの一品です」
抹茶スイーツをつくるときのポイントは、どのような点があるのでしょうか。
「抹茶の量と焼き加減です。抹茶の量が多すぎると苦みが強すぎたり、色が濃く出すぎたりします。また、焼き加減の調整は、抹茶のもつ綺麗な緑色を出すために欠かせません」
あの深緑色の美しさは、高級感漂う抹茶ケーキに必要不可欠。焼き加減に関係していたとは…! 残念ながらブーランジェリートーキョーは通販は対応していませんが、外出自粛時期が過ぎたら、ぜひ足をはこんで
■2:宇治茶専門店が贈る「抹茶×チーズ」が新しい「ゆめみどり」
抹茶スイーツといえば、思い出すのが京都。京都には抹茶を使用したスイーツを手がけているお店が多いなか、特に抹茶にこだわるのが、江戸時代から受け継ぐ伝統を守る宇治茶専門店、伊藤久右衛門(いとうきゅうえもん)。
石臼挽きの宇治抹茶をふんだんに使用した数々の抹茶スイーツのなかでも、宇治抹茶チーズケーキ「ゆめみどり」は、お取り寄せとしても人気の抹茶ケーキです。そのこだわりを伊藤久右衛門のグランシェフである吉本さんにうかがいました。
「クリームチーズの濃厚なコクと、抹茶の渋味が互いに引き立て合うチーズケーキにするため、レシピはシンプルにしています。
クリームチーズは、抹茶との相性にこだわり、石臼挽き抹茶の味わいと溶け合う、程よい酸味と爽やかな風味をもつオーストラリア産クリームチーズを使用しました。タルト生地は、プレーンではなく、濃厚なチーズと抹茶に負けない、苦みをきかせたココア生地になっています」
抹茶スイーツをつくるときのポイントは、どのような点があるのでしょうか。
「一番は、熱のかけ方です。抹茶は、そもそも素材として熱や光に弱く、すぐに香りや色がとんでしまいます。このチーズケーキは、低温でじっくり焼き上げることで、色や香りをとばさないようにしています」
抹茶は香りや色が命のようです。それをいかに生かすかがプロの技であるようですね。
■3:宇治抹茶と国産クリームチーズの不思議菓子!くろぎ茶々の「常葉 白練(ときば しろねり)」
京都発お茶の老舗「福寿園」と日本料理「くろぎ」がコラボしてGINZA SIXに展開している「くろぎ茶々」。抹茶の和菓子「常葉(ときば)白練(しろねり)」は、木箱入りの上等さが魅力。
そしてなかには、抹茶の葛羹の上層と、国産のクリームチーズの下層が重なった、もっちりとした食感の新鮮なスイーツが笹の葉で包まれています。まるでプリンのようでいて、少し硬めで、不思議な魅力があります。
くろぎ主人の黒木純さんに「常葉 白練」のこだわりを教えてもらいました。
「創業230年京都福寿園が、昔ながらの石臼を使い挽きあげた新鮮で上質な宇治抹茶を使い、芝大門くろぎがつくりあげたのが常葉 白練です。クリームチーズのまろやかな酸味、甘味というスイーツの風味を組み合わせながら、抹茶の香りと爽やかな苦味を最大限に生かすことにこだわりました」
抹茶スイーツをつくるときのポイントは、どのような点があるのでしょうか。
「抹茶のお菓子で大切なのは、お茶の香り、爽やかな苦味、そして鮮やかな緑色です。抹茶は繊細なので、スイーツになっても保管温度管理を見極め、光が当たると酸化し色が変わるので遮光に気をつけ、3つの要素をしっかり残し、おいしさを守ることを徹底してこそ、抹茶本来のおいしさを堪能できます」
ここでまた学びが! 香り、苦み、色の3つの要素は、抹茶の大きな特徴であり魅力であるようです。そこに温度や光などの配慮が重要になるようですね。こちらも通販では展開しておらず、GINZA SIX限定なので、いずれ訪れたいリストにチェックしておいてくださいね。
■4:宇治抹茶そのものに強いこだわり!辻利兵衛本店の「宇治抹茶もんぶらん」
宇治の抹茶スイーツを長年つくり続けている辻利兵衛本店。その多数の抹茶スイーツのなかから、今回取り上げるのは、「宇治抹茶もんぶらん」。抹茶ダマンドを敷き詰めたクッキー生地に、渋皮栗を包んだマロンクリームをのせて、鮮やかな緑色の抹茶クリームで包まれています。
そのこだわりを、辻利兵衛本店の広報担当、久木さんにうかがいました。
「当店は宇治茶の製茶問屋です。茶・抹茶に興味をもっていただくため、抹茶スイーツをつくり始めました。ですので、この宇治抹茶もんぶらんに限らず、当店の抹茶スイーツは、どれも濃茶仕様。
すべて『挽きたて』の宇治抹茶を贅沢に使用しております。また使用している抹茶はどれも石臼挽き抹茶。そして、つくるものに合わせて使用する抹茶を変え、より抹茶の風味・薫りなどをお楽しみいただけるようにおつくりしています」
抹茶スイーツとしてのむずかしさといえば、どんなことがあるのでしょうか?
「お抹茶は、日の光やライトで鮮やかな緑色は茶色い色へ退色します。お茶に関する着色料・香料は一切使用していないため、商品をそのまま陳列することができず、特にもんぶらんはカップが透明なため、ライトが当たらないように商品を保管しています。
また、抹茶は水分を吸収する特質があるため、生地に入れると生地がぱさぱさに、クリームに入れるとクリームがだれやすくなります。そのため、小麦粉の種類を変えたり、ゼラチンをいれたり改良し続けています。
ただ、極限まで抹茶を使用しているため、ゼラチンを入れてもなおクリームは固まらず、長時間のお持ち帰りはおすすめしておりません。お茶の問屋だからこその、まるでお濃茶を飲んでいるかのような味筋をどこまでスイーツでつくれるか、そこが弊社の商品づくりのうえで一番むずかしい点と思っております」
光による変色のほか、水分を吸収する性質があるとは初耳ですね。そんな工夫がされていたとは驚きです。
■5:プリン専門店POPOCATE(ポポカテ)が手掛ける抹茶プリン「POPO抹茶」
東京・渋谷区にあるプリン専門店POPOCATEは、瓶ににっこりと笑った顔が書かれているカスタードプリンが看板商品。ほかにもチョコやチーズなどさまざまな味のプリンを展開するなか、抹茶味のプリン「POPO抹茶」はひときわ上質な雰囲気を醸し出します。
それもそのはず、使用している宇治抹茶は、日本茶の老舗である京都「一保堂茶舗」のもの。底に敷き詰められている北海道十勝産の粒あんとの相性を楽しめます。
そこでPOPOCATE責任者の長岡義彦さんに、こだわりをうかがいました。
「2015年3月1日オープン当初から抹茶プリンはありましたが、このPOPO抹茶は完成までに3か月を費やしました。お菓子用の抹茶パウダーを使えば簡単にできるのですが、どうしても本物の抹茶を使いたく、味、香りを備えた京都の一保堂茶舗さんの抹茶に辿りつきました。
抹茶プリンの下には餡子が入っており、当初、自分たちで小豆を煮てみましたが、どうしても納得が行かず、餡子を卸してくれるお店を探しました。そこで板橋のとあるお店に辿り着き、おいしい餡子との出会いがあり、今に至っています」
抹茶をスイーツに使うことのむずかしさはどこにあるのでしょうか?
「パウダーと違い、本物の抹茶は、卵や牛乳に混ざることはあっても決して溶けることはなく、いかに綺麗な色合いを出すか、そして分離させずに落ち着かせるかが試行錯誤の連続でした」
本物の抹茶は、溶けることはないというのは、実際に食べてみて口の中でも確かめてみたくなりますね。見た目の可愛さとは裏腹に、苦労に苦労が重ねられた抹茶プリンであるようですね。
こだわり抜かれた抹茶スイーツ5つをもとに、抹茶の特性を探ってきました。量、色、香り、苦みなどを実現するために、さまざまな工夫や試行錯誤がされてきた上質な抹茶スイーツたち。ぜひ改めて、それぞれの抹茶の味わいを堪能してみるのもよさそうです。
※掲載した商品はすべて税込です。
問い合わせ先
- ザ・プリンス パークタワー東京「ブーランジュリートーキョー」 TEL:03-5400-1111(代表)
- くろぎ茶々 TEL:03-6264-5754
- POPOCATE(ポポカテ) TEL:03-5738-8533
- 伊藤久右衛門 TEL:0120-27-3993
- 辻利兵衛本店 TEL:0774-23-1111(本店事務所)
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利
- EDIT :
- 安念美和子