世界中で蔓延している新型コロナウイルス。外出の自粛要請が出たことで、毎日通っていた会社に出勤できなくなったり、趣味のコンサートやイベントに行けなくなったりなど、それまでの日常がガラッと変わってしまった方も多いのではないでしょうか。

自分や自分の大切な人がウイルスに侵されてしまうかもしれないという不安や恐怖を抱え、心が落ち着かない、気分が落ち込みやすいと感じてしまう方もいらっしゃるはず。

本記事では、心理カウンセラーの青柳雅也さんに、今の状況は人々の心にどんな変化をもたらすのか、そして鬱々としがちな毎日の中で、自分の心を守る方法について教えていただきました。

外出の自粛要請が続く現在、かなりストレスを感じやすい状況

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外出自粛により、心はどうなってしまうのか?

新型コロナウイルスによる外出自粛制限。増え続ける患者数を報道するニュース。現在の状況は、未だかつて私たちが経験したことのない事態となっています。

どんなことがきっかけで、私たちの心は揺らいでしまうのでしょうか。青柳さんは、下記の3つのようなシーンで人間はストレスを感じやすいと言います。

・コントロールを失っている状態
・環境の変化
・未知のこと

「身近にあるこれらの状況ですが、人間はその状態が長く続くことで、更に強いストレスを感じます」と、青柳さん。

まさに今の状態は、多くの人の心に変化をもたらすと言えるのではないでしょうか? さらに青柳さんは、「メディアはネガティブなことを中心に伝えるため、情報の細部に目がいかずどんどん悪くなっていっているような印象を受けやすくなります」と警鐘を鳴らします。

必要以上に新型コロナウイルスのニュースを見ることで、心にネガティブな変化が出てしまう場合も考えられます。時間を決めてニュースをチェックする、不確かな情報に踊らされないなど、自身の心を守るような行動を心がけてみるとよさそうです。

他者の感情に引っ張られない、依存症に気をつける

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今の状況が長期化することで、精神状態にも変化が

さらに現在の状況において、気をつけなくてはならない心の変化があるのだそう。

「ウイルス感染と同じように、人間同士で感染しやすいものがあります。それは『感情』です。もし、自分がイライラしていなくても、他者のイライラしている感情を直接的にも間接的にも受ければ、感情感染が起きるでしょう」(青柳さん)

イライラ、怒り、悲しみの感情も人から人へ波及してしまう可能性も考えられます。できるだけ、そういった自分の心にネガティブな影響を与える感情に触れないようにすることも、自分の心のバランスを守るには大切なことかもしれません。

さらに青柳さんによると、人と接しない孤独な状況は、それだけでも人々の心にネガティブな影響を及ぼすことがあるのだとか。「『孤独からのさみしさ』が、依存症のきっかけになることは少なくありません」とのこと。身近に潜むアルコール依存症や、スマホ依存などには十分注意が必要です。

人との感情共有に気をつける、「しない」から「する」に意識を変換する

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考え方を変えてみよう!

外出自粛の状況のもと、家にこもることで鬱々とした気持ちになることもあるかと思います。青柳さんによれば、以下のふたつのことに気をつけて過ごすのがよいそう。

・人にネガティブ感情をぶつけない
・「しない」を意識し過ぎない

前述した通り、人から人に感情は伝達することが多いもの。自分のイライラを誰かにぶつけることで、さらに相手がイライラしてしまう可能性も。こんな時だからこそ、人と話す際は、ネガティブになり過ぎないように注意してみてください。

「人間は『しない』ということを意識することが、無意識的に苦手なんです。例えば、『パンダを想像しないで』と言われても、想像してしまいますよね。

ですから、『外出しない、人と会わない』と意識するよりは『読書をする、映画をみる』など、家を出ない=『しない』から、家でできること=『する』へ、意識を変換していくことが大切になってくると思います」(青柳さん)

このほか、凝った料理をつくってみる、部屋を片付けてみるなど、家の中でできることもたくさんあります。「外に出られない……」とマイナス面だけに目を向けるのではでなく、「家でこんなことができる」というプラス面に意識を向けてみてはいかがでしょうか。

「外出を控えるのであるならば、やれることは限られていますよね。あれもしなきゃ、これもしなきゃと思うのではなく、曖昧にすることで気持ちを焦らせないようにしてみてください。

私たちは、人によって個性があります。過度に情報に飛びつき過ぎて『こうやって過ごさなきゃ・過ごすべき』と感じてしまうと、それはストレスになりかねません。

普段していることをしたい人は継続して行うといいと思いますし、新しいことにチャレンジしたい人は、ぜひチャレンジしてみてください。私たちは、文明がもたらす便利さによって、『忙しく・急ぐ・ながら』という生き方に慣れてしまっていることに気づく時かもしれませんよ」(青柳さん)

家で過ごす時間がある今だからこそ、気持ちをゆったり落ち着けて過ごしてみる。ぜひ自分の心の負担にならないように、おうちでの時間を大切にしてみてください。

心の疲れや落ち込みがないかチェックしてみよう

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心の悲鳴に耳を傾けて

自分では大丈夫だと感じていても、知らず知らずのうちに心が疲れていたり、落ち込んでいたりすることも。下記のチェックリストに当てはまる箇所がないか、定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか?

・眠れない
・早朝目が覚める
・寝起きから倦怠感を感じる
・微熱が続く
・食欲がない
・興味があったことまでなくなる
・身だしなみがどうでもよくなった

「上記のチェックリストのような症状が、2週間以上続くようでしたら、オンラインのカウンセリングなどを受けてみるのもいいかもしれません」(青柳さん)

オンラインのカウンセリングなら、家にいながらでも受けられますね。チェックリストを見て気になった方は、受診してみてください。


気分の落ち込みが判明したら、無理せずプロに相談するのがベターです。ぜひ、教えていただいたことを大切にし、おうちでの時間に目を向け、心を守る行動をとってみて下さい。

青柳雅也さん
心理カウンセラー
(あおやぎ まさや)「髪の毛のあるお坊さん」を目指し活動中の心理カウンセラー。「カウンセリングルーム アンフィニ」代表。個人カウンセリングや企業のメンタルヘルスケア、企業研修、学校での心理学の非常勤講師など、活動は多岐にわたる。「カウンセリングは敷居が高いと思われがちですが、気軽にご相談ください」と語る。独自手法で短期での解決をもたらしている。
この記事の執筆者
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WRITING :
まつだあや
EDIT :
小林麻美