新型コロナウイルスの影響下で、外出自粛が続く毎日。筆者も買い物の回数を減らすなど、外になるべく出ないよう努めていますが、ひとつ例外があります。それは「献血」。
不要不急の外出にあたらないとされる献血ですが、実際に行ったことのある方でないと、ちょっと他人事というか、遠い場所の話というイメージもあると思います。筆者も5年前に始めるまでは、必要とはわかっていても、献血ルームの前を通り過ぎるだけで、特にアクションを起こすことはありませんでした。
そこで今回は、東京都赤十字血液センターの玉木 亮さんに、緊急事態宣言下における献血の現状を伺いつつ、実際に献血ルームを訪れた体験をご紹介し、少しでも献血に身近なイメージを持っていただけたらと思います。
新型コロナウイルスの影響で、輸血医療に影響が出る可能性も
テレビや新聞などで、各地の献血者数が減少してピンチ!というニュースを目にした方も多いはず。実際の状況はどうなっているのか、玉木さんに詳しくお伺いしました。
「もともと冬期や年度初めは献血者数が減少する時期なのですが、今年は外出自粛要請や緊急事態宣言により、予定していた企業や学校、あるいはイベントでの献血バスの多くがキャンセルとなりました。
東京都内では、代替となる献血バスの受け入れ先を探したり、献血ルームへの来場を呼び掛けていますが、依然として日々の献血者数が、計画人数に対して2割程度を下回る状況が続いています。
現在は、何とか医療機関に安定して輸血用血液を届けることができておりますが、今後、さらに外出自粛が強まる中で、献血ルームや献血会場へのご来場者数が少なくなってしまいますと、輸血用血液のお届けに支障をきたす恐れがありますので、緊急事態宣言下においても、皆さまの継続した献血のご協力が必要です」(玉木さん)
緊急手術などで、必要な方に輸血ができないような事態は避けたいものです。
シックなギャラリー風の新宿東口駅前献血ルーム
今回お邪魔したのは、新宿東口のアルタの並びにある、新宿東口駅前献血ルーム。家から徒歩で向かいました! ここは新宿にいくつかある献血ルームの中でもっとも新しく、アート&ギャラリーをテーマにしたスタイリッシュなインテリアです。献血ルームは場所によってインテリアや雰囲気が違うので、あちこち訪れてみる楽しみもあります。
まずは受付で献血の種類を選び、献血前の質問に回答
ルームの中に入る前に、入口で検温チェック。発熱(37.5℃以上、もしくは平熱より1℃高い場合)があると、中に入ることができません。
予約(※予約については詳しく後述)をして行ったので、受付で名前を伝えると、待ち時間もほぼなく手続きの開始です。
献血の種類は、大きく分けて「全血献血」と「成分献血」の2種類あります。血液をすべて提供するのが「全血献血」で、血小板や血漿など、特定の成分のみを採血し、回復に時間のかかる赤血球などは再び体内に戻すのが「成分献血」です。
筆者は、提供した血液成分の回復期間が「全血献血」と比較して短いことから、短期間に複数回の提供が可能な「成分献血」を行うことが多いです。
その日、献血ができるかどうかは、さまざまな採血基準が設けられており、それは協力する献血の種類によっても異なります。
筆者も20代のときには低血圧で献血できず、30代のときはヘモグロビン値が献血の基準に満たなかったため、またも献血できず、40代で改めてトライしたところ、血圧もヘモグロビン値も基準をクリアすることができました。
年齢、体重のほかにも、海外にいつどこに滞在したかや既往症など、さまざまな質問に答え、採血基準をクリアすると、問診へ進みます。
本日の担当医師の方に、その日の血圧を確認していただいたのち、質問で気になったことや本日の体調についても聞かれます。具合が悪い場合はここで正直に伝え、その日は不採血になる場合も。自身の安全のためにも、決して無理はしないことも大切です。
問診が終わると事前検査へ進みます。ここではヘモグロビン濃度が採血基準を満たしているかどうかや、血液型を事前に検査します。筆者が行う「成分献血」の場合は、血小板数もこのときに調べ、この日は「血小板成分献血」に決定しました。
いよいよ採血開始!なるべく楽な姿勢を取り、雑誌やテレビを見たりしてリラックス
いよいよ採血の時がやってきました。献血ルームの看護師さんは本当に針を刺すのがお上手。献血は一般的な注射よりも針が太めですが、筆者の場合はいつもちょっとチクッとするだけです。
採血中は、採血している腕は動かせないものの、少しでも楽なように椅子の角度を調節してくれたり、クッションをもってきてくださるので、すっかりリラックス。
実際の採血時間は「全血献血」だと15分程度、「成分献血」だと40~60分程度。筆者が行った血小板成分献血は、もう少し時間がかかることも多いですが、テレビや雑誌(※)を観るもよし、自分のスマホをいじるもよし、思い思いに過ごすうちに、あっという間に過ぎていきます。この間に、ドリンクでの水分補給もすすめられます。
さて、献血が無事に終了です。この後は気分が悪くなったりしないよう、待合室で飲み物を飲んだり、お菓子を食べながら休憩して、終わりとなります。
休んでいるときに、スタッフの方が献血カードと、献血の記念品を持ってきてくれます。この記念品は、キャンペーンや予約などによるポイント数、また献血ルームによっても備えているものが変わります。
献血に関して、より深く聞いてみました
無事に献血を終えたところで、筆者が周りの方からよく聞かれたり、Twitterなどで見かける献血にまつわる疑問について、玉木さんにさらに質問してみました!
「献血は不要不急の外出に当たらないとされていますが、公共の交通手段を使って、無理に遠くの献血ルームまで足を運ぶようお願いするのは難しいと考えています。
現在は企業や大学などの団体献血の中止や延期により、普段は献血会を実施していなかったり、開催の頻度が少なかった駅前や大型ショッピングセンターなどにも献血バスを配車して、臨時献血会を開催しておりますので、当社ホームページで、お近くに献血バスが来るタイミングをチェックしていただけたら幸いです。
もちろん、献血ルームのお近くにお住まいの皆様は、ご近所の方にもお声掛けいただいてご協力いただけたらと考えています。
また、献血ルームでは『三密』を避けるために、さまざまな対策が取られています。献血ルーム内の消毒や、検温、人と人との間隔を空けるのはもちろんですが、なるべく前日までに予約していただくことで、時間帯ごとのご来場数を適正なものとし、混雑による『密集』が生じないよう、ご協力をお願いしております」(玉木さん)
テレビなどで献血者の減少が大きく報道されると、一時的に多くの方が訪れてくれるものの、密接を避ける来場者数の調整のために、待ち時間が長くなったり、断らなくてはならないこともあり、心苦しいと語る玉木さん。
献血した血液は保存期間が4~21日間と短いため、一度に人が押し寄せてもずっとストックしておけるものではなく、適切な人数が継続的に訪れることが望ましい状態なのだとか。
各都道府県の献血バスの運行予定は、日本赤十字社のページから調べることができます。
献血の予約は、行きたい献血ルームへ電話するか、献血経験があって献血者コードを持っている方は、WEB会員サービス「ラブラッド」から行うことができます。今は献血者コードがない方も、一度献血をすれば献血コードが発行されるので、「ラブラッド」に登録することができます。
「ラブラッド」に登録すると、WEBの予約が簡単にできるのでおすすめですが、さらに筆者が個人的に推したいのは、ラブラッドのLINEアカウントと連携すること。
LINEから予約ができるだけでなく、前日にはリマインド、終了後には体調を気遣うメール、そして血液検査の結果のお知らせなど、きめ細かに手厚くフォローしてもらえます。
何のために献血するのか、改めて考えてみました
もともと、ボランティア活動はほとんどしたことがなかった筆者。せいぜい災害時や動物愛護の寄付くらいです。
献血をするようになって、なぜこんなにせっせと通うのか自分でも考えてみたのですが、理由のひとつに、ダイレクトに人の役に立っている感覚が味わえるという点があります。看護師さんにもかなりほめてもらえますし、自己肯定感も急上昇です(笑)。
自分のことは、奉仕精神にあふれた立派な人間ではないと思っていますが、友人の友人の知人の親戚とか、遠くつながる誰かのためになるといいな、という気持ちで協力しています。
そして献血活動をしているうちに気づいたのが、献血できる体であることに感謝できるというのも、大きなポイントです。今はできていますが、筆者も40代半ば。いつ体調を崩したり、病気になって献血ができなくなってもおかしくありません。また、事故などで輸血(※)を受けることもあるかもしれません。
献血に協力すると、筆者の場合はだいたい翌日(※)に、LINEに血液検査の結果が届きます。ハガキで検査結果を希望する場合は、もう少し時間がかかるようです。そこから「ラブラッド」のWEBサイトへアクセスすると、今回の結果に加え、過去の結果との数値を比較することができます。
この血液検査の結果を見るのもひとつの楽しみで、コレステロール値が上がったら食生活に気をつけたり、3日に1回ほど鉄分のサプリメントを飲むなどしています。
なるべく長く献血ができるように、この数値がなるべく正常範囲で収まるよう気をつけることで、結果的には自身の健康維持にも役立っています。
緊急事態宣言が出されてから幾日もたち、今後は世界がどういった状況になっていくのか見えず、不安に感じている方も多いと思います。
もしお近くに献血ルームがあったり、献血バスが来る予定がある方は、よかったら献血に足を運んでみませんか? 不安なときだからこそ、誰かのために行動できたという事実は、自分の心強さにもつながると思っています。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 安念美和子