緊急事態宣言が延長され、家で過ごす生活が続く今こそ、おうち時間を充実させたいもの。まずは、朝一杯のコーヒーを美味しく淹れることで、幸せな1日を導いてみませんか?

今回は、鎌倉で不動の人気を誇るコーヒー店「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」のマスター・堀内隆志さんに、ハンドドリップでコーヒーを美味しく淹れる、その極意を教えていただきます。

ミルで豆を挽き、ドリップした一杯は香りも格別。もちろん、「すぐ飲みたい!」派のためにも「手間をかけずにおいしく飲める」便利アイテムもご紹介します。ゆっくりとドリップする時間が日々を豊かにしていく、新たなルーティンになりますように。

堀内 隆志さん
「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」マスター
1994年、鎌倉に「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」をオープン。1990年代のカフェブームの草分け的店となり、2009年からは自身で焙煎もスタートさせる。ブラジル音楽にも造詣が深く、マスター業のかたわらCDのプロデュースやラジオのパーソナリティ、書籍執筆と幅広く活躍。著書は『コーヒーを楽しむ。』(主婦と生活社)、『鎌倉のカフェで君を笑顔にするのが僕の仕事』(ミルブックス)など。趣味はコーヒーミル蒐集とプロレス観戦。

気持ちを整える効果は絶大!自宅で本格コーヒーを淹れる方法とは? 

“マスター”こと堀内隆志さん。
「マスター」こと堀内隆志さん。自宅のキッチンでハンドドリップするのは長年の朝の日課。今日はお気に入りの「sacai」のアロハシャツで。

「STAYHOME」生活のなかで、お取り寄せの売り上げが伸び続けているのがコーヒー豆。自宅で過ごす時間が長い今、コーヒーの需要が増えているのも納得できます。こんなときにこそ、改めて本格的な淹れ方にトライしてみませんか?

鎌倉の「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」のマスターこと堀内隆志さんに、ご自宅のキッチンにて、ハンドドリップのコツを教えていただきました。

昨年25周年を迎えた「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」は、いつ誰が訪れてもくつろげる喫茶店の心地よさと、ハイグレードな豆を自家焙煎するコーヒー店としての実力を併せ持つ人気店。この店のマスターであり、焙煎士である堀内さんは、日中は店のカウンターでハンドドリップし、夜は明け方まで焙煎作業をする日々を送っています。ドリップと焙煎、そしてコーヒーの道具へも並々ならない愛情を注ぐ、コーヒー界のキーパーソンです。

「ハンドドリップは、クラフト感=手仕事感があるところが魅力です。コーヒーを淹れる時間は集中できますし、不安な気持ちや疲れもいっとき忘れられて、立ち上る香りをかぐことでリラックスできます。時間に余裕のある今だからこそ、ハンドドリップに挑戦してはいかがでしょう」(堀内さん)。

■STEP1:基本の道具をそろえましょう

基本の道具
左から 「コーノ」のドリッパー&サーバーセット¥5,970・「タカヒロ」の細口ドリップポット 0.9L(ディモンシュオリジナルカラー)¥13,618・ドイツの「ザッセンハウス」社製コーヒーミル「サンディアゴ」¥22,000・コーヒー豆の保存缶(大)¥880(税込) ※いずれも「ディモンシュ」特注デザイン。すべてオンラインショップで購入可能です。

さて、まずは道具の準備から。ハンドドリップの基本となるドリッパー(コーヒー粉を入れて抽出する器具)は、大きく分けて台形と円錐形がありますが、堀内さんが開店当初から使い続けているのが「コーノ式」の名称で知られる円錐形ドリッパー。湯だまりをつくってじっくりと成分を抽出する台形ドリッパーに対し、ネルドリップから着想を得て、垂直に湯を落として抽出する円錐形は、軽やかで雑味のない味に淹れられるのが特徴です。

「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」のドリッパーは、グリップをメイプル材で作ったオリジナルデザイン。道具類まで多くのオリジナル商品を手がけている点にもマスター・堀内さんのあふれるコーヒー愛が表れています。

「オリジナルドリッパーセット」の詳細はこちら

「ドリップポット」の詳細はこちら

「コーヒーミル」の詳細はこちら

「COFFEE缶」の詳細はこちら

■STEP2:豆選びに困ったら、お店の個性がわかる「ブレンド」を

ブレンド「#Stay home」と、ブレンド「ディモンシュ」
(右)外出自粛期間のために作られたブレンド「#Stayhome」は、お得なプライスが魅力。5月下旬まで販売予定。<中深煎り>500g ¥2,000(税込) (左)堀内さんが焙煎を初めて10年、満を辞して店名を冠したブレンドが「ディモンシュ」。<中深煎り>200g  ¥1,566(税込)

コーヒービギナーにとって、おそらく最初のハードルとなるのが「豆」の選び方。中南米、アフリカ、アジアと産地も様々で、さらに焙煎具合も浅煎りから超深煎りまで段階が分かれます。

ブラジルやコスタリカ、エチオピアなど、単一産地の豆の個性が味わえる「ストレートコーヒー」も楽しいですが、迷ったらまずは「ブレンド」を手に取ってみて。ブレンドは数種の豆を組み合わせることで、焙煎だけでは出し得ない香りやコクなどを加え、店主がイメージした世界観を創り出すもの。いわば「自分の店の味」を表現しているのがブレンドなのです。この味が気に入れば、きっとロースター(焙煎士)さんとの好みも合うはず。

ブレンド「#Stay home」の豆
ブレンド「#Stayhome」の豆。ベースとなるブラジルは、「ブラジルの声」と称えられる大物アーティスト、ミルトン・ナシメントの妹夫妻が営む「ザロカ農園」のイエローブルボン・ナチュラルを使用。ちなみに豆の量は、写真のような中深煎りの場合、メジャースプーン1杯(10g強)が1人分の目安。

本日のドリップに選んだのは、自宅で過ごすこの時期のために作られたブレンド「#Stayhome」。ブラジルをベースにコクのあるエチオピア・シダモとマイルドなコロンビアを合わせた中深煎りのブレンドで、甘みとほのかな苦味のバランスが絶妙。1日中ガブガブ飲んでも飲み疲れしない仕上がりです。

ちなみにもう一つのブレンド「ディモンシュ」は、甘い香りが広がるグアテマラのトラディショナル・ナチュラルをベースに、ブラジルの名園「サンタカタリーナ農園」のナチュラルをブレンド。ナチュラル精製ならではの、つややかで瑞々しい風味と中深煎りの香ばしさを両立した華のある一杯です。…と、こんな風に「ブレンド」の世界は、かくも表現豊かなものなのです。

ブレンド「#Stayhome」の詳細はこちら

オリジナルブレンド「ディモンシュ」の詳細はこちら

■STEP3:まず、ミルで豆を挽こう

ドイツ「ザッセンハウス」社のコーヒーミル
本日は日本でもファンの多いドイツ「ザッセンハウス」社のコーヒーミルで。ナチュラル(ブナ材)のボディー、取っ手部分をマットブラックに加工した「ディモンシュ」オリジナル仕様。ちなみにミルが手元にない人は、豆を挽いて送ってもらうことも可能。 

さて、せっかくの機会なので、今回手に入れて欲しいのがコーヒーミル。おいしく淹れる最大のポイントは「淹れる直前にミルで豆を挽くこと」と堀内さんも断言します。

「よく『香味』と表現されるように、味と同じくらいコーヒーにとって大切なのが 『香り』です。これは挽いた直後から薄れてしまうので、ドリップする直前に挽くのが大事。最初は安価なもので構わないので、ぜひ買ってみてください」(堀内さん)。

「ミルで挽く」というひと手間が、おいしさのレベルを格段にアップさせるのです。

■STEP4:ペーパーフィルターをお湯で「リンス」する

「コーノ式」の円錐ドリッパー
ネルドリップの原理から考案された「コーノ式」の円錐ドリッパー。フィルターをお湯で濡らし、コーヒーの成分が吸収されないようにするのもいわばネルの応用。

円錐形ペーパーフィルターをドリッパーにセットしたら、沸騰したお湯をポットで軽く廻しかけてリンスします。これは紙の臭いや味を抜くためと、最初に抽出されるコーヒーのおいしい成分がフィルターに吸収されないようにする狙いも。サーバーに落ちた湯は捨てておく。

■STEP5:お湯を適温にするひと手間

お湯を適温にするひと手間
お湯を行き来させることでサーバーを温める効果も。

2人分を淹れる場合なら、湯量は250mlが目安。中深煎りの豆の抽出に最適な湯温は84〜85℃なので、沸かしたお湯はポットとサーバーを行ったり来たりさせて、ちょうどいい湯温に冷ます。「だいたい4往復くらいのイメージです」(堀内さん)。

■STEP6:ドリッパーにコーヒー粉をセットする

ドリッパーにコーヒー粉をセット
ドリッパーを両手で持ち上げ、軽くススッと左右に揺らす感じで。

ミルで中挽きにしたコーヒー粉をドリッパーに入れ、軽く揺らして表面を平らにならします。中挽きはグラニュー糖くらいの挽き目。サーバーの上にセットして準備完了。

■STEP7:コーヒー粉の表面にお湯を注ぎ始める

お湯を注ぎ始める
細く細く、静かに湯を注ぐ。そうするとネルドリップのようななめらかで艶やかな風合いのコーヒーに。

いよいよお湯の第1投目。84〜85℃にしたお湯を粉の中央から出来るだけ細く、静かにゆっくりと注いでいく。「コーノ式はネルドリップの手法をペーパーに置き換えているので、ネルの要領で、できるだけ細く静かに落としましょう」(堀内さん)。中央から注ぎ始めて泡が出てきたら、その泡の外周をなぞるように徐々に円を広げていき、縁の少し内側まで行ったらストップする。

■STEP8:じっとガマン、蒸らしの時間

蒸らしの時間
この段階ではまだサーバーにコーヒーの滴は落ちていません。

お湯がコーヒー粉の全体に行き渡ったら、粉が蒸らされるのを待つ時間。ここが肝心。ぷっくりと膨らんだ表面から泡が消え、粉がお湯を吸収して写真のようにマットになってきたら、蒸らし完了。時間は個人差がありますが、じっくりと「1分蒸らし」が堀内さんのスタイル。

■STEP9:いよいよ本抽出へ

本抽出
お湯は表面の3㎝くらい上からそっと注ぐイメージで。

蒸らしが完了したら、本抽出のスタート。まず中央部分にツーっと細く静かに湯を注ぎ入れ、ふくふくと泡が立ってきたらその外周をなぞるようにクルクルと廻し注ぎます。泡が500円玉大になったらお湯をストップ。ドリッパー内のコーヒー液が一滴、二滴とサーバーに落ち始めます。

■STEP10:注いで待つ、の繰り返しで表面の「ハンバーグ」をキープ

お湯を注ぐ速度
お湯を注ぐ速度は呼吸の「スー、ハー」に合わせてゆっくりと。

泡の中央が平らになったら2投目を注ぎます。1回目と同じく中央から円を描きながら注ぎ、新たに出てきた泡の直径が500円玉くらいになったら湯をストップ。2人分ならこれを6回ほど繰り返します。写真のように表面が常に「ハンバーグ」のようにふっくら膨らんだ状態をキープします。

■STEP11:抽出のラストは大きな円で

抽出ラスト
最後まで同じリズムで注ぎ切るのがポイント。後半の注ぐスピードが早まると味は薄く、逆に待ち時間が長すぎるとエグみなどが出る原因に。

らせんを描いて円を徐々に大きくしながらお湯を注ぎ、サーバーにコーヒーが溜まってきたら、最後は粉のふちから1㎝くらいのところでストップします。

■STEP12:抽出完了、ドリッパーを外す

抽出完了
抽出を終えた表面はこんな感じ。ドリッパーを途中で降ろすのは、最後に残っているエグみのようなものを落とさないため

コーヒーが2人分(約250ml)たまったら、抽出完了。ドリッパー内にまだ湯が残っていてもサーバーから外します。お湯の1投目からここまで約4分。

■STEP13:温めたカップに注いで、完成!

完成
コーヒーが濃いと感じたら豆の挽き方を粗くして湯量を多くし、薄い場合はその逆に。

さて、お味は…? 「もしコーヒーの味にエグみや渋みを感じたら、豆の挽き方が細かすぎるか、お湯が高温すぎる等の理由が。挽き目や湯温を微調整しながら、自分好みの味わいを見つけてください」と、堀内さん。

しっかりと甘、酸、苦などの風味を感じながらも、後味は濁りがなくすっきりと澄んでいるのが淹れたてコーヒーの醍醐味。カップから立ち上る香りを深呼吸するだけでも、有意義な気分転換になるはずです。

「すぐ飲みたい!」派におすすめの2択

とはいえ、ドリップしたいけれど育児やリモートワークで時間がない、そもそも家に道具がない! という方には、時短でコーヒーを楽しむ選択肢も教えていただきました。

■1:CAP ON CAP COFFEE

「CAP ON CUP COFFEE ブレンド」
こちらは昨秋の25周年記念に誕生したブレンド「トラヴェシア」をバッグにしたもの。ローストナッツのような香りのブラジルをベースに、エチオピア・イルガチェフェでコクと香りを加えた、飲みやすくふくよかな味わい。「CAP ON CUP COFFEE ブレンド」5P入り ¥1,080(税込)

まずは、カップに載せてお湯を注ぐだけのドリップバッグシリーズを。カップの上にちょこんと帽子のように置くので、その名も「キャップ・オン・カップ」。12gのコーヒー粉入りなので大きめのマグにもたっぷり抽出でき、ナッティで深みのある一杯が味わえます。

「ディモンシュ」ではブレンドだけでなくコスタリカやエチオピア、ブラジル、グアテマラなど一流農園の豆を使った「シングルオリジン」シリーズもそろっているので、スペシャルティコーヒーの入門編としてトライしてみるのもおすすめです。

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■2:カフェオレベース

「ディモンシュ・オリジナル・カフェオレベース ミニ」
今春登場した最新作。カフェオレベース1:牛乳3が基本。次回入荷は5月13日の予定。ラベルはグラフィックデザイナーの小野英作氏によるデザイン。「ディモンシュ・オリジナル・カフェオレベース ミニ」250ml ¥1,190(税込)

さらに最も手間いらずなのが、うつわに「注ぐだけ」のボトルドコーヒー。こちらはミルクと割るだけで最高のカフェオレができてしまう凄腕のカフェオレベースです。堀内さん自身が昨年コスタリカに出向いて買い付けてきたという、話題の精製法「アナエロビコ」の高級豆を贅沢に使い、250mlになんと100gの豆を使用。この1本でたっぷり7杯分(1杯150ml)のカフェオレが楽しめます。

シナモンや焼きリンゴ、ラムのような持ち味で、ミルクで割るとさらにおいしく花開きます。極上の豆をふんだんに使い抽出しているので、濃縮タイプでもエグみがなくクリアで、上質なデミタスのよう。ミルクや氷で割ってもぼやけることなく、豊潤な味わいが続きます。だからアフォガードの要領でアイスクリームにかけても、または食後酒のように原液を氷で少しずつ溶かして嗜むのもいいかも。

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今回は、おうち時間を充実させるために実践したい「美味しいコーヒーの淹れ方」をプロに教わりました。

自粛期間の延長とともに「新しい生活様式」も提言され、これからの仕事の在り方や、家での生活のかたちを新たに考える時期に来ています。

湯を沸かし、豆を挽き、呼吸を整えながらゆっくりとハンドドリップする。この10分間ほどの丁寧な時間が、今、必要なのかもしれません。ぜひこの機会に、豆を挽くひと手間から始めてみてください。

【参考文献】

・『はじめてのコーヒー』(ミルブックス)
・『コーヒーを楽しむ。』(主婦と生活社)

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PHOTO :
(C)cafe vivement dimanche
EDIT :
石原あや乃
EDIT&WRITING :
藤森陽子