日本の伝統食でありながら、その原材料はアメリカや中国、ロシアなどからの輸入大豆が約80%を占め、国産大豆は全体のわずか「20%」ほどだということ、ご存知でした? しかし日本各地には驚くほど多くの品種が存在するのです。
今回は地元産の希少な「在来種」をはじめ、国産大豆だけを使い真摯に手作りされている納豆をご紹介します。それぞれの大豆ごとに味わいはみごとに異なり、その豊かな風味に今までの納豆のイメージが覆されるはず! パッケージデザインも個性が際立っているので、贈り物にもおすすめですよ。
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■1:6種の「在来種」納豆を食べ比べ!【いばらき 農家の納豆/菊水食品(茨城県)】
まずはこちら、茨城の「菊水食品」が作る地大豆=在来種大豆の納豆セット。県内の生産者とメーカー、そしてデザイナーがタッグを組んだプロジェクトで、6軒の農家が丹精込めてつくった6種の地大豆を納豆に仕上げた、究極の食べ比べセットです。
1948年創業の「菊水食品」は、納豆研究家としても知られる三代目社長・菊池啓司さんが数々のユニークな商品を生み出している日立のメーカー。特にこの「いばらき 農家の納豆」には、「地産地消」や「トレーサビリティー」といった昨今注目されている食への意識も詰まっていて、「これこそ次世代の納豆の形なのでは?」と感じるのです。
日本各地で長く受け継がれてきた在来品種は、とにかく豆の味が「濃い」。青や黄色、小粒、大粒と、色味やサイズも違えば風味も違います。たとえば「黒神大豆」の小粒でいてエネルギーみなぎる力強い旨味や、「鞍掛」の2色構成のユニークな見た目やホクホクとした食感と甘みなど、実に個性豊かで、そして(これが最も大事ですが)どれもきちんとおいしい。だから食べ飽きることがありません。
ちょっとお値段は張るけれど、豆の希少性と6種の豆ごとに最適な製法で納豆に仕上げる手間暇を考えたら、それも納得できること。ワインのように、「テロワール=その土地の味を楽しむ」ことができる商品です。
問い合わせ先
- 菊水食品 TEL:0294-52-5443
- 営業時間/9:00〜18:00
- 定休日/日曜休
- 住所/茨城県日立市東大沼町4-29-11
■2:大豆も納豆菌も、隅々まで北海道を味わえる 【豆の文志郎<鹿角納豆>/道南平塚食品(北海道)】
北海道は登別市で、探究心あふれる納豆職人・平塚正雄さんが手がける高級納豆ブランド「豆の文志郎」。大豆は道内産で、農園まで指定した最上級のもののみを使用し、水も納豆菌(北海道産稲ワラより培養)も、すべてに地元産を貫いた究極の「道産納豆」。
中身は国産赤松の経木で包まれていて、和紙テイストのパッケージからもただならぬ高級感が漂います。
「大粒納豆」は代表的な北海道産品種のひとつ。「とよこまち」のなかでも「中澤農園」産の良質なものを使い、大粒ならではのふっくらと豊かな食感と芳醇な味わいが楽しめます。
これだけでも充分おいしいのですが、さらに「鹿角納豆」は、平塚社長の(奇想天外とも言える)アイデアから生まれた一品。なんと同じ「とよこまち」でつくった納豆に、高級漢方素材として知られる「鹿角霊芝(ろっかくれいし)」のエキスを加えているのです。
鹿角霊芝を3日間かけて煮込んでエキスを抽出し、納豆菌とブレンド。そうすることで納豆菌がより活性化され、旨味やまろやかさが増し、臭みをなくすのだとか。
漢方の力で納豆菌のコンディションから整えるという驚きの発想力。確かに、さらに濃密さとなめらかさが増し、噛めば旨味がじ〜んわりと広がる…! あふれる納豆愛から生まれた、高級納豆の名にふさわしい風格ある味わいです。
問い合わせ先
- 道南平塚食品 TEL:0120-08-7210
- 営業時間/9:00〜17:00
- 定休日/元旦休
- 住所/北海道登別市幌別町4-12-1
■3:石室長期熟成で仕上げる清らかなおいしさ【大粒納豆 豆むすめ/納豆工房 豆むすめ(山形県)】
納豆の製造だけでなく、なんと「大豆」からつくっているメーカーもあるんです! 山形の北東部、最上川の豊かな恵みを受けた新庄盆地で、大粒の「タチユタカ」を自社栽培しているのが「納豆工房 豆むすめ」。化学肥料や農薬、除草剤を使わず大切に育てた有機大豆を、伝統的な「石室づくり」で仕込んでいます。
この「石室づくり」は70kgを超える大谷石を96個積み上げて作られた重厚な石室(いしむろ)で発酵させるのが特徴で、山形の納豆製造の先駆的存在である「丸亀八百清商店」の製法を受け継いだものだとか。まずはこの大谷石の発酵室で22時間かけて発酵させ、さらに室(むろ)から出して1週間熟成します。
こうした長期熟成により、糸は艶やかに輝き、豆はふっくらもちもち。風味はこっくりと豊かでいて臭みはなく、後味はスッとクリア。まさに「豆むすめ」の名を体現するような、健やかな味わいです。
味に自信があるのでタレもカラシもなし。まずはそのまま、経木の良い香りとともにシンプルに豆の風味を味わってみて!
問い合わせ先
■4:煎りたて、ひきたてゆえの美味しさ! 【ひきわり納豆/ひげた食品(茨城県)】
こちらも国産大豆だけを使って真摯に製造している茨城・土浦市の納豆メーカー。創業51年、2代目である女性社長の塙裕子さんが切り盛りし、「納豆らしからぬ」スッキリとしたパッケージデザインにも社長のセンスが光ります。
茨城県産の品種・小粒大豆を使った「実花(じづか)」が看板商品ですが、今回特にご紹介したいのが「ひきわり納豆」。現在、ひきわりは手間がかかるため、既に割ってある大豆を業者から仕入れ、それを加工する会社がほとんどなのですが、こちらは自社で豆を焙煎し、専用の機械でひきわりにしている数少ないメーカーのひとつなのです。
だから煎りたて&ひきたて! 不揃いの割り加減にも手仕事感が現れ、香りが良くて雑味のない、繊細な味わいです。甘めの無添加タレと、スッと鼻に抜ける辛子とのバランスもよし。たとえばイカのお刺身とさっと合わせてイカ納豆にしたり、ちょっとしたお料理のアレンジにも使いやすいです。
また、ひきわりは大豆を割ることで豆の皮が取り除かれるので、舌触りもとろけるように滑らか。だから「噛み応えが苦手」「お腹がゴロゴロしてしまう」といった理由で納豆が不得意な人にもぜひトライして欲しいのです。
問い合わせ先
- ひげた食品 TEL:0120-109710
- 営業時間/9:00〜17:00
- 定休日/元旦休
- 住所/茨城県土浦市田中2-9-8
■5:お酒の肴としても最高の個性派!【SELECTシリーズ・玉ねぎ(小粒)/納豆Bar小金庵(大阪府)】
ちょっとユニークな納豆を探しているならこちら。「納豆Bar 小金庵」は納豆食文化があまり浸透していない大阪では珍しい、こだわりの納豆専門店。使用するのは国産大豆のみで、タレやカラシも化学調味料不使用という、真面目な姿勢が頼もしいメーカーです。
看板商品となっている「SELECTシリーズ」は、「青唐辛子味噌」や「キムチ」「ラー油奈良漬け」「とろろ昆布」など、とにかく個性的なトッピングがセットになった人気シリーズ。でも、決して奇をてらっている訳ではなく、どれも納豆とトッピングの絡み具合が絶妙。食べてみれば両者のバランスが熟考されていることが分かります。
トッピングは全10種類で、なかでもまず食べていただきたいのが「玉ねぎ」。北海道産小粒大豆「すずまる」をふんわりと品よく仕上げた納豆に、じっくり炒めた玉ねぎペーストを合わせるという、一見意外な組み合わせ、だけどこれがスゴイ。
ペーストは北海道産玉ねぎを使い、7割ほど火を入れて甘みを引き出すのが味の決め手。玉ねぎの甘みと白醤油タレの甘みが小粒納豆にみごとに絡まって、さらに玉ねぎのほのかな辛みがアクセントとなり、驚きのマリアージュが誕生する…! ご飯の友としてはもちろん、もはやこれは晩酌の一品料理としても成立する美味しさ。ハイボールやビールのお供に、ぜひ。
問い合わせ先
- 納豆BAR 小金庵 TEL:06-6449-3120
- 営業時間/10:00〜19:00
- 定休日/木曜休
- 住所/大阪市西区土佐堀2-3-12
大豆にこだわり、昔ながらの製法で丁寧につくられた小さな工房の納豆は、大手メーカーの商品とは異なる個性とおいしさがあります。ふだんスーパーであまり見かけることのない、小規模ながら孤軍奮闘している納豆メーカーは全国にまだまだ沢山あります。共通するのはどれも「豆」自体がしみじみとおいしいこと! #stayhome 中の食生活に、名人たちが手塩にかけた納豆をぜひ味わってみてください。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT :
- 石原あや乃
- EDIT&WRITING :
- 藤森陽子