ビジネスや通勤、レジャーなど幅広い用途で使われ、世界中で愛される「スーパーカブ」。初代モデル登場から60年以上、その累計生産数は1億台以上と、まさにキング・オブ・実用バイクの代表だ。映画「ローマの休日」で有名になった「ベスパ」と共に、世界でもっとも名を知られた2輪といえる。派生車種も次々に誕生し、本家並みの人気モデルも数多い。なかでも遊び道具らしいスタイリングと機能で人気を博したのが、「ハンターカブ」だ。現在は生産されておらず、実質的な後継モデルとして「クロスカブ」(110と50の2種)があり、こちら(人気のN-VANを駆使して大人の夏遊びへ!)もなかなか楽しいバイクだ。
そんななか、ホンダはついに「ハンターカブ」そのものを復活させ、6月26日から発売する。「クロスカブ」とはどう違うのか? 自動車ライター佐藤篤司氏が解説する。
「クロスカブ」とはここが違う
「スーパーカブ」をベースとする「クロスカブ」は、デザインや装備をレジャー向けに変更し、アクティブに使えるスポーティな仕様となっている。一方の「ハンターカブ」は排気量を拡大し、オフロード性能を備えたモデル。「スーパーカブ」を街ばきのスニーカーとすれば、「クロスカブ」はウォーキングシューズ、「ハンターカブ」はトレッキングシューズといったところ。
「ハンターカブ」の外観は、マフラーがアップしたスタイルや、レッグシールドを取り払った軽快なデザインで、いかにもオフロードを走るのに適したワイルド感に溢れている。ちなみに「ハンターカブ」の荷台には「トレイル ハンター」の文字が入り、そんなところからも、オフロード性能に対するホンダの自信がうかがえる。
すでにバックオーダーを抱える人気ぶり
モーターショー以来、待ち望まれた「ハンターカブ」の正式発表が、今年3月20日に行われた(正式な車名は「CT125 ハンターカブ」)。バーチャル発表会だったが、注目度は相当に高かったと聞いている。なにしろ6月26日からの発売なのに、すでに年間の販売予定台数に匹敵する8000台。今から予約しても納車は秋以降、といわれるほどのバックオーダーらしい。
残念ながら、まだ試乗の機会がいつになるかは決定していない。そこで今回は新世代「ハンターカブ」の内容をチェックしてみたい。
まずはスタイル。特徴的なヒートガード付きアップアマフラーとレッグシールドレス、剥き出しのエンジン、それを保護するエンジンガード装備、悪路対応のタイヤ、さらにアップハンドルといった具合に、基本は踏襲されている。
新たな特徴といえるのが、LEDを採用した丸型のヘッドライト。すべての灯火器にLEDを採用しているため、被視認性の良さはもちろんのこと、新鮮さを十分にアピールできている。
低中速での力強さに期待
ブレーキはディスク式となり、前輪にABS機能が付く。
エンジンは124cc空冷4ストロークのOHC単気筒。もちろん自動遠心クラッチを採用しているから、左手によるクラッチ操作は不要。このあたりは「スーパーカブ」と同じで、市街地での頻繁なストップ&ゴーの繰り返しやツーリングなどでは本当のストレスなく走れるので助かる。ただし、「クロスカブ」では山道などでのわずかなパワー不足を感じたので、「ハンターカブ」でそれが解消されているかは気になるところ。リリースによると、低中速域での力強さを重視した出力特性としているというから期待したい。
より剛性感の高いフレームワークによって、しっかり感はどうなったか、ロングストローク化されたサスペンションは乗り心地をどう変えたか、そして最低地上高を確保したことで少しだけ高めのシートは足つき性にどう影響したか……などなど、確かめてみたいポイントは多い。
今回、市場からの熱烈ラブコールに対してだけでなく、バイクにあまり興味のなかった“リターンライダー”などにとっても魅力的な選択肢としてデビューしてきた「ハンターカブ」。その開発のキーワードは「気軽に、楽しく、どこへでも」。少しでも早くこの状態が納まり、なんの屈託も遠慮も感じることなく、心から楽しめる日が来ることを祈る。バイクとは、自由なライフスタイルの象徴的存在でもある。
【ホンダ「CT125 ハンターカブ」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:1,960×805×1,085mm
車両重量:120kg
エンジン:空冷単気筒OHC/124cc
トランスミッション:常時噛合式4段リターン
最高出力:6.5kW(8.8PS)/7,000rpm
最大トルク:11Nm/4,500rpm
価格:¥400,000(税抜)
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- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター