コロナ禍の影響で住宅の建築が大幅遅延。2020年12月までに入居できないと、住宅ローンの控除の一部が受けられなくなる!?

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建設中の家

ウタコさん(39歳)は、夫のエイジさん(42歳)、長男のフミヤくん(6歳)、長女のユウナちゃん(3歳)の4人家族。現在は、賃貸マンションで暮らしていますが、来年(2021年)4月のフミヤくんの小学校入学に合わせて、マイホームを購入するために、準備を進めてきました。

「昨年1年間かけて、土地を探したり、住宅メーカーを選んだりして、東京・杉並区に注文住宅を建てることになりました。契約したのは、2020年1月。当初は、10月に入居できるはずだったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、なかなか工事が進まなくなってしまったのです」(ウタコさん)

新型コロナウイルス禍により、住宅建築に遅れが発生

住宅を建てるためには、システムキッチンやバス、トイレ、給湯設備、内装ドア、建具など、さまざまな住宅資材が必要で、その部品は1軒あたり1万点に及ぶといわれています。

その多くは、中国などからの輸入に頼っていますが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、部品供給がストップしてしまい、当初の契約通りに住宅の引き渡しができない事態が、日本全国で起こるようになったのです。

「フミヤの小学校入学は来年4月なので、最悪の場合は、それまでに入居できればいいのですが、気になるのは住宅ローン控除のこと。消費税が10%に引き上げられたときに導入された、期間13年間の住宅ローン控除は、2020年12月までに入居することが条件になっています。

我が家も、これを使うために、マイホームの購入計画を立てていたのですが、もしも住宅の引き渡しが遅れて、年内に入居できなくなったら、住宅ローン控除も利用できなくなってしまうのでしょうか?」(ウタコさん)

消費税率10%で購入した住宅に2020年12月までに入居すれば、住宅ローンの減税期間が「3年延長」されるはずが…

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Photo by Precondo CA on Unsplash

マイホームを購入すると、それに付随した設備機器の設置のほか、家具や家電の買い替えも進みます。そのため、日本では歴史的に、個人の住宅取得は重要な景気刺激策として位置づけられてきました。

そして、個人の住宅取得を促すために設けられているのが、住宅借入金特別控除(通称、住宅ローン控除)で、住宅ローンを組んでマイホームを購入したり、リフォームしたりした人が受けられる優遇税制です。

住宅の購入時期によって、控除できる期間や控除率は異なりますが、現在の制度は、2014年に消費税が5%から8%に増税されたときに導入されたもので、2021年12月までに入居すると、住宅ローンの年末残高の1%が最長10年間、控除されます。控除額は年間最高40万円(エコ住宅などは50万円)です。

消費税が10%にUPしたことにより「控除期間13年の住宅ローン控除」が導入

ただし、2019年10月に消費税が8%から10%に増税されたため、駆け込み需要を減らして、増税後も住宅購入の気運が落ち込まないようするために、新たに負担軽減策として打ち出されたのが、控除期間13年の住宅ローン控除です。

これは、消費税10%で購入した住宅については、10年間の控除期間が終わったあとも、11年目以降の3年間は、①建物購入価格の2%を3等分した金額、②住宅ローン残高1%の、いずれか少ないほうの金額が毎年控除されるというもの。

ただし、消費税率10%で購入した住宅でも、減税期間の3年延長を受けられるのは、2019年10月~2020年12月までに入居することが条件になっています。

 ウタコさんファミリーは、この控除期間13年の住宅ローン控除をフル活用するために、マイホームの購入計画を立て、2020年10月に入居する予定にしていました。ところが、今回の新型コロナウイスルの感染拡大の影響で建築資材が不足し、入居のスケジュールが大幅に崩れ、年内の入居が危うくなってきてしまったのです。

「控除期間13年の住宅ローン控除」を活用すれば、ウタコさんはさらに54万円の控除が受けられるはずだったのだけれど…

 ウタコさんは、銀行から3000万円を、30年固定で住宅ローンを組む予定にしています。たとえば、金利1.5%(元金均等返済)の場合、住宅ローン控除による10年間の減税額は245万円ですが、3年延長の住宅ローン控除を利用できれば、3年間で54万円の減税が追加され、合計299万円の減税が受けられます(11年目以降も年末ローン残高の1%の控除を受けた場合。また、実際の控除額は、納税額によって異なる)。

もしも住宅の引き渡しが伸びて、この減税を受けられないとしたら、ウタコさんは54万円も損することになります。

 ただし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、国民の不利益を極力減らすために、さまざまな救済措置が打ち出されており、住宅ローン控除についても、弾力的な対応がとられることになっています。

「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」によって控除期間の「3年延長」の期限が1年間、延長されることに!

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新型コロナウイルスの爆発的感染拡大を防ぐために、4月7日、安倍晋三首相は、改正新型インフルエンザ対策特別措置法による緊急事態宣言を発令。

当初、対象地域は、東京、神奈川、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県でしたが、その後、全国へと拡大。5月23日現在、東京、神奈川、千葉、埼玉、北海道を除く府県は、宣言が解除されていますが、外出自粛や施設の休業要請にともなう経済的損失は、そう簡単に回復できるものではありません。

そのため、国は緊急事態宣言と同時に、雇用と生活を守るための、大規模な経済対策も打ち出しています。住宅ローン控除について、具体的に言及されたのが、2020年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」です。

ここで、「住宅ローン控除の適用要件の弾力化」が明記されたことで、新型コロナウイルスの影響で、住宅建設に遅れが生じて、2020年12月末までに入居できなかった場合も、次の要件を満たせば、控除期間13年の住宅ローン控除を受けられることになりました。

●新型コロナウイルスの感染拡大の影響で期限内に入居できない人の特例要件

①新型コロナウイルス感染症及び、その蔓延防止のための措置の影響によって入居が遅れたこと

②新築の場合は2020年9月末まで、建売・中古住宅の取得や増改築等は、2020年11月末までに契約を行っていること

③2021年12月末までに、②の住宅に入居していること

この3要件を満たせば、2020年12月までに入居できなくても、控除期間13年の住宅ローン控除を利用できます。ただし、この特例措置の適用を受けるには、申請が必要です。

住宅ローン控除を利用するためには、購入した年の翌年に確定申告する必要がありますが、通常の申請書類に加えて、①契約時期の分かる請負契約書、または売買契約書のコピー、②入居時期に関する申告書兼証明書(自分で作成する。国土交通省のHP参照)を添えて提出します。

これでウタコさんは、当初の予定通り、控除期間13年の住宅ローン控除を利用できるようになります。

あなたの「コロナで困った」に応える制度を探してみよう

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Image by Arek Socha from Pixabay

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的な痛手は、各方面に広がっており、回復までには長い年月を要するといわれています。コロナ禍を巡る国の対応には、批判の声もあがっていますが、厳しい状況を乗り越えるためには、自分が利用できる制度を探して、使えるものはとことん使うのが得策です。

1人10万円がもらえる「特別定額給付金」だけじゃない!払い戻しできなかったチケット代の寄附金控除化、納税猶予、公共料金の支払い猶予etc.

確定申告に関係するものでは、住宅ローン控除のほかにも、国の自粛要請によって中止になった、コンサートやイベントのチケット代の払い戻しを受けなかった場合、その相当額を最大20万円まで寄付金控除の対象にできる措置もとられています。

税金の支払いは、原則的に免除されませんが、納税を猶予してもらうことは可能です。平常時に納税猶予を受けられるのは、過去1年間に大幅な赤字が発生した場合で、担保が取られ、年利1.6%の延滞税がかかります。

ただし、新型コロナウイルスの影響を受けて、前年同月比の収入がおおむね20%減少した場合に、無担保かつ延滞税なしで、国税も地方税も1年間の納税猶予が受けられます。

納付期限が20年2月1日~21年3月31日までの国税、地方税のすべてに適用されるので、家計が厳しい場合は、市区町村の窓口に相談を。

 新型コロナウイルスの経済対策で個人が利用できるものは、1人10万円がもらえる「特別定額給付金」だけではありません。税金の支払い猶予、国民健康保険料や年金保険料の減免、公共料金の支払い猶予、小口のお金が借りられる生活福祉資金貸付制度などの特例措置も打ち出されています。

都道府県や市区町村単位で行っている支援策もあるので、ウタコさんのように、「コロナで困った!」ということのある人は、自分が利用できる制度があるかどうか、探してみましょう。

この記事の執筆者
1968年、千葉県生まれ。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。医療や年金などの社会保障制度、家計の節約など身の回りのお金の情報について、新聞や雑誌、ネットサイトに寄稿。おもな著書に「読むだけで200万円節約できる!医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30」(ダイヤモンド社)がある。