新型コロナウイルスの発生など、社会情勢が揺らいでいるときに、不安に感じる度合いは人それぞれ。

知人とのちょっとした会話のやりとりに温度差を感じてしまい、「あれ?」と戸惑いや寂しさを覚えることはありませんか?

どれが正解というのはないものですが、こういう事態にこそ、大切な相手とよりよい関係を築いていきたい、と感じる人は多いはず。

悩みや不安の大きさが違っても、「大切なのは、心で会話をすること」。そう話すのは、話し方教室「KEE'S(キーズ)」の代表である野村絵理奈さん。新型コロナウイルスの影響が続くシーンでの、心の会話術を教えていただきました。

知人の安否を気遣うときの、おすすめの声かけ2パターン

相手に自分の気持ちを共有する
相手に自分の気持ちを共有する

ここ数か月は、知人の安否を気遣うやりとりも増えていたのではないでしょうか? 遠方にいる、もしくは直接対面しにくい知人に対して、どんな声がけをするべきなのでしょうか? 野村さんは次のポイントを挙げます。

■パターン1:自分の今の気持ちを、ストレートに相手に共有する

「『ご家族の皆さまの体調はお変わりないですか?』というような、問いかけの定型文も便利に使えると思うのですが、相手を気遣う声がけは、もっとストレートでもいいと思います。

例えば、自分の今の気持ちを相手に共有すること。『ご家族が元気で過ごされていることを願っています』とか、『●●さんと元気でお会いできる日が早く来ますように』などです。

安否を聞く場合、どうしても『元気ですか?』などの、『YES』か『NO』で答えられるクローズドの定型質問に陥りがち。しかし、みんなが不安で、精神的にも弱っているときにこそ、相手に対する自分の気持ちを正直に伝えることで、絆を深めるということもできます。

もちろん、新型コロナウイルス以外にも、相手を気遣う会話をする際に、相手への思いやりをそのまま言葉にして伝えるのは、相手を勇気づけることにつながります」

■パターン2:相手の気持ちを代弁する言葉で寄り添う

「多少、想像力が必要なのですが、相手の気持ちを代弁する声がけもあります。

例えば、相手が高齢の両親と同居されているような場合、『ご両親と同居されていると聞いて、ご体調を心配しておりました』とか、子どもがいて長く登校できていないのであれば『お子様がたも、心身ともにお疲れがたまってくる頃ですよね』など、知人の不安に寄り添うような気づかいの言葉は、相手の心に響くと思います」

不安な悩みを打ち明けられたら、いきなり励ますのはNG!

相手の気持ちを理解し、相手の気持ちになってみる
相手の気持ちを理解し、相手の気持ちになってみる

知人がもし、「外出自粛が解除されても、外出するのが不安。自分が感染するのも怖いけど、ずっと家にこもりきりでもストレスもたまるし…」と打ち明けてきた場合、どんな対応がをするべきなのでしょうか?

「よくやりがちなのが『考えすぎなんじゃない?』とか『精神的にもっと強くならなくちゃ」というような言葉を使って励まそうとすること。しかし、いきなりそれをしてしまうと、相手は、自分の気持ちを『わかってくれていない』と感じ、孤独感が増すだけです。

そんなときにはまず『共感』するのをおすすめします。共感とは、相手の気持ちを理解し、その気持ちに自分も一旦、なってみるということです。

相手がどんな状況なのか、どんな気持ちでいるのかをまず感じとってみます。例えば今回の例であれば、『もし、自分が一歩も外に出ずに、2週間以上経過していたらどうだろう』と想像してみるのです。

すると、相手がどんな理由で『不安だ』と話しているのかが理解できるようになると思います。そうすれば、自然と相手にかける第一声も変わってくるでしょう。共感した上で励ますのであれば、当初よりも相手の心に響くはずです」

人の心を動かすための基本やコツも「共感」にあり!

ビジネスでも家族間でも「共感力」がものを言う!
ビジネスでも家族間でも「共感力」がものを言う!

野村さんの近著『THE SPEECH 人を動かすリーダーの話し方』(ポプラ社刊)では、ビジネスにおけるスピーチや、部下を動かす話し方としての「共感」のテクニックも述べられています。

日常会話において、家族や友人と意見の食い違いなどが起きたり、相手に対して要望を伝えたいことはありませんか? そんなときにも「共感」が役立つのだそうです。

「人の心を動かしたいと思うのであれば、まずは、"相手を受け入れる"ことから始めなければなりません。

『自分が何かを得たいと思うときには、まず自分がそれを相手に与えること』といわれますが、コミュニケーションも同じです。相手に心を動かしてほしいと願うなら、まず自分が心を動かさなければいけません。そして、それこそが『共感』なのです。

ただ、共感はときには苦痛を伴うものです。自分の中を占有している考えに一旦フタをして、そこに、場合によっては正反対かもしれない相手の意見を受け入れるのですから、かなりのストレスを感じるはずです。だから、わかっていても、なかなかできないんですね。

そんな時は、共感は我慢することばかりではなく、『相手へのリスペクト』と考え方を変換してみることをオススメします。

人は違って当たり前ですし、そこに良さがあるものです。共感することは、相手の魅力に気づかせてくれることでもあります。自分の意見だけが正しいと信じ込んでいると、相手の良さを見失う結果にもなりがちです。

働き方に変化があったり、家族と一緒にいる時間が長くなったりと、自分自身も相手も、今までは感じていなかったストレスを感じていることが多いはず。

そんな場合こそ、ストレスの多い状況でも良好な人間関係を継続していくために、「共感力」を鍛えるいい機会なのかもしれませんね。

野村絵理奈さん
KEE'S 代表取締役社長
(のむら えりな)兵庫県出身 同志社大学法学部卒。NHK松山放送局キャスター、気象予報士を経て2005年KEE'S設立。著書に『たった5秒で相手の心をつかむひと言の力』(大和書房)、『口下手でもたった90分で人生が変わり出す話し方』(講談社)、『革命的話し方メソッド』(ポプラ社)、『THE SPEECH 人を動かすリーダーの話し方』(ポプラ社)など多数。 KEE'S公式ホームページ   

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子