すっかり涼しくなり、日本全国各地でジャズフェスティバルが開かれる10月。Jazzはいつのまにか”日本の秋の風物詩”のひとつとなっていますが、秋の夜長を彩ってくれる、心地よいJazzとはどんな曲でしょうか?

今回はDJ/プロデューサーとして活躍され、クラブにとどまらずカフェや百貨店などさまざまな空間での選曲を手がけている大塚広子さんに、この秋おすすめの5曲を伺いました。

DJ大塚広子さん
大塚広子さん
DJ/音楽ライター/プロデューサー
徹底した音源追求、繊細かつ大胆なDJプレイで全国的な支持を得て、ニューヨーク、スペインでの招聘、BLUE NOTE TOKYO、Billboard LIVE、 東京JAZZ、2度のFUJI ROCK FESTIVAL等出演。老舗ジャズ喫茶やライヴハウス、伊勢丹新宿店や企業セレモニーの音楽プロデュースを手掛ける他、メディアでの執筆、選曲監修、新世代ミュージシャンを取り上げた自身のレーベルKey of LIfe+を主宰。
公式サイト

■秋の選曲の肝は「切なさ」と「暖かさ」

クラブの現場では、力強くアグレッシブなジャズで踊らせる大塚広子さんですが、ほかにもさまざまな場に合わせた選曲をしているそうです。

「クラブのDJで季節感をテーマとしてやることはあまりないですが、以前、J-WAVEで”緑”をテーマにした選曲をしたことがありました。例えばフラワーマーケットなどでは、場の雰囲気に合わせたりもしますし、そういったシチュエーションの中に季節の要素が入ることはありますね」

夏のアンセムは数あれど、曲を通して秋を具体的にイメージするのは難しいかもしれません。大塚さんによれば、秋に似合う曲の特徴は「切なさ」と「暖かさ」だと言います。

「やっぱり芳醇で豊かな感じというか。あとは郷愁感かな。切ないけれどちょっと暖かくてほっこりしているような曲ですよね。それはジャズの選曲とつながりやすい感じがします」

そして、秋の夜長を豊かにするために選んでいただいたのは、ピアノが印象的に響く曲や歌が心地いい曲ばかりでした。

「今回は家でひとりで聞く状況を想定しました。私のDJは大人数の前で選曲をすることが多いのでアッパーな曲が多い気もしますが、今回は自然と自分で聞き入るタイプの曲になりましたね。一昨年子供が産まれたことで少し丸くなったのもあるかもしれないです(笑)。

とはいえ、むやみにサックスを吹かれても雰囲気に合わないと思ったので、結果的にピアノが多めになりました。2010年代に発表された曲でも今っぽさがなく、ヴィンテージ感が強くなったのは、秋ならではかもしれません

■「秋の夜長に聴くJazz」Selected by 大塚広子

1. Ahmad Jamal「Autumn Rain」 (2012)

Ahmad Jamal「Autumn Rain」 ※画像をクリックするとAmazon MP3ダウンロードストアへとびます( iTunes Storeはこちら

「ジャズピアニスト、アーマッド・ジャマルの2012年のアルバムから。パーカッションが入ったピアノトリオですね。以前、日本最大級のジャズ・フェスティバル『東京JAZZ』でライブを聴いた時は最高でした。

ジャマルのピアノは上がりきらないところが魅力ですね。自分のテクニックを見せつけずに、雰囲気を作るために弾くというか。一個一個の音の選び方が抑えた感じで、すごく切ないポイントにきて心に刺さります。秋を感じるメロウな曲ですが、しっかりドラムも打っているのでクラブの序盤にかけるのもいいですね」

2. Kurt Elling「Steppin' Out」(2011)

Kurt Elling「Steppin' Out」    ※画像をクリックするとAmazon MP3ダウンロードストアへとびます (iTunes Storeはこちら

「ジャズボーカリストのカート・エリングが、ジョー・ジャクソンのヒット曲『ステッピン・アウト」をカバーしたものです。EMIのジャズレーベル、『somethin’else』のMIX CDを作ったときに、この人をちゃんと聞いたんです。アフリカンで土着的な音楽のカバーをしていて、昔のスピリチュアル系の声の人だなぁと思っていて。でもそれだけじゃなく、最近の音源ではグレゴリー・ポーターに通じるようなソウルフルな感じとジャズのうまさも入ってますね。ここでの抑えた感じのボーカルも好きですし、アレンジもいいですね」

3. David Hazeltine Trio 「In Between The Heartaches」 (2007)

David Hazeltine Trio 「In Between The Heartaches」   ※画像をクリックするとAmazon MP3ダウンロードストアへとびます (iTunes Storeはこちら

「デヴィッド・ヘイゼルタインは往年のビバップの良さがあると言われるピアニストですね。この曲は『Alfie(アルフィー)』というバート・バカラックのカバーアルバムに入っていますが、このアルバム自体、全曲通して良いです。なかでもこのディオンヌ・ワーウィックのカバーはメロディが綺麗で、日本のジャズレーベル、『ヴィーナスレコード』のMIX CDをつくったときにも収録しました。

メロディが明るくて、しかも同時にセンチメンタルな曲ってすごく好きなんです。その両方が感じられる曲ってなかなかないんですよね。分かりやすく踊れるわけではないのですが、疾走感があって、でも上がりすぎず、かといって暗いわけでもない曲で、クラブでもかけたくなります。工夫してうまくかけたいですね」

4. Galliano「Better All The Time」(1994)

Galliano「Better All The Time」   ※画像をクリックするとAmazon MP3ダウンロードストアへ飛びます( iTunes Storeはこちら

「ガリアーノはクラブミュージックから派生したアシッドジャズの代表的なグループですね。私が普段のDJで選曲するジャズは、本来は踊らせる目的で作られていないものばかり。なので、アシッドジャズやクラブジャズと言われる、”ダンスをするために作られた音楽”を主流にはしていないんです。

でもこの曲にはシンガーソングライターによる作品を聴いているのと同じような感覚を覚えて、メロディや雰囲気が好みでした。DJの締めの曲としてもたまにかけたりするんですが、ほとんどは自分の部屋で聴きますね。秋にはちょっと心温まる雰囲気がほしいなって」

5. 市川秀男「September Storm」 (1976)

市川秀男「September Storm」

「秋なのでずばり『セプテンバー・ストーム」(笑)。市川さんのピアノも1曲目に選んだジャマルっぽくて好きです。生では演奏を聴けてないけれど、レコードは集めていましたね。あんまりセンチメンタル過ぎないし行き過ぎもしないのがよくて、『センスがいい曲あるな』って思っていました。日本のジャズをセレクトすると、もっとアグレッシブなフリージャズとかに行ってしまいがちなのですが、これは秋にちょうどいいかな。どちらかと言うと家で聞いていました。でも、リズムがあってクラブにも馴染みやすいですね」


今回おすすめいただいた1〜4までの4曲は、すべてAmazon MP3ダウンロードストアもしくはiTunes Storeで試聴・購入可能です。是非画像にリンクされているURLから試聴しながら大塚さんのコメントを読み、秋の夜長のお気に入りの音楽を見つけてみてくださいね。

ただし、5曲目の市川秀男「September Storm」は現存するレコードでしか聴けない1曲。ぜひジャケットを手掛かりに探していただきたいです。

■この秋、DJを聴きに出かけてみませんか?

DJの選曲で秋の夜長を楽しく豊かに

最後に、レコードでしか聴けない曲を聴いたり、よりジャズの魅力に触れたい人はどこに行けばいいのかお聞きしました。

「新しい音楽を探しに是非DJの現場にも足を運んでほしいと思います。好みのアーティストが見つかって、ライヴハウスで生演奏を聴く楽しみにもつながるかもしれません。クラブは敷居が高いという人には、まずブルックリンパーラーなどのダイニングバーに行ってみてはいかがでしょうか。気軽にお酒とご飯が楽しめてDJも聴ける。最近そういったお店も増えているのでオススメです」

※「ブルックリンパーラー新宿」では毎週火曜DJイベントを開催中。詳しくはこちら

大塚広子さんのDJ出演予定(10月)

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この記事の執筆者
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WRITING :
島晃一 (Soul Matters)
EDIT :
青山梓(東京通信社)
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