1555年創業、京友禅における随一の老舗「千總」が創業地である京都・烏丸三条にフラッグシップストアをオープンしました。これまで「千總」は、百貨店への卸しをメインとしていて、全コレクションがそろう店舗は初となります。

店舗は世界で活躍の建築家、田根剛氏がデザイン。モダンなショップでは、特別なオートクチュール体験も

ショップがある烏丸三条は、千總創業の地。本社ビルの1階にオープンした
ショップがある烏丸三条は、千總創業の地。本社ビルの1階にオープンした

店舗デザインは、「エストニア国立博物館」や「とらやパリ店」などを手掛け、世界的に注目を集める建築家、田根剛氏によるもので、ロゴをアレンジした花の文様を壁一面にあしらったファサードが印象的です。

店内に入ってすぐはスカーフをはじめとするファッション小物のコーナーになっていて、ラグジュアリーな趣に。

京友禅の美意識を活かしたスカーフコレクション。和装だけでなく、洋服にもコーディネートできる色使いや柄行き
京友禅の美意識を活かしたスカーフコレクション。和装だけでなく、洋服にもコーディネートできる色使いや柄行き

店奥には中庭を有し、庭の緑を背景に着物が宙に浮いているような展示がされていたり、美術品を愛でるように着物を鑑賞できる趣向を凝らした空間づくりがされています。

正面から見ると、庭の緑を背景に着物が浮いているように見える演出がされている
正面から見ると、庭の緑を背景に着物が浮いているように見える演出がされている

一点物を含むコレクションが一堂に

訪問着、振袖、七五三の祝着など、「千總」が誇る京友禅がフルラインナップそろうのは本店ならでは。現在、店内には、洗練された意匠美と高度な染織・刺繍の技術を感じる一点ものの特選着物を中心にディスプレイされていますが、そちらももちろん購入可能です。

現在、店内には一点ものの着物を展示。洗練された意匠美と高度な染繍技術の粋を感じる
現在、店内には一点ものの着物を展示。洗練された意匠美と高度な染繍技術の粋を感じる

千總では、養蚕農家や織元と共に作り上げるオリジナルの白生地や脈々と受け継がれる伝統の文様、はんなりとして品格ある色彩感覚、熟達した染めや繍い、それらを統率する企画・製作力をもって最高峰の着物がつくりあげられています。

お客さんとの対話を大切に、お客さんと一緒につくりあげることをテーマに店づくりが行われていて、既存の着物から色を変更したり、文様を大きくしたり、自分好みにカスタマイズして作ってもらうこともできます。

店内は、従来の呉服店のイメージを覆す海外のファッションブランドのような雰囲気
店内は、従来の呉服店のイメージを覆す海外のファッションブランドのような雰囲気
帯や小物次第で着こなしの幅が広がり、着物初心者にもおすすめの色無地。本店限定、草木染めの色無地をはじめ、染め色と白生地の見本も豊富
帯や小物次第で着こなしの幅が広がり、着物初心者にもおすすめの色無地。本店限定、草木染めの色無地をはじめ、染め色と白生地の見本も豊富

お誂えでは、デザイン、色、白生地から相談可能

さらに、真っ白な絹から自分だけの着物を誂えることも可能に。千總本店は本社ビルの1階にあるため、千總の着物製作担当者や図案家と直接対話し、千總のアーカイブ資料や蓄積してきた豊富な「技術見本」など見せてもらい、世界にひとつしかない自分だけの着物を作ることができます。

着物を着ない人も買い物心をくすぐるスカーフコレクション

これまでも京友禅のほか、さまざまな染織品やファッション、プロダクトに取り組み、日本の美を創造してきた千總。なかでも460年余り培ってきた技術と美意識を活かしたスカーフは人気が高く、毎年新作コレクションも発表されています。

スカーフには千總のロゴにもある八角形を取り入れて。写真は、シルクウールスカーフ
スカーフには千總のロゴにもある八角形を取り入れて。写真は、シルクウールスカーフ

今シーズンは、着物と共通のブランド年間テーマ「鏡花水月」をもとにコレクションを展開。波をはじめとする水にまつわるモチーフなど、着物に使われている伝統的な文様をモダンに昇華させたデザインは、着物だけでなく、ファッション小物として取り入れられるものばかりです。

紅葉や水紋など、日本古来の柄をモダンにデザインしたシルクのスカーフ ¥50,000(税別)
紅葉や水紋など、日本古来の柄をモダンにデザインしたシルクのスカーフ ¥50,000(税別)
千總のスカーフ生地を使い、京扇子の老舗「宮脇賣扇庵」が仕立てたシルクの扇子 ¥9,000(税別)
千總のスカーフ生地を使い、京扇子の老舗「宮脇賣扇庵」が仕立てたシルクの扇子 ¥9,000(税別)

千總の所蔵品の展示を通じて世界観を感じるギャラリーを併設

2階のギャラリーでは、千總の美の源流としてタイムレスな存在である約2万点のアーカイブを紹介する展覧会を開催。歴史や職人技、アート性など、多角的な切り口から捉え、千總の世界観を知ることができます。

明治時代、東本願寺に依頼を受け、作成した雲鶴紋様打敷。中央に飾られているのは、白い紙に描かれたその元となる図案。こうした制作過程を示す作品は、ものづくりを真摯に続けてきた千總ならではのコレクション
明治時代、東本願寺に依頼を受け、作成した雲鶴紋様打敷。中央に飾られているのは、白い紙に描かれたその元となる図案。こうした制作過程を示す作品は、ものづくりを真摯に続けてきた千總ならではのコレクション

現在は、オープン企画として「白ーはじまりの色ー」を開催中(~11月23日)。小袖や婚礼衣装、屏風の図案などの展示を通して「白」から生まれる美を感じることができます。

本店オープン企画として展覧会「白ーはじまりの色ー」を開催中(~11/23)
本店オープン企画として展覧会「白ーはじまりの色ー」を開催中(~11/23)

また、千總本店のデザインを手掛けた建築家・田根剛氏ディレクションによる「白の研究」コーナーも展開。様々な切り口で千總の「白」を探ります。

本店のデザインを手掛けた建築家・田根剛氏のディレクションによる「白の研究」コーナー
本店のデザインを手掛けた建築家・田根剛氏のディレクションによる「白の研究」コーナー
展覧会「白ーはじまりの色ー」では●●時代の小袖の着物も展示されている
展覧会「白ーはじまりの色ー」では江戸時代後期の着物も展示されている

これまでの呉服店とは趣をかえたリュクスな空間で、店の歴史や世界観を知り、着物製作のプロと共に着物を誂える、このオートクチュール体験は、京都旅の特別な思い出になること間違いありません。

問い合わせ先

  • 千總本店
  • TEL:075-253-1555
  • 営業時間/11:00~18:00
  • 定休日/火曜日、水曜日
  • 住所/京都市中京区三条通烏丸西入ル御倉町80

この記事の執筆者
女性情報誌の編集を経てフリーランスに。エディター・ライター歴15年以上。生まれ育った京都を拠点に、女性情報誌やファッション誌、グルメ誌に寄稿。京都特集や京都でのファンションロケのコーディネートも行う。
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