地産地消するサステナブルなこだわりは店舗づくりから

2020年7月29日、永田町にオープンしたフレンチレストラン「ヌー.トウキョウ」。注目すべきは、そのコンセプトである「オール・サステナブル」にあります。

サステナブルな食への扉となる入り口のドアも、実はここにあったフレンチレストランから引き継いだものを使っています。そのフレンチレストランはご夫婦で経営されていたものの、引退のため閉店となってしまいましたが、その想いを受け継ぎ、次につなげていく。扉の先にもさらなるこだわりが満載でした。

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店舗は永田町駅からすぐのビルの地下。
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このドアはこの場所でまた新たな食のステージを見守っています。

レストランにおける地産地消というと、食材で取り入れている店舗は多いですが、店づくりからというのが稀ではないでしょうか。「ヌー.トウキョウ」では店内に使われている木材や土などの建材からテーブル、カトラリーに至るまで、日本の優れた文化を継承し、現代にその姿を残しているものを採用。

内装もなるべく素材を二次加工することなくそのまま使い、地球環境との関わりを感じることができる空間としてデザインされています。

例えば、地産地消の考えのもと、天板は愛知県のお寺で危険木として伐採れた木を使い、椅子は北海道の楢材を使用。トイレなどの扉に使われているのは、屋久杉。店舗の壁には土と石灰、にがりを混ぜてしめ固めて構築する 「版築」という、古来伝承される左官工法で作られた土壁を使用。コンクリートとは違い、湿度調整に優れていて「呼吸する壁」と言われているそうです。さらに土は京都西陣にある聚楽第跡地付近の古い蔵を解体し、保管していた「聚楽土」を再利用しています。

コースのテーブルにも、お手拭きには池内オーガニックのタオル、カトラリーは燕三条市、ナイフは福井県の龍泉刃物を採用。前菜の提供に使われている木のトレイは、建築業者が切った際に残った端材を利用しています。

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最大6人までで利用できる個室。
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「版築」で作られた壁は、美しい層がデザインとしても機能しています。

また、オープンキッチンを囲むカウンター席をメインテーブルとしているのは、シェフとの対話を楽しんでいただくことを大きなテーマにしているため。食材の話をシェフに聞き、調理や繊細な盛り付けの様子をつぶさに観察し、味わって生じた疑問や質問を気軽に投げかけられる。シェフは料理人のみならず、生産者と消費者をつなぐ食の語り部として介在することで、サステナブルな考え方を届けています。

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営業前のカウンター席とオープンキッチン。営業中はアクリル板を設置して感染予防対策を行っています。
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メニューは日替わりで、QRコードからその日の食材情報を読み取るシステム。

 一期一会のコースは、「ちゃんと美味しい」ベジタリアンメニューもオーダー可

オープンスタイルのキッチンで指揮を執るのは、日本でともに働き、その後それぞれ海外で研鑽を積んだのち、日本でともに店に立つことを選んだ中塚直人シェフと秋田絢也シェフのコンビ。

メニューはコースのみで、その日に手に入った食材を余すことなく使いきって提供するため、まさに一期一会の内容。コースは8~10皿で¥13,000(税・サ別)ですが、1皿ごとのボリュームと食材のクオリティを考えるとリーズナブルな設定ではないでしょうか。

また、毎日変わるコースは1つの価格設定のみですが、ベジタリアン向けのメニューでオーダーすることもできます。これは従来のベジタリアンだけでなく、昨今の環境への配慮から増えている「地球市民型ベジタリアン」とも呼ばれる顧客の増加が背景にあるといいます。

しかしながら、日本ではただ肉を使っていないのがベジタリアン向けと扱われてしまっている面もあります。

オーナー会社であるタガヤがウェディング事業を営むなかで、関係を築いたポーランド人牧師が「日本ではちゃんとしたベジタリアン料理を食べるのが難しい」と話していたのを聞き、海外からの観光客が増えるなかで「ベジタリアンの人が食べられるレストランが必要だ」と考えたことも、このレストランのオープンにつながっているのです。

一方で、ベジタリアンだけの専門店にしなかった理由は、ベジタリアンではないお客様にも野菜の美味しさや、食から感じられるSDGsの知識を知っていただく機会を提供したいと考えたから。

ただ、「野菜そのものの美味しさを」とうたって調理方法を省略しているわけではありません。例えば、茨城県久松農の人参を使った前菜では、人参の美味しさを引き出すため、塩漬け→オイルで柔らかくなるまで低温で茹でる→乾燥→スモーク→冷凍する→ローストと6つもの調理工程をかけています。これにより外側はスモークやローストした香ばしさがあり、中は野菜の細胞を粉々にしたことでトロトロに柔らかく、甘みの強い人参料理に仕上がるのです。

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契約有機農家の人参

 食べる人の健康はもちろん、環境保全にもつなげていく心遣い

「ヌー. トウキョウ」では、イノシシの料理を扱っていますが、駆除対象にもなっているイノシシを食べることは、生態系を正常化にもつながります。また「無投薬」「平飼い」で自然に近い状態の動物をストレスなく健康的に育てることによって病気にかかりにくい丈夫な成体になります。そういった食材を選び、口にすることが、個人の健康につながり、さらには環境保全にもつながることを周知していきたいと考えているそうです。

野菜などの食材も、無農薬、減農薬の少しでも身体に負担をかけないものを選択。食材も一般的な店舗では捨てられるものも、美味しくいただける調理によって無駄にしないよう配慮されています。

「我々が身体にいいものを食べることによって、未来の子どもたちに害を蓄積しない。そういったものをこのレストランで体感していただいて、未来につなげていければ」(中塚シェフ)

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京都亀岡の七谷鴨もも肉×ビーツ
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愛媛県産みかんイノシシ
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兵庫県のマハタ×カブ
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中塚シェフ(右)と秋田シェフ(左)
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ペアリングされたワインはソムリエの田中裕子さんによるセレクト。

以上、2020年7月29日にオープンした注目のフレンチレストラン「ヌー.トウキョウ」をご紹介しました。環境や食にこだわりがある友人も納得してくれそうな店として、ぜひ覚えておきたいレストランです。

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この記事の執筆者
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WRITING :
北本祐子