秋を代表する雅な習わしのひとつに「中秋の名月」のお月見があります。当記事では、中秋の名月とはどんなものなのか、また、中秋の名月以外の呼び方についても確認してみましょう。

さらに、中国や韓国などで行われる世界の中秋の名月の行事、お月見団子などをお供えしたり、秋の七草を飾る風習についてもご紹介します。

■2020年の中秋の名月はいつ?

2020年の中秋の名月はいつ?
2020年の中秋の名月はいつ?

夜空に浮かぶお月様を眺めて過ごす…。そんな風流な習わしが「中秋の名月」のお月見です。2020年の中秋の名月はいつでしょうか?

今年の中秋の名月は2020年10月1日(木)

2020年の中秋の名月は、10月1日(木曜日)です。

来年2021年以降の中秋の名月はいつ?

中秋の名月は毎年日付が決まっているわけではなく、その年によって異なります。たとえば、2021年以降の中秋の名月の日付は、次のとおりです。

2021年 9月21日
2022年 9月10日
2023年 9月29日
2024年 9月17日
2025年 10月6日

■中秋の名月とは?

「中秋の名月」が秋の美しい月を指すことは知られていますが、なぜ中秋の名月にお月見をするのでしょうか?

中秋の名月にお月見するのはなぜ?

「中秋の名月」とは、「旧暦の8月15日」の月を指します。日本では古くからお月見を楽しむ習慣があり、特に平安時代に貴族の間で盛んに行われていたと言われています。美しい月を眺めながら、お酒を酌み交わしたり楽器を奏でたりして、宴を楽しんでいたそうです。

そして江戸時代になると、この習慣が一般庶民にも広まり、さらに、秋の収穫に感謝するお祭りのようになっていきました。

さらに、秋の季節は空気が澄んでおり、月が浮かぶ位置も人間が見やすいポジションを取ります。それらの条件や昔からの風習が合わさって、現代も中秋の名月にはお月見をする習わしが残っていると考えられます。

中秋の名月の歴史や由来

「中秋」は「ちゅうしゅう」と読み、旧暦の秋の真ん中を指します。旧暦では、7月から9月の3ヶ月間は秋であり、7月を「孟秋(もうしゅう)」、8月を「中秋」、9月を「季秋(きしゅう)」と呼んでいました。そのため中秋の名月は、旧暦の8月15日に見える月のことを指しているのです。

満月じゃなくても中秋の名月?

多くの方が、中秋の名月は満月と思っていることでしょう。しかし、いつも満月ではないようです。旧暦は月の満ち欠けをもとにした暦で、新月で月がまったく見えない状態の日を毎月1日と数え、毎月15日には満月になると考えられていたのです。

しかし国立天文台によると、月の満ち欠けの周期はぴったり15日ではなく、およそ14.8日。そのためわずかなズレが生じ、中秋の名月より後に本当の満月となることもあるのです。 2020年9月の満月は10月2日(金)ですが、中秋の名月は10月1日(木)で、満月の1日前の小望月(こもちづき)になります。

ちなみに、2020年の10月は、31日(土)も満月になります。1ヶ月の間に2回満月を迎える月や、その2回目の満月は「ブルームーン」といわれ、とても珍しく、価値のある現象と言われています。

■中秋の名月の呼び方

「中秋の名月」という言い方は風雅な印象があるものですが、それ以外に別の呼び方もあります。

十五夜とは違うの?

中秋の名月は、旧暦の8月15日の月であるとご紹介しましたが、旧暦の15日の月はすべて「十五夜」と呼びます。新月を1日とする旧暦では、毎月15日は新月から数えて15日目の満月となり、1月でも2月でも十五夜と言われます。

しかし、秋は空気が澄んで月がとてもきれいに見えることから、旧暦の8月15日の十五夜は特別な十五夜と考えられてきました。つまり、「十五夜」は中秋の名月の別の呼び方のひとつなのです。

2020年の十五夜はいつ?決め方や歴史・由来、十五夜の別称やお供え物から、十三夜や十日夜のお月見まで>>

仲秋の名月とは言わないの?

「中秋の名月」のほかに、「仲」という漢字を使って「仲秋の名月」と書く場合もあります。旧暦の7月、8月、9月は秋の季節とされ、「仲秋」とは、その秋の真ん中の8月という意味があります。そのため「仲秋の名月」という書き方でも、旧暦の8月の名月という意味になり、「中秋の名月」と同じように使われる場合もあります。

しかし、仲秋の名月は「旧暦8月の美しい月」と広く捉えられる場合もあるため、旧暦8月15日の月そのものを指す言葉である、「中」という漢字を使った「中秋の名月」がふさわしいという説もあるようです。

■世界の中秋の名月

夏の暑さがひと段落し、過ごしやすい気候となる秋は、月を眺めるのに最適な季節。夜空に浮かぶ美しい月は、なんだか不思議なパワーに満ちているように感じられます。そのためか、日本の「中秋の名月」と同じように、世界各国でもさまざまな行事が行われます。

中国の「中秋節」

中国で中秋の名月に行われる伝統行事が「中秋節」と呼ばれるもの。中国では旧正月を祝う「春節」の時期に連休となり、多くの方が旅行に出かけたり家族と一緒に過ごしたりします。中秋節にも同じように連休となり、中秋節は春節に次ぐ大きな祝日なのです。月餅や提灯などを飾り、お月見を楽しんだりする習慣もあります。

韓国の「秋夕(チュソク)」

韓国でも、同じように中秋の名月に関連した行事があります。それが「秋夕(チュソク)」で、「ハンガウィ」とも呼ばれます。旧暦の8月15日の前後1日が祝日となり、親戚が集まってご先祖様のお墓参りに出かけたり、秋の収穫をお祝いしたりします。

日本では、お盆の時期になると里帰りしてお墓参りをしたり、家族で集まって食事を楽しんだりしますが、韓国にも、それと同じような風習として「秋夕」があるのです。

アメリカの「ハーベストムーン」

アメリカでは、それぞれの月の満月に「〇〇ムーン」と呼び名が付けられています。たとえば2月は「Snow Moon(スノームーン)」、6月は「Strawberry Moon(ストロベリームーン)」という具合。

そして9月の満月は、おおむね「Harvest Moon(ハーベストムーン)」と呼ばれますが、ハーベストムーンとは、9月の満月ではなく、秋分の日にもっとも近い満月を指します。よって、2020年のハーベストムーンは10月2日(金)となります。ハーベストムーンは、年によって9月だったり10月だったりするのです。

ハーベストムーンも、日本の中秋の名月と同じく、農作物を収穫する秋にちなんだもので、収穫を喜び、豊作を感謝するために、どのように名付けられたのかもしれません。

■月見団子だけじゃない!中秋の名月にお供えするもの

月見団子だけじゃない!中秋の名月にお供えするもの
月見団子だけじゃない!中秋の名月にお供えするもの

日本の中秋の名月では、ただ月を眺めるだけではなく、さまざまなものをお供えします。もっともよく知られているものに月見団子がありますが、それ以外にはどんなお供えものがあるでしょうか。

団子をお供えする意味

お月見といえば、欠かせないのは月見団子。月見団子は、中秋の名月にちなんで満月のような丸い形にしてお供えします。団子は十五夜ということもあり15個用意し、それをピラミッド状に重ねていきます。そして頂上部分に置く一番上の団子は、霊界とのかけはしになると考えられています。

ススキなどの秋の七草

またススキも、中秋の名月にはマストなお供えもの。昔は農作物を収穫できたことに感謝して、芋や豆などもお供えしていましたが、稲についてはまだ収穫前だったことから、稲と似ているススキを飾るようになったと言われています。

また、ススキには魔除けの意味もあり、災いから家族や農作物を守るために飾られていた習慣が、現代にも残っています。

■中秋の名月に飾る秋の七草

中秋の名月には、さまざまな収穫物をお供えしますが、なかには、秋の七草を飾ることもあります。

秋の七草とは

「七草」と言うと「春の七草」が有名ですが、それと同じように「夏の七草」や「秋の七草」、「冬の七草」と、各季節ごとに七草があります。そして「春の七草」は、1月7日に「七草粥」にして食べる習慣があります。

しかし「秋の七草」については、食べるのではなく「見て楽しむ」ものとされています。具体的に秋の七草についてご紹介しましょう。

萩(はぎ)

「萩(はぎ)」は、秋の代表的な花のひとつ。秋のお彼岸には「おはぎ」をお供えしますが、この「おはぎ」は萩の花に見立てて名付けられています。

尾花(おばな)

「尾花(おばな)」とは、ススキのこと。自然と穂がたれた状態が動物の尾に似ていることから、この名前がついたと言われています。

撫子(なでしこ)

「大和撫子」という言葉にも使われている「撫子(なでしこ)」は、可憐な花。「形見草(かたみぐさ)」という別名があります。

葛(くず)

昔から、葛湯や葛餅などにも使われている植物が「葛(くず)」。葛の根は「葛根(かっこん)」と呼ばれる漢方薬としても利用されています。

女郎花(おみなえし)

黄色く咲く「女郎花(おみなえし)」は、見た目の美しさから歌や句などにも詠まれることも多い花です。

桔梗(ききょう)

多くの武士の家紋にも使われていたのが、「桔梗(ききょう)」です。

藤袴(ふじばかま)

「藤袴(ふじばかま)」はキク科の植物で、茎の先端に小さな花を多数咲かせます。とても良い香りがあるのが特徴。

中秋の名月には、風流な夜を楽しもう

「中秋の名月」という言葉はよく知られていても、忙しい現代ではお月見を行う方は少ないかもしれません。しかし、月見団子やススキ、秋の七草を飾って、夜空に浮かぶ月を眺めるなんて、とても風流で素敵な習わしです。今年の中秋の名月には、しっぽりと月見を楽しんでみてはいかがでしょうか?

関連記事

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。