現代病のひとつと言われている睡眠不足。今年1月に厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査」によると、「睡眠で充分な休養が取れていない人」の割合は21.7%で、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合が、男性は36.1%、女性は39.6%と女性のほうが不足気味ということが明らかになりました。
この調査のあとには、新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、在宅勤務が増えたりなど、生活形態が変化。そのため、運動不足で眠れない、この先が不安が募って眠れない、睡眠で充分な休養が取れていないと感じている人はより多くなっているのではないでしょうか。
さらに今年の夏は、異常な猛暑、ゲリラ豪雨や台風などの気圧の変化も多く、しっかり眠れず、朝起きても疲れが残っている人も少なくないはず。そこで、睡眠に悩んでいる人のために、リカバリーアドバイザーの福田英宏さんに解消法を教えてもらいました。
アンチエイジングにも!質のいい睡眠をとるための10のコツ
■1:朝に5分以上明るい光を浴びる
「人間の身体のリズムは地球の自転周期で、24時間より少し長く、約24.18時間と言われています。この0.18時間のずれを、光、食事、運動、人との関わりなどで調整しているんです。これを体内時計リセット機能と呼んでいます」(福田さん)
朝日を浴びることで、体内時計がリセットされる効果があり、光を浴びてから14時間~16時間後くらいに眠くなるリズムができます。
「毎朝、できるだけ同じ時間に起きて、まずは太陽の光を浴びる。これが体内リズムの調整においてはとにかく大切です! 人間の体が本来持っている一日の体内リズムのことをサーカディアンリズムと言うのですが、遅く起きたりするなど、いつもと違うことをすると、体に疲労が溜まりやすくなってくるのです。
太陽の光は晴天なら10万ルクス、雨天でも5000ルクスなんです。室内の照明は明るく見えて500~1000ルクスが一般的。なので、朝日はもちろん、午前中のうちに1回は外に出て、日の光を浴びることも重要です。可能であれば、30分は浴びているとベストです」(福田さん)
■2:朝ごはんをしっかり摂って腸を活発化
起きたら、コップ1杯の水を飲んで腸も起こすと体内時計がさらに整い、自律神経の安定に役立ちます。 また、朝は体温が低く、脳が十分に機能できない状態です。脳を働かせるエネルギー(糖質)を朝食で取り込むことで、体温を上げ、脳を働かせ、消化管の活動も促されるそうです。
「規則的に朝食を摂ることで、体のさまざまな臓器にも朝が来たことを知らせることができます。それにより、体のリズムが整って、夜の質のいい睡眠へとつながるんです」(福田さん)
質のいい睡眠をとるために、朝食で取り入れたい栄養素は、ビタミンB6とトリプトファン。 トリプトファンは、日中活動力を上げる心拍数・血圧の上昇を促し、精神を安定させるセロトニンに変化します。セロトニンは夜になると眠気を促すメラトニンへと変化するので、心地よい眠りやストレス対策に効果のある成分です。
トリプトファンを含む食品は、牛乳、ヨーグルト、ピーナッツ、ゴマ、チーズ、アーモンド、アボカドなどです。
ビタミンB6は、セロトニンをより効率的につくり出して、自然な眠りへ導くサポートをしてくれます。ビタミンB6を含む食品は、玄米、豚肉、牛レバー、青魚、ニンニク、ショウガなど。
トリプトファン、ビタミンB6のどちらをも含む食品は、バナナ、豆腐、豆乳、納豆などです。ぜひ朝食メニューの参考にしてください。
■3:昼寝は15時までにする
夜しっかりと眠るためには、眠る前にしっかりと起き続けるのもポイント。そのためにも、夕方以降は仮眠をしないようにすること。そして、日中にしっかり活動することが大事です。目安は、とりたい睡眠時間と同じだけ起きておくこと。
例えば、24時に布団に入り7時間寝たいのなら、24時の7時間前の17時以降は起き続けるということです。
「昼食後の時間は眠くなることもありますよね。これは正常な体内リズムともいえます。12〜15時までの間に15〜20分くらいの昼寝はしても大丈夫です。短い昼寝は、脳疲労も解消させ、作業効率を高めます。認知症予防にも効果的で、免疫力を向上させます」(福田さん)
長く寝てしまいそうな時は、お茶かコーヒーでカフェインを摂りましょう。脳の疲労回復、眠気解消に効果的です。
ただし、カフェインを含む飲み物は1日2~3杯まで、15時以降は飲まないほうがベターです。特に夕食以降はカフェインの摂取は避けてください。寝つきが悪くなってしまいます。
■4:軽めの運動をする
ウォーキング、ヨガ、ラジオ体操などといった軽い運動をするなどして体温を上げておくことも重要です。
「体が疲れていないと眠れないので、適度な疲労感は必要です。なので、ハードすぎない、気持ちをリラックスさせる運動を、日中のうちに20分くらいするといいと思います」(福田さん)
■5:早めの夕食で、腸を休ませる
夕食は寝る3時間前には終わらせておくのがベスト。
「寝る直前に食事をすると、体は消化吸収に集中して動くことになり、睡眠時に脳や身体を休めることができなくなるんです。すると、睡眠の質が下がって、『寝た気がしない状態』になってしまいます。
食事をしてから消化が落ち着くまで、最低でも3時間は必要と言われています。なので、寝る3時間前までには夕食をとっておいてください」(福田さん)
どうしても夕食の時間が遅くなる日は、消化のいいものを選んで食べてください。消化にいいものを取り入れれば、胃の中に食べ物が留まる時間が短くなるので、睡眠に悪影響を与えずにすむそうです。
■6:寝る90分前には入浴をする
お風呂に入ることは、脳と体をリラックスさせ、また体温を下げるので眠りにつく準備になります。
「38℃~41℃のぬるめのお湯に15分くらいゆっくりつかると、体の深部が温まります。そうすると、90分後に深部体温が下がってきて、ちょうど眠気がやってくるのです。
寝る90分前に入浴するのが難しい場合は、深部体温が上がりすぎないように、ぬるい入浴かシャワーですませて。また、お風呂に入れないときは足湯などで、手足を温めるのも効果的です」(福田さん)
■7:寝る1時間前は、部屋の明かりを少し落とす
「夜になっても明るい光を浴びていると、脳や交感神経の活動が高まって、スムーズな入眠を妨げます。夕方から、もしくは19時以降はなるべく部屋の照明を抑え、暖色系の照明で過ごすのがおすすめです」(福田さん)
そのため、寝る場所と家で仕事をする場所は分けたほうがベスト。
寝室の明るさは0.5ルクスがよいとのこと。障子やカーテン越しに月明かりを見るくらいのイメージの明るさです。
■8:スマートフォンも寝る1時間前にオフ
パソコンやスマートフォンの光にも注意!
「眠る前に500ルクス以上の光、特にスマホなどの青白い光を浴びないことも重要です。脳が興奮してしまい、睡眠ホルモン・メラトニンが減って、深い睡眠ができません」(福田さん)
寝る直前まで触らないように、ベッドから離れたところに置いて寝るのが望ましいそう。目覚まし時計としても利用しないほうがよいです。目覚ましとしてそばに置いていると、ネットサーフィンやSNSのチェックなど寝る直前までスマホを触ってブルーライトが目に入ってしまうので、スマホは完全にオフにしましょう。
■9:温度、湿度で安眠できる環境を整える
室温は、夏は26℃~28℃、冬は16℃~19℃に、湿度は60%前後に調整するとよい眠りがとれるとされています。
「寝室の気温や湿度を保つことも大事ですが、寝床で考え事をしないこともポイントです。ベッドや布団の上で考え込んでしまうと、なかなか寝つけなくなるからです。ベッドや布団は寝る場所と脳にインプットさせるためにも、眠くなってから寝床に入りましょう」(福田さん)
ベッドの上での読書などもおすすめではないそうです。
■10:週末の寝だめはNG!
平日は忙しいから睡眠時間が短めで、週末にたっぷり寝るという人も少なくないと思います。しかし、休日に朝寝坊すると、せっかく整えた体内時計がズレてしまいます。
「普段との起床時刻の差が大きくなれば、その分体内リズムのズレも大きくなってきます。休日にたっぷり寝ると、週末は寝つくことのできる時間が遅くなり、さらにリズムを崩してしまいます。
睡眠・覚醒のリズムが乱れると、戻すのに3日間くらい必要になり、月曜日からエンジンをかけて頑張るのが難しくなります。
社会人の方が体調を崩しやすいのは案外土日が多いんですよ。なので、土日もなるべく普段と同じ時間に起きる、多く寝たとしても、起きる時間の差は2時間以内にしましょう。
もしどうしても疲れきっているようなら、昼寝をするのがいいと思います」(福田さん)
毎日の生活・睡眠リズムを大幅に崩さないことも大事なのですね。
最近、きちんと眠れていないと感じる方は、ひとつからでもいいので、ぜひ今日から実践してみてください。質のいい睡眠がとれると、アンチエイジング効果やダイエット効果など、美容にもいいことだらけだそうですよ。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 宮平なつき
- EDIT :
- 小林麻美