最近書店では『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』『物欲なき世界』など、「さらば消費社会」的な本が目立つ。「これからはモノではなく人と心の時代」「必要最小限で暮らす」など、いいことがいっぱい書いてある。でもこれ、できます?

ブームの背景には、中国人の爆買いがあると思う。著者たちには「いまだ不況のわが国。経済的にはありがたいが、あの光景は見苦しい!」という思いがあるのだろう。しかしあれは景気の絶頂期、日本人が海外でやらかしてきたこと。あと30年もすれば、中国でも「清貧」「ミニマリズム(必要最小限生活)」が流行りだすに違いない。

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ミニマリストには「ムダ」としか映らないかもしれないけど、私たちは旅をするとき、「どこの店に行こうか」とショッピングの計画が欠かせない。さらに日常で落ち込んだとき、思いきって手に入れた美しいジュエリーやティーカップに慰められた女性は多いはず。

少し意地悪な見方をすると「買わない、いらない」ブームって、かつて物量で競ったオトコたちが、今度は「俺のほうがもってないゾ」と自慢しだしたみたい。「爆買いか無欲か」ではなく、モノの技術の高さがその人を変える。そんな買い物ができたら。

『僕たちは、なぜ腕時計に数千万円を注ぎ込むのか?』は、高級時計ブランド“リシャール・ミル”の仕事と愛好者たちの本。読みどころは後半「腕時計をつけてプレイはしない」というテニスプレイヤー・ナダルのために、ブランドは究極の軽さを実現。サッカー監督・マンチーニの愛用品は、文字盤で45分ハーフのプレイ時間とロスタイムを表示する。注目すべきは愛好者たちの「財力」ではなく、時間とスピードを仕事にしている男たちがリスペクトする最高の職人技。シビれます。

この記事の執筆者
岩手県生まれ。幼いころから「本屋の娘」として大量の本を読んで育つ。2011年入社。書店勤務の傍ら、テレビや雑誌など、さまざまなメディアでオススメ本を紹介する文学担当コンシェルジュ。文庫解説に『タイニーストーリーズ』(山田詠美/文春文庫)、『母性』(湊かなえ/新潮文庫)、『蒼ざめた馬』(アガサ・クリスティー/早川クリスティ―文庫)などがある。 好きなもの:青空柄のカーテン、ハワイ、ミステリー、『アメトーーク』(テレビ朝日)
クレジット :
撮影/田村昌裕(FREAKS) 文/間室道子
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