鈴鹿山系に見守られる、のどかな町に誕生した「湯の山 素粋居」。陶芸家・造形作家の内田鋼一さんの美意識を詰め込んだ12棟のヴィラは、各棟でイメージががらりと変わります。こだわり抜いたヴィラは、まるで小さな美術館。各棟にしつらえた温泉や伊勢の美食も、滞在のお楽しみ。

旅に求める要素がつまったこだわりの空間「湯の山 素粋居」

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地元の大正石を組み合わせたフロント

四季の移ろいを映しだす鈴鹿山脈のふもと、三滝川のせせらぎと、ガタンゴトンとやってくる湯の山線のレールの音に、なつかしさを覚える三重県・菰野(こもの)町。この山麓の町に「湯の山 素粋居」は2020年7月10 日、開業しました。

4000坪あまりの敷地に立つのは、わずか12棟のヴィラ。世界から高い評価を得ている陶芸家・造形作家の内田鋼一さんが、建築・デザイン監修、そしてアートキュレーションも担当しています。

各棟は土・石・漆喰・木・漆・和紙・硝子(ガラス)・鉄の、8つの自然素材がテーマ。同じデザインは、2つとありません。それどころか、同じ人から生まれた発想とは信じられないほど、それぞれ独立した世界観があります。

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本棚には各棟の天然素材のテーマに沿った書籍が並んでいます。

まるでアート作品のようなヴィラ12棟をご紹介

どのお部屋にしようか、迷ってしまうヴィラ群。かいつまんで、12棟のお部屋を紹介します。

「鉄景(てっけい)」

錆びついたコールテン鋼を木造住宅の外壁に使った大胆なデザイン。時の経過で味わいが深まるヴィラ。

「木刻(きのとき)」

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ウッディーなシャンデリアがどこかサンタフェ風の「木刻」

スギ材と白の組み合わせのナチュラル・テイストながら、天井の梁やシャンデリアがどことなくサンタフェ調。

「白露(しらつゆ)」

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ペンダントライトが印象的な「白露」。窓の向こうに鈴鹿山系。

呼吸する漆喰を使っているせいか、室内の空気がしっとり。ウニのような形や円筒形のライトは、伝統技術の有松鳴海絞り。

「土逢(どおう)」

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お茶をいただきながら、山並みが愛でられる「土逢」

土がテーマ。茶人・千宗屋監修の茶座敷を特別にしつらえ、リビングにもお茶を楽しむための一画が。窓に広がる、鈴鹿山脈の眺望がみごと! 

「紙季(しき)」

和紙がテーマ。障子から差し込む、やわらかな光と影を楽しんで。リビングは天井や壁も和紙張りです。

「囲土(いのつち)」

左官職人が仕上げた、美しい曲線の土壁の空間に、アフリカの武骨な木製家具やプリミティブアートが置かれています。乾いてひび割れた土壁のザラザラとした手触りは、忘れていた感覚。

「界鉄(かいのてつ)」

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錆色のコールテン鋼を木造住宅の壁に使った「界鉄」

錆が浮かんだコールテン鋼と白く塗った杉材のコントラストが、緑の中に映えたヴィラ。革張りのソファーなど調度品はマスキュリンなテイスト。

「颯木(そうもく)」

スギ材をふんだんに使用。窓から周囲の木々に染まった緑の光が差し込み、まるで森林浴をしているよう。

「碉石(ちょうせき)」

外観、内観ともに地元の菰野石を組んだ、堅牢な佇まい。高い位置の窓から光が差し込み、石に守られた非日常を。

「硝白(しょうはく)」

すっきりとした白い外観の、ガラスをテーマにしたヴィラ。バブルのようなガラスのシャンデリアがこの部屋の主役。

「玄漆(げんしつ)」

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「玄漆」の黒いバスタブ

「玄」が意味する黒の漆を多用した、重厚感のあるヴィラ。特注の黒漆のバスタブは、白い浴室の中で存在感があります。

「石砬(せきろう)」

そして、今回滞在したのは、菰野石をフューチャーした「石砬(せきろう)」

まずは玄関先のアプローチに鎮座した巨岩がお出迎え。リビングに入ると、さらに大きな巨岩、ベッドルームにも巨岩。シンクもごつごつした岩の塊。小さな石のオブジェも置いてあります。石は冷たい印象があるけれど、巨石に頬をつけてみたら、心落ち着く不思議な安心感。癒されます。

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「石砬」のリビング。坪庭にも巨岩が置かれています。

12棟の共通項は源泉かけながしの露天温泉

各棟でデザインは異なるものの、共通しているものがいくつかあります。全室に源泉かけ流しの露天風呂を用意。湯船の形や材質、スタイルなども、ヴィラごとに変わります。「石砬」はあずま屋のような屋根付きです。三滝川から届くせせらぎに包まれながら、温泉が楽しめます。

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全室に源泉かけ流しの露天風呂が。デザインは部屋ごとに異なります。

ウェルカムスイーツも天然素材のテーマごとに内容が変わります。“石”は、きび糖の食感を残したクッキーを”石”に見立てたフィナンシェ。また、ルームキーの一部も各棟のテーマの天然素材が使われています。

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「石砬」のウェルカムスイーツとルームキー。顔認証を登録すれば、カギは不要。
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急須と湯のみも、各部屋で異なるしつらえ。
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調度品のセレクトも内田鋼一さんが担当。自分の作品やコレクションを展示。

デザインを手がけた内田鋼一さんの引き出しの多さは、世界各国を旅して、その土地に入り込み、作陶を重ねた経験から生まれてきているものでしょう。12棟12様のヴィラを体験しに、通いたくなるはずです。

ちなみに、「湯の山 素粋居」ではヴィラの入口に日本で初めて顔認証客室入退室システムを導入。事前に登録しておけば、フロントでチェックインすることなく、入室できます(到着後にも登録OK)。

また、チェックイン・アウトの送迎は、自動運転が可能な電動カートも対応します。非接触型サービスはアフターコロナの今、新しいおもてなしのカタチかもしれません。

美食の宝庫・伊勢を心ゆくまで満喫

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絶妙な火加減の山の幸、海の幸をサーブするHINOMORI。手島竜司シェフが監修。

敷地内には3つの一軒家レストランが点在しています。シグネチャーは、ミシュラン1つ星に輝く、パリの「Restaurant PAGES」のオーナーシェフ手島竜司さんがプロデュースする、直火料理「HINOMORI」。

バスク地方の窯を使い、薪や炭、ワラなどで炙り、いぶし、焼き上げます。鈴鹿山系のオークの薪を使い、その置き方、間の取り方などの技を駆使した、絶妙な火加減。生産者にお願いして特別肥育した熟成牛は、感涙ものです。そして、伊勢に近い土地柄、山の幸のみならず、海の幸も絶品です。

創業90年の老舗うなぎ卸問屋が手がける「うなぎ四代目菊川」。たしかな目利きで選んだ一匹を、鈴鹿山系の伏流水で泥抜きし、さばきたてを蒸すことなく、強い火力の炭で焼き上げます。焼き場はオープンになっているので、見学もOK。おすすめは、焼きたてを丸ごと一匹供する“一本うなぎ”。豪快に、いただきましょう。

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名物の「一本うなぎ」。お重、小鉢、肝吸、漬物のセットで¥4,950(税込)

蕎麦の名店「なにわ翁」で修行を積んだ石垣さんがはじめて店を構えた、「そば切り 石垣」。常陸秋そばをメインに、香り高い北海道産や味がしっかりとした福岡産のそばを組み合わせた、二八蕎麦。

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少し緑がかった色合いが美しい、できたての蕎麦。「なめこおろしそば」¥1,350(税込)

「殻をむいた瞬間から劣化がはじまる」と店内で製粉から行い、つゆに使う鰹節もけずって30分以内にダシをとります。鮮度へのこだわりが、蕎麦本来の美味しさを教えてくれます。

建築・アート・温泉・美食。旅に求める要素がすべてこだわり抜かれているのです。

問い合わせ先

  • 湯の山 素粋居
  • 料金/「うなぎ四代目菊川」コース¥57,000~、「HINOMORI」コース¥70,000~など(夕食のコースや人数によって料金を設定。1泊2食、2名1室利用の1名料金、税込)
  • TEL:059-390-0068(代)
  • 住所/三重県三重郡菰野町菰野4842-1

 

この記事の執筆者
ダイビング雑誌の編集者を経てフリーに。海外旅行専門誌でもビーチを担当。月に1~2回、海外を中心に国内外のビーチリゾートへ通うこと、かれこれ四半世紀以上になる。女性誌の旅記事、ライフスタイル誌の連載、ウェブの連載ほか、共著に『奇跡のリゾート 星のや竹富島』など。世界のビーチガイド「World Beach Guide(http://www.world-beach-guide.com ) 」主催 好きなもの:海でボーッとすること、ボディボード、ダイビング、ビーチパーティー、Jazztronik、H ZETTRIO、渋谷Room
公式サイト:古関千恵子ホームぺージ
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WRITING :
古関千恵子
EDIT :
安念美和子、榊原淳