スマートに働く女性として、仕事のスキルが高いことに加え、周りの人とのコミュニケーションの取り方にも品格を備えたいもの。特にキャリアを積んだ女性なら、部下や後輩への仕事の依頼の仕方もチェックされがちです。

けれど、自分ではしっかりと頼んだつもりでも、部下や後輩には意図が正確に伝わらないケースって意外とありますよね。どのような依頼方法が、後になってトラブルになりやすいのでしょうか。

1,000社以上を訪問し、8,000人を超えるビジネスパーソンと共に仕事をしてきたコンサルタントの安達裕哉さんにお聞きしました。

■1:品質の基準を明確にしない

品質のイメージを共有
品質のイメージを共有

安達さんは、「一番ダメな指示は、品質の基準を明らかにしない指示です」と言います。

「『報告書を作成してください』と指示をしたけれど、あがってきた報告書を見たら、報告書の体をなしていないということがあります。上司が『報告書を作成してください』を指示を出したときに、部下とちゃんと品質の話についてやりとりをしなければなりません。品質の話とは、どれくらいのものを仕上げるのかということです。

そのため、上司は指示を出す際に、『報告書に含まれていなければならない内容は何か分かりますか?』と部下に質問するべきです。議事録なら『参加者が網羅されている』、『議題が入っている』などのいくつかの基準をあげて、その基準を部下と共有する必要があります。

上司が考えている”網羅されていなければならない基準”と部下が考えている基準が違うことはよくありますので、『報告書を作成してください』と言うだけでは、手抜きの指示になるのではないでしょうか」

依頼をする側としてはつい「そんなこと言われなくても分かるでしょ!」と考えてしまいがちですが、それではいけないようですね。

■2:最終納期だけを示す

納期に関するあいまいな指示としては、安達さんは、「最終納期だけを示すことがよくあります」と指摘します。

「ちゃんとした報告書が必要な際に、実はいちばん重要なのは、チェックポイントを何度かつくることです。最終納期は月曜日だったとして、部下にいつ作業をするのかを聞き、それが木曜日だったら、『木曜日中に一度、確認のために見せてください』と伝えておくことが必要になります。また、途中のチェックが必要なのかどうかを、指示を出す際に部下と確認するのが、よい上司かなと思います」

確かに、そんなふうに指示を出しておけば、締切日当日になってバタバタすることはありませんね。

■3:取引先にとって当然の作業を共有しない

取引先との会議後の会議室
取引先との会議後の会議室

さらに、安達さんは、「取引先がからむケースでは、取引先が当然と考えていることと、こちらがやらなければならないと考えていることが違うケースはよくあります」といいます。

「例えば、取引先との事例では、会議の議事録をどちらが作成するのかという話が重要になったりします。お客さんがメモを取っているのを見て、こちらでは必要ないと思っていたところ、お客さんから『議事録を提出してください』と言われることがあります。会議の設定を部下に指示するなら、議事録の提出の必要性まで事前に部下に確認しておくように、と伝えることが重要です」

また安達さんは、「自分がお客さんと情報を共有したら、それを部下とも共有する必要があります」とも。議事録の提出の必要性をはじめ、取引先がからむケースでは、いろいろな場面で気をつけたいものです。

■4:部下の知識レベルを確認しておかない

また、「相手の知識レベルを確認しないで指示を出してしまうことがあります」とも。

「昔、よく経験したことでは、『競合社を調べてください』と部下に指示をしたら、本当は20社くらいあがってこなければならないところ、5社しかあがってこなかったことがありました。

そういう場合は、指示を出す際に、『どんなところが競合になると思いますか?』と質問をするなどして、部下の知識レベルを確認する必要があります。それを怠ると、あとになって『ここも競合でしょう? あそこも競合でしょ?』ということになります」

■5:具体的なやり方を教えない

部下に仕事のやり方レクチャー
部下に仕事のやり方レクチャー

「部下の知識レベルを確認しない」にも通じるのですが、安達さんは、「指示を出すだけではなく、やって見せないといけないケースがあります」といいます。

「例えば、部下にWEBマーケティングの知識をつけさせたいと思ったときに、『WEBマーケティング関係のセミナーを探して予約をしておいてください』と指示を出したとします。

セミナーの予約をしたのかを聞くと、『予約をしていません』と部下は言います。聞いてみると、『探せませんでした』と答えてきました。『何をしていたのですか!』と思いがちなのですが、上司の指示の出し方が悪いというケースが多々あります。

そもそも上司が持っている情報のチャンネルと、部下が持っている情報のチャンネルがぜんぜん違う場合があるので、まず、部下が持っている情報のチャンネルを確認する必要があります。そのうえで、探し方が分からないときは、一度、やって見せてあげないといけません。

セミナーの予約のほかにも、例えば、情報をリサーチしたり、お客さんにお礼のメールを出したりすることは、やって見せてあげることが必要になるでしょう。やって見せるのは手間だし、部下の知識レベルを確認することもめんどうなのですが、そこで上司が手を抜いてしまうと、あとになって跳ね返ってくるケースが多くあります」

人によって常識は違うもの。自分の知っていることを部下が知っているのか知らないのか、それをまず確認してから指示することを習慣にしたほうがよさそうです。

 

以上、「仕事を依頼するのが下手な人」の5つの悪習慣をご紹介しました。

スマートで適確な指示が出せるようになれば、職場での人間関係も良好になり、「あの人は頼りになる!」という評価を得ることもできるかもしれませんね。トラブルが起こることも減りますので、ストレスからも解放され、自分も、周りの人も幸せにすることができます。日常のちょっとした依頼事をする際から、試してみてはいかがでしょうか。

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PROFILE
安達 裕哉(あだち ゆうや)さん
1975年東京都生まれ。筑波大学環境科学研究科修了。世界4大会計事務所の1つである、Deloitteに入社し、12年間コンサルティングに従事。在職中、社内ベンチャーであるトーマツイノベーション株式会社の立ち上げに参画し、東京支社長、大阪支社長を歴任。その後、起業して、仕事、マネジメントに関するメディア「Books&Apps」を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動を行う。
『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?』安達裕哉・著 日本実業出版社刊
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
竹内みちまろ