会社勤めの経験がある人ならば、「年末調整」の書類を書いた経験があることでしょう。しかし「確定申告」となれば、自分とは無縁と思っている会社員の人も多いでしょう。そこでこの記事では、年末調整と確定申告の違いを詳しく解説していきます。年末調整と確定申告の特徴や期限、その両方をおこなう必要があるのはどのような場合なのか、また、年末調整と確定申告の書き方と注意点もわかりやすく説明します。

■年末調整と確定申告の違いはどこにある?

会社で年末調整をおこなっている多くの人は、基本的には確定申告をおこなう必要がありません。 それでは、年末調整と確定申告の違いはどこにあるのでしょうか? ここでは、それぞれの特徴を解説していきます。

年末調整とは

年末調整とは、会社が従業員に支払った1年間の給与所得(給料)から所得税額を確定する手続きのことです。

会社員の人は、「源泉徴収」として毎月の給料から事前に所得税などが引かれてます。しかし、毎月差し引かれていた源泉徴収額は概算なので、正しく修正する必要があります。そのため、年末調整でおおまかに差し引いていた税金を再計算し、その差額を従業員に還付したり徴収するために、正しい所得税額を確定させます。

しかし、会社員としての給与所得が2,000万円以上あったり、年末調整をせずに退職した人は、確定申告が必要になります。

確定申告とは

確定申告とは、個人事業主などが年間所得から納税すべき所得税額を自分で計算し、税務署に申告することです。会社員の人は、年末調整をするため確定申告は不要ですが、副業を行っていたり、所有している不動産からの所得がある場合は、確定申告が必要です。

■年末調整と確定申告の期限はいつまで?

年末調整と確定申告には、対応の期限が設けられています。それぞれ、いつからいつまでの所得が対象となり、いつまでに手続きを終えなければならないのでしょうか?

年末調整

年末調整の対象所得(給与)は、その年の1月1日から12月31日です。会社員の人は、自分の勤務先に年末調整の書類を提出する必要があります。多くの企業において、年末調整の書類は11月頃に社員に配布され、提出期限は11月中とする場合が多いようです。

なお、年末調整の書類の不備に気づいたり、申告内容を間違えてしまった場合は、1月31日までであれば修正が可能となります。ただし、経理担当者による事務処理が必要なため、それよりも前に速やかに報告しましょう。

例えば、扶養家族の人数の変更や保険料に誤りが見つかったら、所得控除額も変更になるので、年末調整を改めて行わなければなりません。その際は、経理担当者になるべく負担をかけないように配慮しましょう。

ただし、年末調整のやり直しを受け付けてくれるかどうかは、各勤め先に確認してください。勤め先が受け付けていない場合は、自身で確定申告を行い、所得控除額を修正することができます。

確定申告

確定申告の対象所得も、その年の1月1日から12月31日になります。手続きの期限は、基本的に翌年の2月16日から3月15日までです。期限を過ぎた場合「期限後申告」として扱われるため、延滞税などが課せられることがあります。

■年末調整と確定申告を両方おこなう場合

年末調整と確定申告を両方おこなう場合
年末調整と確定申告を両方おこなう場合

基本的に年末調整、確定申告のどちらかをおこなえば問題がない人が多いでしょう。しかし、さまざまな理由や事情により、年末調整と確定申告の両方が必要となる場合もあります。

1年間の給与所得が2,000万円を超える場合

1年間の給与所得が2,000万円を超える場合、年末調整と確定申告の両方をおこなわなければなりません。また、2ヶ所以上の会社から給与所得がある場合なども確定申告が必要となります。

医療費控除を希望する場合

年末調整の対象者となる会社勤めの従業員が医療費控除を希望する場合、年末調整と合わせて確定申告をおこなう必要があります。医療費控除とは、年間の医療費が10万円を超えた際、その超過額について翌年の所得税から控除を受けられる制度のことです。

寄付金控除や雑損控除を希望する場合

寄付金控除や雑損控除を希望する場合も確定申告が必要です。寄付金控除とは、国が認めた組織や団体へ寄付したときに適用される控除であり、雑損控除とは、災害・盗難・横領によって、資産に損害を受けたときなどに適用される控除をいいます。

住宅ローン控除が初回の場合

初回の住宅ローン控除(住宅借入特別控除)を受ける場合、確定申告が必要です。初回(初年)のみ確定申告をおこなえば、2回目(翌年)以降は、年末調整で自動適用されるようになります。

年度の途中で退職、再就職しなかった場合

年度の途中(1月1日から12月31日)で退職、再就職しなかった場合も確定申告が必要となります。この対象者は、在職中の給与から多くの税金が差し引かれている可能性が高いため、税金が還付されることが多いようです。

6ヶ所以上の自治体にふるさと納税をした場合

6ヶ所以上の自治体にふるさと納税をした場合、確定申告が必要になってきます。寄付時に「ワンストップ特例申請書」を提出することにより、5ヶ所以内であれば、確定申告をおこなう必要がなくなります。ただし、6ヶ所以下であっても、すべての寄付時にワンストップ特例申請書を提出しなかった場合、確定申告をおこなわなければありません。

保険料の控除が漏れていた場合

年末調整では各種保険料控除の申告が可能ですが、それが漏れていたり、証明書が見つからず年末調整時に間に合わなかった際は、1月31日までであれば修正が可能であると上述しました。しかし、経理担当者による事務処理が必要なため、年末調整のやり直しを受け入れてくれるか否かは、企業により異なるでしょう。

勤め先や経理担当者に負担をかけたくない、また、年末調整のやり直しを行わない勤め先の場合は、自身で確定申告を行うと、種保険料控除を受けることができるようになります。

■【年末調整・確定申告】こんな働き方の場合はどうなる?

年末調整と確定申告は、働き方によっても対象が異なる場合があります。ここでは、パート・アルバイトや副業、転職した人たちのケースを見ていきましょう。

パート・アルバイト

年末調整は、会社に勤務している従業員が原則対象です。そのため、雇用形態に関わらず「給与与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、12月31日時点で会社に勤務しているパート・アルバイトの人は、年末調整の対象者となります。

副業している人

会社員として他の副業をしている人は、勤め先での年末調整と自身での確定申告の両方が必要です。ただし、その副業の所得が20万円以下の場合は、確定申告をおこなう必要はありません。

転職した人

年度内(1月1日から12月31日)に退職後、転職をした人は、前職の源泉徴収票を転職先に提出すれば、年末調整のみで問題ありません。年度内に退職して転職しなかった人は、確定申告が必要となります。

■【年末調整・確定申告】インターネットからできる?

【年末調整・確定申告】インターネットからできる?
【年末調整・確定申告】インターネットからできる?

年末調整と確定申告は、インターネットからでも手続きが可能なのでしょうか? ここでは、その有無や手続き方法などをわかりやすく解説していきます。

年末調整

年末調整の場合、インターネットからの手続きができません。基本的には、勤務先から渡される年末調整の書類に必要事項を記載し、提出してください。

確定申告

確定申告の場合「e-Tax(イータックス)」と呼ばれる国税電子申告・納税システムを使えば、インターネットからの手続きが可能です。国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成し、インターネットで提出することができます。

■年末調整の書き方と注意点

ここからは、年末調整の書き方と注意点をご紹介します。年末調整のポイントは、申告書の確認と関連書類の準備、そして記載ミスや記載漏れがないかなどをチェックすることです。

注意点1:申告書の確認

年末調整の申告書は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」の主に3種類です。住宅ローンを利用している場合(2回目以降に)「住宅借入金等特別控除申告書」も必要となります。

注意点2:関連書類の準備

各種申告書を記載、提出するときに必要な関連書類の準備をおこないましょう。保険会社や税務署、金融機関などから送付されてきた証明書原本や控除証明書などです。

注意点3:記載ミスや記載漏れがないようにする

必要書類に記載ミスや記載漏れがないように注意が必要です。申告書内の記載項目にそって、名称や種類、氏名や続柄、金額や日付など、各機関から送られた関連書類の内容などをしっかりと正確に記入しましょう。

詳しい書き方は「年末調整がよくわかるページ|国税庁 (nta.go.jp)」をご確認ください。

■確定申告の書き方と注意点

次に確定申告の書き方と注意点をご紹介します。確定申告のポイントは、何といっても自分の申告内容に合わせた膨大な必要書類などの準備、それに国が定めた提出期限の厳守です。

注意点1:申告内容に適した必要書類の準備

確定申告をおこなうときは、書類の準備がすべてといわれています。必要となる書類は「確定申告書」「所得証明書類」「本人確認書類」「控除照明書」「印鑑」です。それぞれのケースに合わせ、準備をおこないましょう。

注意点2:押印やマイナンバーの記入漏れ

年末調整同様、確定申告も必要書類に記載ミスや記載漏れがないように注意しなければなりません。個人情報にはじまり、屋号や日付、収入金額や所得金額、各種控除や各種税額など、その記載項目は多岐にわたります。また、押印やマイナンバーの記入も忘れないようにしてください。

注意点3:提出期限を厳守する

提出期限が設けられている確定申告。提出期限に遅れた場合、延滞税の課税が発生したり、期限内申告が必要条件の「青色申告特別控除」が受けられなくなります。提出期限を厳守するためにも、早めの準備や手続きをおこなう注意が必要です。

詳しい書き方は「所得税の確定申告|国税庁 (nta.go.jp)」をご確認ください。

■年末調整と確定申告の違いを知り、正しく納税しましょう

この記事では、年末調整と確定申告の違いを解説しました。年末調整は、会社に勤める従業員が1年間の所得に対する確定申告を簡易的におこなうため、会社が代行する手続きです。仮に年末調整が間に合わない場合、記載ミスや漏れがあった場合は、自分で確定申告をおこなえば、税制上問題ありません。年末調整と確定申告をしっかりと理解してから手続きをおこなうようにしましょう。

この記事の執筆者
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