白トリュフをご存知ですか? トリュフは世界三大珍味のひとつに数えられており、実際にイタリアンやフレンチでいただいたことのある方も多いのではないでしょうか。しかしトリュフと一言で言っても、「白トリュフ」「黒トリュフ」という言葉があるように、その種類や産地、トリュフ内での差など、意外と知らないことが多いのもまた事実。詳しく知ると、高級食材のイメージが中心だった「白トリュフ」が、より身近に思えてくるかもしれません。そこで本稿では、白トリュフの特徴、選び方、使い方などを詳しくご紹介していきます。

調理する前の白トリュフ。©地中海フーズ
調理する前の白トリュフ。©地中海フーズ

【白トリュフ:目次】

■白トリュフって何? どんなもの?

トリュフと言えば、言わずと知れた高級食材。しかし、白と黒との違いは? なぜ高級なの? と意外と知らないことばかり。ここではなかでも謎が多い「白」のトリュフについて、ご紹介していきます。

トリュフは世界三大珍味のひとつ

トリュフはキャビア・フォアグラと並び、世界三大珍味として数えられる高級食材です。特定の樹木(ナラなど)と共生関係を持ち、根の周囲の地中から掘り出される特殊なきのこ(地下生菌)です。独特の芳香を放ち、卵料理などとの相性が高いものとして知られています。トリュフは色によって白いトリュフと黒いトリュフに分けられます。白いトリュフの中でも「アルバの白トリュフ」として知られる“Tuber Magnatum(学名)“は、抜群の香気により珍重され、取引価格もきわめて高いものとなっています。現在確認されているトリュフは約60種で、そのうちの約25種がイタリアで見つかっており、9種が食用トリュフとして分類されています。よく市場に出回るのは6種です。

トリュフはきのこの一種

黒トリュフと白トリュフ。まさに森からの贈り物。©イナウディ社
黒トリュフと白トリュフ。まさに森からの贈り物。©イナウディ社

トリュフは地下に生えるきのこです。日本では西洋松露(セイヨウショウロ)と呼ばれています。きのこと聞いて一般的に思い浮かべる外観とは大きく異なっており、球状や塊状となっています。成熟するにつれ、独特の芳醇な香りを発するようになります。地中5~40cm(深いものでは1m)に発生し、浅いところにあるものは成長して、その一部を時々地上に出すこともあります。

白トリュフの産地は?

白トリュフは、人工栽培の技術が確立されておらず、限られた条件の特別な自然環境の中でしか育つことができません。

白トリュフを産出するアルバ近郊ランゲの丘。©地中海フーズ
白トリュフを産出するアルバ近郊ランゲの丘。©地中海フーズ

白トリュフの産地でいちばん有名なのは、北イタリアの西部にあるアルバという街の近郊に広がる、緩やかな丘陵地帯です。アルバでは毎年10~11月の週末に国際白トリュフ祭りが開催され、世界中から白トリュフを買い求めにたくさんの人が集まります。

白いトリュフは日本でも発見されている

数は少ないですが、日本やタイでも白いトリュフが発見され、注目を集めています。日本では近年2種類の新種のトリュフが発見され、研究の結果、20種類以上のトリュフが存在する可能性が高まってきました。しかし、食材として売買されることはあまりないようです。2017年、タイでも3種類のトリュフが発見されたと報道※されました。そのうち1種はチェンマイ大学の研究チームによるDNA鑑定でイタリアの白トリュフ(Tuber Magnatum)と同一種であると報道されました。そのほか、ヒマラヤトリュフというネーミングで中国産のトリュフが輸入され、日本国内で販売されています。

白トリュフはなぜ高級なのか

©地中海フーズ
©地中海フーズ

白トリュフは大きさや状態にもよりますが、日本のレストランが購入する価格で60~80万円/kgと、とても高級なものです(収穫量の少ない年は100万円になることも!)。その理由は第一に、人工栽培方法が確立されていないため、特別に訓練された犬を使って地中のトリュフを探し当てなければなりません。その作業はまるで一粒の宝石を岩山から採掘するかのごとくで、流通量が極めて少ないことが挙げられます。それでいて世界中のグルマンの垂涎の的となっており、短いシーズンに需要が殺到するためです。また、せっかく手に入れた白トリュフですが、密閉容器に入れて保存していても、最長で10日間程しか保存がきかないデリケートな食材です。刻一刻と香気成分が揮発していき、重量も日々軽くなっていきます。量が少なく、扱いが難しい憧れの食材・・・これがトリュフが高価な理由です。また白トリュフの方が黒トリュフよりも産出量が少ないため希少となり、黒トリュフの3~10倍の値段がつきます。

訓練された犬と一緒に掘り当てる。©地中海フーズ
訓練された犬と一緒に掘り当てる。©地中海フーズ

■白トリュフってどんな味? どう食べる?

白トリュフは芳醇な香りが特徴

白トリュフは官能的で独特な香りが特徴で、媚薬に例えられることもあります。食事のシーンでは、ゲストの面前で温かい料理の上に、専用のトリュフスライサーで生のトリュフを薄くスライスしながらふんわりとまとわせます。このとき大切なのは、食べる直前にこの厳かな儀式を行うことです。まさに香りを味わうという表現がふさわしい食材です。

ところで、黒トリュフとは?

黒トリュフ。©イナウディ社
黒トリュフ。©イナウディ社

黒トリュフは白トリュフと産地や調理方法、産出量などに違いがあります。黒トリュフは加熱するとより香りが出るため、加熱調理に適しています。もちろん生でも食すことができるため、幅広い料理に使用できる食材です。黒トリュフは多くの地域で採られ、フランスのペリゴール産やイタリアのノルチャ産のものが有名です。また香りも白トリュフとは異なり、湿った土や森、マッシュルームなどに例えられます。さらに黒トリュフは栽培に成功している種類もあり、産出量が白トリュフに比べて多いため、価格が控えめになっています。

トリュフの旬は?

黒トリュフは夏に採れるサマートリュフと、冬に採れるいくつかのウィンタートリュフに分けられます。イタリアでは地域によって採取してよい時期が定められており、サマートリュフは6~11月に、ウィンタートリュフは12~3月が食べごろです。最近では南半球で栽培された黒トリュフも日本に入ってくるようになりました。これにより北半球で採れない時期でも、南半球産が市場のニーズを満たしています。白トリュフの旬は秋から冬で、10~1月となります。白いトリュフの一種であるビアンケット(Tuber Albidum)はそれより遅く2~4月です。

■白トリュフの選び方

白トリュフの購入方法

白トリュフは、高価なうえ取り扱いが極めてデリケートなため、通常のスーパーや百貨店などには流通していません。一部の輸入食材を専門に扱うWEBショップなどで手に入れることが可能です。時価扱いで価格の変動が大きく、トリュフそのもののコンディション(形状・サイズ・香りの強さ・傷・虫食いなど)が各個体で異なることを理解したうえで購入することになります。実物を見ながら購入するには現地まで足を運ぶか、国内の懇意にしている高級レストランに相談してみるのも一案かもしれません。

白トリュフは予算やサイズで選ぶ

白トリュフが展示即売されているところ。©イナウディ社
白トリュフが展示即売されているところ。©イナウディ社

アルバの国際白トリュフ祭りでは、さまざまな大きさの白トリュフが展示即売されています。ここでは実物を見ながら予算に合わせてこの貴重な食材を購入することができます。

白トリュフのクリーニング方

クリーニングされた白トリュフ。©地中海フーズ
クリーニングされた白トリュフ。©地中海フーズ

生の白トリュフは、外の皮の部分に土や泥がついています。しかし洗ったり、皮を剥いたりしてしまうとそこから傷みはじめます。そのため、刷毛やブラシで土を丁寧に落としていきます。どうしても取れない場合は、少量の水をつけてこすります。

■白トリュフの食べ方

白トリュフのパスタ

白トリュフのタヤリン。©地中海フーズ
白トリュフのタヤリン。©地中海フーズ

白トリュフ料理の定番と言えるパスタ。白トリュフの香りを楽しむために、シンプルなものが好まれているようです。白トリュフのタリオリーニ(ピエモンテ方言で“タヤリン”と呼ばれる、卵を練りこんだ細麺が有名)は、原材料が白トリュフ、パスタ、バター、塩のみ。茹でたタヤリンを、フライパンでとかしたたっぷりのバターにからめて、皿に盛ってから白トリュフを削っていただきます。官能的な白トリュフの香りが最も活かされる定番料理です。

白トリュフのリゾット

白トリュフのリゾット。©地中海フーズ
白トリュフのリゾット。©地中海フーズ

パスタと並んでリゾットも定番の料理です。こちらもシンプルなレシピで、原材料は白トリュフ、米、たまねぎ、バター、洋風だし、パルミジャーノ・レッジャーノチーズ、塩でおいしくつくることができます。こちらも最後に白トリュフを刻んでかけてから、いただきます。

白トリュフの目玉焼き

白トリュフの目玉焼き。©地中海フーズ
白トリュフの目玉焼き。©地中海フーズ

もっともシンプルな食べ方が、目玉焼きに白トリュフを載せる食べ方です。つくり方はとても簡単で、軽く塩をふった目玉焼きに白トリュフをかけて完成となります。半熟の黄身と白トリュフの香りは相性抜群で、トリュフ好きのイタリア人にはたまらない逸品とまで言われています。

白トリュフは意外と日本の料理にも合う

フグの刺身と白子に乗せたトリュフ。©地中海フーズ
フグの刺身と白子に乗せたトリュフ。©地中海フーズ

白トリュフは日本でも料理に使用されています。例えば最近では、白トリュフオイルで香り付けしたラーメンを売りにしたラーメン店も増えています。 鶏スープとトリュフの香りはベストマッチだと評判です。また珍しい食材同士の「ふぐ白子と白トリュフ」なども、相性がよいとされています。さらには、白トリュフオイルを使用したチーズケーキなども販売されています。

■白トリュフを使った調味料とは?

フレッシュな白トリュフは高価なうえ、入手が困難です。イタリアでもシーズン以外にはフレッシュトリュフを味わうことはできません。そのような時に大変重宝するのが、白トリュフを使用した調味料です。白トリュフの香りを楽しむことができ、保存もきくので多くの方に愛用されています。そんな白トリュフを使った調味料を4種類、ご紹介します。

■1:白トリュフオイル

白トリュフオイル。©地中海フーズ
白トリュフオイル。©地中海フーズ

白トリュフオイルは、白トリュフのエキスをオイルに封じ込めたものです。温かい料理に数滴振りかけるだけで、白トリュフの魅惑的な香りを楽しむことができます。ただし加熱しすぎると香りが飛びやすいので、調理途中ではなく仕上げに使用するのがポイントです。パスタ、リゾット、ピッツァなどや、スクランブルエッグ、チーズオムレツなどの卵料理、赤身の肉料理など、幅広く使用されます。

■2:白トリュフ塩

オイルと並んで、料理に使いやすく手軽にトリュフの香りが楽しめるのが塩です。乾燥させた白トリュフと塩を合わせた調味料で、料理にさっとふりかけるだけでも、風味がとても豊かになります。スーパーや輸入食品店で入手できます。卵との相性が抜群なので、カルボナーラにかけたりオムレツや目玉焼きにかけたりするだけで、高級な料理に早変わりします。また、卵かけご飯にかけてみるのも意外と癖になるおいしさです。

■3:白トリュフバター

バターも使いやすい調味料として重宝されています。バターの中に白トリュフの香りが詰め込まれています。こちらも加熱はせずに、最後に料理の上に載せていただきます。リゾットやパスタ、ステーキなど幅広く使用できます。じゃがバターの要領で、茹でたてのポテトにのせていただくのも美味。

■4:白トリュフハチミツ

白トリュフハチミツ。©地中海フーズ
白トリュフハチミツ。©地中海フーズ

白トリュフを加えたハチミツで、青かびのチーズやパルミジャーノ・レッジャーノなどのハードなチーズと良く合います。もちろんアイスクリームやナッツ類などにも相性抜群です。

■世界で愛される白トリュフ

白トリュフはとても希少な食材のため、スーパーなどで目にする機会はありません。しかしその他にはない芳醇な香りから、世界中の人々に愛されています。フレッシュの白トリュフを日本で楽しむには、イタリア料理店でワインと一緒に優雅なひとときを味わうのが一番です。秋も深まってくると、白トリュフを使った特別メニューのコースも食べられるようになります。家庭で白トリュフを楽しみたい方には、オイルや塩などの調味料がおすすめです。手軽に白トリュフの香りが楽しめ、さまざまな料理に使えるので、日々の食卓にも、ちょっと贅沢したい気分のときにも活用できます。秋~冬のホームパーティーの味付けに、季節を感じられる調味料として重宝しそうです。

監修者
地中海フーズ株式会社
ピエモンテ州にあるイナウディ社の輸入総代理店として、イナウディ・ブランドの高級食材を日本に輸入している食品輸入・卸売会社。イナウディ社は白トリュフ、黒トリュフ、ポルチーニ茸製品を代表的な商品として扱う企業。これら天然キノコ類の加工品メーカーとしてだけでなく、イタリア全域から特徴ある食材を集めて製品加工を行っており、その高級食材はヨーロッパ全域で名を馳せている。世界的に有名な白トリュフの産地・アルバの街の中心部にもショップを所有し、毎年行われる国際白トリュフ祭りでは、最も大きなブースを設けている。
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この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
新井 樹