つねに成長と成功を信じ、高い目標を掲げて頑張ってきた私たちに、今、価値観の大転換が求められています。未来が見通せない今、それでもしなやかに、そして美しく生きるために必要なものとはいったいどんなことでしょうか。雑誌『Precious』3月号では特集「今こそ、『曖昧力』を身につけませんか?」を展開中。「曖昧ななかで生き抜く力」=「ネガティブ・ケイパビリティ」に注目し、新時代を歩くための心構えを解説しています。

世界が一変した今、ニューノーマルを前に、戸惑い、悩み、途方に暮れているのが正直なところではないでしょうか。そこで、さまざまな立場から寄せられたそれぞれのもやもやに対し、本特集で登場する識者4人に、各々の視点から答えてもらいました。本記事ではモデル、女優・知花くららさんと哲学者・小川仁志さんがお答えします。

知花 くららさん
モデル、女優
(ちばな くらら)1982年沖縄県生まれ。2006年ミス・ユニバース世界大会、総合第2位。2007年にWFP国連世界食糧計画のオフィシャルサポーターに就任し、現在は日本大使を務める。著書に短歌集『はじまりは、恋』(KADOKAWA)。
小川 仁志さん
哲学者
(おがわ ひとし)1970年京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。現在は、山口大学国際総合科学部教授。大学で教鞭を執るかたわら、「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。

Q:自分の物欲に対する価値観がおかしいのかと、購入品を眺めながら、もやもやが募っています。

独立して10年のごほうびにバッグとジュエリーを買い、感染予防で電車通勤を避けるため車を購入。ようやく手に入れた宝物ですが、「この時期に買い物!?」「物より経験に使ったほうが」「今どき車はシェアでしょう」など、それぞれ意見を述べてくるのです。(アタッシュドプレス・41歳)

A:自分の価値観で選び取るのは素敵なこと どうぞ、わが道を突き進んでください(知花さん)

「独立10年の記念に購入されたとのこと、それらは思い出を語る宝物ですよね。シェアという考え方が広まる今日ですが、一方で個人のストーリーも大切にしたいもの。私は『欲しいものを欲しい』と言えるのは『才能』であり、手に入れることができるのは『努力』だと思っています。あなたはその両方を備えている有能な女性。どうぞこれからも、自分の決断を大切に歩いていってください」

A:今は、相手のアドバイスも自分の言い分も有効と考えましょう (小川さん)

「こちらも先ほどの『部下との問題』の答えと同じです。すでに買ってしまった。でも非難されていると感じる。そのことが気になるという曖昧な状態を受け入れるのです。物事を『正解』と『不正解』に分けるのではなく、どちらが正しいとも言えない状況と、そこから生まれる未来の可能性を残しておく。今の時代、そんなアティテュードが希望を広げてくれるのではないでしょうか」

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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
BY :
『Precious3月号』小学館、2021年
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ILLUSTRATION :
佐伯ゆう子
EDIT&WRITING :
本庄真穂、池永裕子(Precious)