どんな宝石の輝きにも負けないきらめき。果汁が滴り落ちるようなみずみずしさ。踏みつけられてもなお伸びようとする力強さ。そんな10代の5人姉妹を主人公に、『裸足の季節』はほろ苦くも美しき青春を描く。若きエネルギーに圧倒される。
トルコの首都イスタンブールから1000㎞離れた小さな村。両親を亡くし、祖母にのびのび育てられている5人姉妹は青春まっただ中。ある日、男子生徒たちと一緒に海辺で騎馬戦をしているところを近所の女性に目撃されて大騒ぎに。叔父は「男をたぶらかしている」「傷物になっていたらどうするんだ」と怒り狂う。
この日を境に5人のメイク道具や洋服、電話、パソコンなど、“不埒”な物はすべて没収されてしまう。“良妻育成工場”と化した家では料理や掃除などを指導され、嫌っていた“クソ色”の服を着せられる。だが、そんな地獄の日々でも5人はめげない。長女は家を抜け出しBFと密会。末っ子も姉たちとともにサッカー場で鬱憤を晴らす。ところが、サッカー観戦が祖母や叔母たちにバレ、姉妹は次々と結婚を決められて…。
女は若いうちに結婚して夫に仕え、家事に勤しみ子供を産み育てよ――。そんな古い因習や価値観、人間関係にがんじがらめにされた5人の姉妹たちの抵抗を、青春映画として鮮やかに描き出し、女性の人権問題に迫る。
他人事とは思えないだろう。日本でも第一次伊藤博文内閣では文部大臣の森有礼が「良妻賢母教育」こそ国是とすべきと声明を出した。私だって父に「女は進学しなくていい」と言われたし、母親には「女の子なんだから○○しなさい」と日常的に言われて育った。幸い“自由”に生きてこられたが、「男らしく女らしく」という価値観は日本人にも根深い。
次々と権威に屈服させられていく姉妹のなかでも、自由を求め、苦難に屈しない末っ子のラーレが頼もしい。アリバイ用の人形をつくり、逃走経路を探し、命をかけて車の運転を習う。祖母のへそくりを逃走資金に自由への脱出を図る。朝焼けに燃えるイスタンブールを見て思う。明けない夜はない。
シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中。※この情報は2016年6月7日時点のものになります。
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- TEXT :
- 坂口さゆりさん ライター
- クレジット :
- 文/坂口さゆり