© 2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film -KINOLOGY
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どんな宝石の輝きにも負けないきらめき。果汁が滴り落ちるようなみずみずしさ。踏みつけられてもなお伸びようとする力強さ。そんな10代の5人姉妹を主人公に、『裸足の季節』はほろ苦くも美しき青春を描く。若きエネルギーに圧倒される。

トルコの首都イスタンブールから1000㎞離れた小さな村。両親を亡くし、祖母にのびのび育てられている5人姉妹は青春まっただ中。ある日、男子生徒たちと一緒に海辺で騎馬戦をしているところを近所の女性に目撃されて大騒ぎに。叔父は「男をたぶらかしている」「傷物になっていたらどうするんだ」と怒り狂う。

この日を境に5人のメイク道具や洋服、電話、パソコンなど、“不埒”な物はすべて没収されてしまう。“良妻育成工場”と化した家では料理や掃除などを指導され、嫌っていた“クソ色”の服を着せられる。だが、そんな地獄の日々でも5人はめげない。長女は家を抜け出しBFと密会。末っ子も姉たちとともにサッカー場で鬱憤を晴らす。ところが、サッカー観戦が祖母や叔母たちにバレ、姉妹は次々と結婚を決められて…。

女は若いうちに結婚して夫に仕え、家事に勤しみ子供を産み育てよ――。そんな古い因習や価値観、人間関係にがんじがらめにされた5人の姉妹たちの抵抗を、青春映画として鮮やかに描き出し、女性の人権問題に迫る。

他人事とは思えないだろう。日本でも第一次伊藤博文内閣では文部大臣の森有礼が「良妻賢母教育」こそ国是とすべきと声明を出した。私だって父に「女は進学しなくていい」と言われたし、母親には「女の子なんだから○○しなさい」と日常的に言われて育った。幸い“自由”に生きてこられたが、「男らしく女らしく」という価値観は日本人にも根深い。

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次々と権威に屈服させられていく姉妹のなかでも、自由を求め、苦難に屈しない末っ子のラーレが頼もしい。アリバイ用の人形をつくり、逃走経路を探し、命をかけて車の運転を習う。祖母のへそくりを逃走資金に自由への脱出を図る。朝焼けに燃えるイスタンブールを見て思う。明けない夜はない。

映画『裸足の季節』
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン 出演:ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシルほか。
小さな村で祖母や叔父とともに住む5人姉妹。ある日、彼女たちの振舞いからいっさいの外出を禁止されてしまう。アカデミー賞外国語映画賞をはじめ、世界各地の映画祭で受賞が相次いだ話題作。監督はこれが映画デビュー作。
シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中。※この情報は2016年6月7日時点のものになります。
公式サイト
この記事の執筆者
TEXT :
坂口さゆりさん ライター
2017.8.25 更新
生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画をはじめ、芸能記事や人物インタビューを中心に執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。最近いちばんの興味は健康&美容。自身を実験台に体にイイコト試験中。主な媒体に『AERA』『週刊朝日』『朝日新聞』など。著書に『バラバの妻として』『佐川萌え』ほか。 好きなもの:温泉、銭湯、ルッコラ、トマト、イチゴ、桃、シャンパン、日本酒、豆腐、京都、聖書、アロマオイル、マッサージ、睡眠、クラシックバレエ、夏目漱石『門』、花見、チーズケーキ、『ゴッドファーザー』、『ギルバート・グレイプ』、海、田園風景、手紙、万年筆、カード、ぽち袋、鍛えられた筋肉
クレジット :
文/坂口さゆり
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