意外と知らない!「直木賞」の名前になっている作家・直木三十五の作品や作風は? 

明日・2月24日は、作家・直木三十五の忌日『南国忌(なんごくき)』です。直木三十五の大ヒット作『南国太平記』からとって『南国忌』という名がつけられたようです。

…さて皆さま、直木三十五といえば、現在でも毎年、話題になる文学賞『直木賞』の名のもとになった大作家ですが…

ここで本日、1問目のクイズです。

【問題1】「直木三十五」ってなんと読む?

『直木賞』の名のもとになった作家「直木三十五」の、ペンネームの読み方をお答えください。

意外と知らない方も多そうです。
意外と知らない方も多そうです。

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

正解は↓に!!
正解は↓に!!

正解は… 直木三十五(なおきさんじゅうご) です。

読み方はストレート過ぎて驚きますが、人名としては、ちょっとユニーク…。
読み方はストレート過ぎて驚きますが、人名としては、ちょっとユニーク…。

『直木賞』を知らない人はほとんどいないと思いますが、

直木三十五のフルネームや読み方は、意外と認知度が低いかと思います。併設の『芥川賞』の名のもとになった「芥川龍之介」の名が読めない人や、作品を読んだことが無い日本人はほとんどいなそうなのに、なぜでしょう?

『芥川賞』は芥川龍之介の作風と同じく「純文学」の作家に与えられる賞、『直木賞』は「大衆小説」、つまりエンターテインメント性の強い作品に与えられる賞、ということで、直木三十五の作風は大衆娯楽小説です。

芥川龍之介、直木三十五ともに、大正時代~昭和初期に活躍した作家です。つまり二人ともほぼ同時期に活躍した、「昔の人」ですが、国語の教科書等の教材にもなる正統派=純文学ジャンルのほうが、後年の知名度としては有利な条件だった、ということなのでしょうか?

…というところで、本日2問目のクイズです。

【問題2】『直木三十五』の「三十五」の数字の意味って?

ペンネーム『直木三十五』の「三十五」という数字は、もともと、何を表現した数字だったでしょう?次の選択肢の中から正しいものを選んで下さい。

1:年齢

2:作品数

3:交際相手の数

「直木三十五」の「三十五」という数字、もともとは何を意味していた?
「直木三十五」の「三十五」という数字、もともとは何を意味していた?

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

正解は↓に!!
正解は↓に!!

正解は… 1:年齢 です。

なんと、年齢に合わせて毎年、ペンネームを変えていたのです!

直木三十五は、31歳当時のペンネームが『直木三十一』、32歳になったら『直木三十二』…と言う形で、本名の「植村宗一」の苗字の1文字「植」をもじった「直木」という苗字に、作家の執筆当時の年齢をくっつけて使う、というスタイルから生まれたペンネームです。

直木が34歳の時に、原稿を扱った編集者のミスで「直木三十三」のまま掲載されてしまい、のちに『直木賞』を創設する菊池寛が「いいかげん、ペンネームを変えるのはやめろ」と勧め(?)たことなどから、「直木三十五」に落ち着いた、と言われています。

このような感覚でペンネームをつける人ですから、直木三十五は、大変ユニークで多作な文筆家でした。新聞に小説を連載するような人気作家としても活躍しながら、週刊誌のゴシップ記事なども多数、手掛けており、

「先に大金を消費してしまったので、そのツケや借金を返すために膨大な仕事を量産する」という、豪放磊落な人生を送ったようです。稼ぎもすごいけれど、使うお金はそれ以上、という人で、25歳以降、昭和9(1934)年の2月24日に43歳の若さで亡くなるまで、自宅=自分が定期的に家賃を収める住処、を持たずに、ひとさまの住まい等に間借りする生活をし続けた、と言われています。

あまりに型破り、お行儀の良い人生を送ったとは言えない人なので、『直木賞』の知名度のわりに、正面から人物像を解説する媒体や、機会が少ないのかもしれません。

直木三十五の作品で、現代でもわかりやすいのは『黄門廻国記』でしょうか。テレビの時代劇ドラマとして息の長い人気を博した『水戸黄門』の原作と言われる作品です。それまで知識層にしか好まれなかった歴史文学にふんだんなエンターテイメント性を盛り込んで、大衆にも愛される作風を確立した功績は、大きく評価されています。

『黄門廻国記』はご存知、水戸光圀の諸国漫遊+世直しモノ、

『南国忌』の名前の由来となった新聞連載小説『南国太平記』は、幕末の薩摩藩のお家騒動に呪術師が絡み、「呪いによる暗殺」というオカルティックな攻防を歴史上の人物たちが繰り広げる、という要素で大衆を熱狂させました。この作品を原作とした映画が、同時に2社で制作され、同日に封切りされた…という史実に、当時の賑わいが伺えます。

本日は、2月24日『南国忌』にちなんで、知名度のわりに謎の多い作家

・直木三十五

のペンネームの読み方、由来、トリビアなどをお送りしました。

この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
BY :
参考資料:『直木三十五伝』植村鞆音(株式会社文芸春秋)
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
ILLUSTRATION :
小出 真朱