「釦」ってなんと読む?「かねくち」ではありません。…毎日使っているものかも!?
明日・3月2日は、江戸時代の名奉行として名高い、遠山景元(とおやまかげもと)=『遠山の金さんの日』と言われています。
1840(天保11)年の3月2日は、遠山景元が江戸の北町奉行に就任した日で、名奉行として名を馳せる活躍の起点となる記念日、という事でしょう。
「金さん」という愛称は、景元が青年期に使用していた通称「金四郎(きんしろう)」から来たものです。
町奉行という要職にありながら、桜の刺青を施した町人を装って市井で交友し、弱きをくじく悪の存在には正義の鉄槌をくだす…という、ドラマティックな「名裁き」は史実なのか?という点はこの後ご紹介することにして、
本日は「金」を部首に持つ漢字の難読クイズをお送りして参ります。
【問題1】「釦」ってなんと読む?
「釦」の、1文字で単語として成立する読み方をお答えください。
ヒント:「衣服の合わせ目や開きをとめるもの」「指で押して機械や装置などを動かす、突起状のもの」などの意味を持つ言葉です。
<使用例>
「『遠山の金さん』の現代版を作るとしたら、刺青披露シーンは、シャツの釦をはずすのが大変そうね。」
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 釦(ボタン) です。
さて、『遠山の金さん』といえば「名裁き」ですが、エンタテイメント作品に登場するような「名裁きエピソード」は後から作られたもので、史実との関連はない、と言われています。
「金さん」がモチーフとして最初に使われたコンテンツは、江戸時代のお芝居で、遠山景元本人が存命していた時代です。
実は遠山景元、天保の改革で町人文化へのしめつけが厳しかった時代に、町人側の気持ちに添った政治を多く行った人で、
特に、当時の町人の大きな楽しみであった芝居小屋の廃止案があがった際、「廃止ではなく移転」という寛大な処置に落ち着け、演劇関係者から大変に感謝されたのです。
その感謝の表れが「名奉行・遠山の金さん」というヒーロー・コンテンツ…というわけです。
さて、このあたりで2問目の「金」クイズを入れておきましょう。
【問題2】「鑷」ってなんと読む?
「鑷」の、1文字で日本語として成立する読み方をお答えください。
ヒント:「毛・ひげ、とげなどをはさんで抜き取る道具」という意味の言葉です。
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 鑷(けぬき) です。
同じ字で、「鑷子(ジョウシ、セッシ)」=ピンセット、という意味の単語もあります。
さて、『遠山の金さん』には、エンタテイメント的な演出も盛り込まれていると思いますが、
それにしても「町人の変装で市井に溶けこむ」「刺青がある」などの要素は、ゼロから作るには、ちょっと奇抜ですよね?
これらの要素は完全なフィクションではなく、遠山景元が実際に持っていた要素を、エンタテイメントの作家たちがショーアップしたもの、と考えられます。
遠山景元は名家の生まれで、父も要職に就いていた切れ者でしたが、家庭環境が複雑でした。
景元の父は、後継ぎのいなかった遠山家に養子縁組で入った人でしたが、
後年、父の養父(遠山本家の、景元の祖父)に男子の実子が生まれ、その子は景元の父の養子…つまり、景元の兄、という形で扱われる形になったのです。…そのような事情のある家庭で育った景元は、青年期に家を出て町家で放蕩生活をしていた時期がある、と言われています。その際に名乗ったのが「金四郎」の通称で、この頃、実際に刺青を入れたらしい、という伝聞は残っています。
一時の放蕩の後に家に戻り、その後は本来の優秀さを発揮して奉行職などに抜擢されるわけですが、
景元が、武家でありながら、町人や弱き者の側に添う姿勢を持っていたのは、生い立ちや経験が影響している、と考えるのが自然でしょう。
本日は、3月2日『遠山の金さんの日』にちなんで、遠山景元のトリビアをお送りしながら、「金」を部首に持つ難読漢字
・釦(ボタン)
・鑷(けぬき)
を、クイズでおさらいしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- BY :
- 参考資料:『実説 遠山の金さん 名奉行遠山左衛門尉景元の生涯』大川内洋(株式会社近代藝社)/『遠山景元 老中にたてついた名奉行』藤田覚(株式会社山川出版社)
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱