今やすっかり耳慣れた言葉「サステイナブル(=Sustainable)」。「持続可能な」という意味のこの言葉は、地球を取り巻く環境が大きく変化している今、これまで以上に大きな役割をもつ言葉といっていいでしょう。

とりわけ「食」の世界では、限りある資源をどう使うのか、どう残していくのかは切実な問題。それゆえ、地産地消やフードロス問題など、トップシェフたちは早くから「持続可能な」仕組みづくりを意識してきたのです。

『Precious』4月号では、「『サステイナブル』と共存する、食の最前線」として、「ラグジュアリー」と「サステイナブル」の共存。一見すると両立しないように思えるこのふたつの言葉と共に進化する、ラグジュアリーレストランの「今」に迫りました。

本記事では、新たな「サスティナブル」に向かっているラグジュアリーレストラン4店舗をご紹介します。

■1:カンテサンス | その日手に入るベストな食材を、ベストな状態で使いきる

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「カンテサンス」のコースから、ホタテ貝のパイ包み焼き(アンクルト)。

カンテサンスのメニューは白紙。予約時にお客様の苦手なものを必ず聞き、その日仕入れた食材を最高の形で調理。そうすることで、料理のクオリティが上がるのはもちろん、食材をピークの状態で使いきることができます。

「自然の恵みである食材の魅力を大切にして、料理人の知識と技術を使い、いちばん『おいしい』状態で提供したい」というオーナーシェフ岸田周三さんの想いに、ラグジュアリーとサステイナブルの共存を感じます。

医療従事者をお弁当で応援する「スマイルフードプロジェクト」にも参加。

詳細記事:三つ星フレンチレストラン「カンテサンス」|ミシュラン グリーンスターを獲得する、食材への深いリスペクト


■2:シンシアブルー | おいしく楽しく食べながら、海の未来を守りたい

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「シンシア」のスペシャリテ「たい焼き」(魚のパイ包み。この日はASC真鯛)。

国際認証「MSC・ASC」を取得した漁業や、持続可能性を向上させる漁業改善プロジェクト「FIP・AIP」に取り組む生産者から調達したシーフードをメイン食材とした、ビュッフェ形式のレストラン。

メニューには国際認証マークも記載されていて、「サステナブルシーフード」について熱心に質問するお客様も多いそう。食の未来について考える、食育の場にもなっています。

詳細記事:ミシュランシェフが手がけるレストラン「シンシアブルー」|ビュッフェ形式でサステナブルシーフードを堪能


■3:ファロ | ガストロノミーとヴィーガン、同じテーブルで多様性を認め合う

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ランチのヴィーガンコースより、メイン「大根テリーヌのソテー バルサミコソース」。

エグゼクティヴ・シェフである能田耕太郎氏が就任当初から取り組んでいるのが動物性食材を使わないヴィーガン・メニュー。『スタッフ全員がフードキュレター』を目指し、日本各地から取り寄せた食材を余すことなく使いきることを共通のスピリットとしています。

各スタッフが生まれ故郷の食材や文化を今一度学びんだ結果、スタッフの地元の食材を使うことが多いのだとか。「ヴィーガンというスタイルを通して多様性を学ぶほか、自身の郷里を知るということもサステイナブルな視点」(能田シェフ)

詳細記事:一つ星レストラン「ファロ」で、目でも舌でも楽しめるヴィーガン・メニューを堪能


■4:レヴォ | 究極の地産地消を追求する、世界レベルの美食オーベルジュ

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利賀村の在来種、赤かぶを腐葉土で包み焼きに。

人里離れた富山の秘境で、「前衛的地方料理」を提供するレヴォ。きっかけは、この地の「水」の清らかさと美しさ、おいしさに心底感動したこと。

「自然に感謝し自然と共に謙虚に生きること。その地の食や文化を守っていくこと。料理人として、原点に帰るような気持ちになります。こんな変化も、サステイナブルなあり方かもしれません」(谷口英司シェフ)

詳細記事:世界レベルのオーベルジュ「レヴォ」|大自然に囲まれた秘境の地で、前衛的地方料理を味わう

PHOTO :
篠原宏明、鈴木泰介
EDIT&WRITING :
田中美保、佐藤友貴絵(Precious)