1943年創業のデンマークの照明ブランド「LE KLINT(レ・クリント)」。1枚の樹脂シートを手で折り上げる職人技から生まれる照明は、消えているときも美しいと多くの家庭で愛され、2003年には王室御用達ブランドとなりました。実は日本の折り紙をモチーフに生まれた同ブランドの照明。その馴染み深い佇まいは日本の住宅にも自然にマッチします。

156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載では初登場となるこのブランドを、前後編の2回に分けてご紹介。

【前編】となる本記事では、クラッシックなフォルムが人気の名作「モデル26 」をピックアップ。その魅力をさまざまな角度からレポートします。

心地よさは作れる。“ヒュッゲ”の視点で選ぶシーリングライト

シーリングライトは天井から部屋全体を効率よく照らすので実用的。そのため日本の住宅でも馴染み深く、もともと設置されている場合も多い照明器具です。自宅で過ごす時間が増えたことを好機とし、さらなる心地よさを求めてみませんか? 

私のオススメは、明るさにこだわる方にも満足いただけ、作りたいお部屋のムードに合わせて調光もできる、点灯時も消灯時も彫刻のように美しいレ・クリントの名作「モデル26」です。

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美しいプリーツの陰影がインテリアのムードを盛り上げます。

レ・クリントのあるデンマークといえば、国連が3月に発表する「世界幸福度報告書」の上位国として有名です。デンマーク人が大切にする”ヒュッゲ”という言葉を耳にしたことも多いのではないでしょうか? ヒュッゲは、何かをする時間の使い方・暮らし方そのもので「自分が心地よいと感じること」を意味します。

デンマークの夏は太陽が沈んだ後に薄明かりの時間が長く続きます。この時間は「ブルーアワー」と呼ばれ、1年のうちで最も室内が美しく映えるひとときと言われています。また、冬は寒く室内で過ごす時間が長いため、家の中の心地よさを大切にする文化が発達しているのもデンマークの特徴です。

インテリアに限って言うならば、家の中を「自分が心地よいと感じること=ヒュッゲ」を基準に整えることは、幸せの近道なのではないでしょうか?

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点灯しているとき(左上)も消えているとき(右下)も美しい「モデル26」。【ブランド】レ・クリント 【商品名】Model 26-70【写真の仕様の価格】¥61,600 【サイズ】約Φ700mm 高さ200mm mm 【材質】難燃性PE樹脂 【重さ】約0.7kg 【付属品】Philips Hue電球[ホワイトシングルランプ]E26(60 W相当)2個

色や濃淡を調整できる「フィリップス ヒュー」電球の魅力

Philips Hue(フィリップス ヒュー)電球とは、スマートフォンやタブレットで簡単にコントロールできるスマートライティングシステム。Hue Bluetoothアプリで、簡単に光の色や濃淡の調整が可能です。

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レ・クリントの「モデル26」を使用した室内。その時々に応じた最適な照明の加減に調整できます。
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こちらもレ・クリントの「モデル26」を使用した室内の様子。また違った雰囲気です。

4つのステップで思いの外簡単!「 モデル26」を取り付けてみよう

少し頑張って自分で体を動かして、自宅の雰囲気をドラマチックに変えてみましょう! 今ある照明器具を外して、下記の図にあるような器具があれば、あとはコンセントを挿すような感覚で取り付けが可能。

「引っ掛けシーリング」や「引っ掛け」などと記されており、コンセントのように差し込んで時計回りに回すことでどなたでも簡単に照明器具を設置できます。

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天井にいずれかが取り付けられていれば、簡単に取り付け可能。「締めたいときは時計回り、緩めたいときは反時計回り」というのがネジの基本的な構造です。

それでは、私が実際にトライしてみた様子を、順を追ってご紹介します。

最初のステップは、コンパクトに畳まれているシェードのプリーツを広げて、立体的にする作業になります。溝に沿って指の腹を押し入れるように外側に伸ばしてきます。ひっくり返して、真ん中の山を軽く数回押すとほどよく立体的に。

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コンパクトに畳まれた状態で箱に入っています。※写真は別タイプのシーリングです。
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スルスルとスムーズに伸びて楽しいです。広がりを抑えるために通っている紐がありますが、少し余っても見えないので大丈夫。
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ポンポンと押すと綺麗な富士山のような形に開きます。

次に電源を設置して電球を取り付けます。ハシゴに登る際は安全のために二人で作業しましょう。最後に留める丸いパーツをあらかじめポケットに入れておくと作業がスムーズです。

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左/差込口を合わせて、コンセントのように差し入れます。右/カチリと手ごたえがあるまで時計回りに回します。

いよいよシェードの取り付けになります。シェードは思いの外「ぶよぶよ」しており、すこし不安になるかもしれません。でもご安心ください。ポケットに入れておいた丸いパーツが受け皿となって、程よい角度で天井にしっかりと固定されます。

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左/自由に動くシェードを受け取るときにかすかに不安になりましたが、天井に押し付けるようにすると形がカチリと決まりました。右/下を向いて部品を受け取ることはとても難しいので、ポケットに必ず丸いパーツを入れるのを忘れずに!
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シェードの頂点の穴から、固定器具のネジが切ってあるパイプを覗かせて、時計回りに丸いパーツを回し止めると、次第にシェードの手ごたえがしっかりとしたものになっていきます。手ごたえの変化の過程もお楽しみください。

最後に、気分に合わせて照明をコントロールできるようにブルートゥースを設定します。付属の電球「フィリップス ヒュー」専用のブルートゥースアプリをスマホにダウンロードして、画面に出てくる指示通りにスマホを電球に近づけて同期させればOKです。

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フィリップス ヒューのアプリ。誰でも簡単に設定できるように、ステップバイステップで指示してくれるインターフェースでした。

 折り紙が発想の原点!デンマーク老舗照明メーカー、レ・クリント

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童話作家アンデルセンの生誕地としても有名なデンマーク・オーデンセの本社に併設された工場で、今も一点一点丁寧に人の手で作られているレ・クリントの製品。

美しい陰影を生み出すレ・クリントの灯りは、職人の手仕事による“折り”のデザインが特徴。その歴史は1901年まで遡ります。デンマークの建築家のP.V.イェンセン・クリントが日本の折り紙をヒントにオイルランプの灯りを調節するためのシェードとして制作し、趣味の延長として作られ続け、親族や友人へ贈られ重宝されました。

1943年、息子のターエ・クリントが会社を設立。素材の弾力性を活かしたクリント独自の美しいフォルムのシェードをスタンドに固定できるように工夫しました。

また、ターエの弟で「デンマーク近代家具の父」と称されるコーア・クリントも数多くの優れた照明をデザイン。北欧の一般家庭で愛用されるブランドとなり、2003年にはデンマーク王室御用達にも選定されます。

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「モデル26」をはじめ、レ・クリントの代表作をデザインした起業家のターエ・クリント(1884 -~1953)

いかがでしたか? 少し手間はかかりますが、その過程も楽しみことが幸せなのだとしたら暮らしそのものがワクワクするものに感じられてきますよね。

幸せの基準が大きく変わる今、家電売り場では画面越しの相手に自分をよりよく見せるためのリングライトが飛ぶように売れているそうですが、その前にまず自分が今いる空間の心地よさを楽しむ心の持ち方の方が豊かな気がしませんか? ぜひその効果を味わってみてください。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM