アルファベットを独特な美しい書体で書く技術「カリグラフィー」。
さまざまなスタイルがあり、著名な書体をあげると「イタリック体」や「ゴシック体」、「アンシャル体」など。完璧に整った文字として、書体を美しく見せるための規則があり、文字の傾斜やペン先の角度など、厳密なルールにのっとって書くのが基本です。
今回お話をお聞きしたのは、カリグラファーとして活躍する島野真希さん。
ワークショップではカリグラフィーの持つ「手書きの魅力」を伝え、カリグラフィーを使ったライフスタイルのアイディアを提案しているアーティストのひとり。そんな彼女のカリグラフィーのスタイルは、従来のカリグラフィーとは少し違うそう。
一体、どんなカリグラフィーなのでしょうか?
自由度が高いのが「モダンカリグラフィー」
■思うがまま、自分のスタイルで書くカリグラフィー
「私がワークショップなどで教えているのは「モダンカリグラフィー」。伝統的なカッパープレートやイタリックなどの書体は文字の高低差や傾斜にルールがあるのですが、モダンカリグラフィーは従来のカリグラフィーに比べ文字を自由にアレンジでき、アート性やデザイン性の高いフリーなスタイルなんです」(島野さん)
「たとえば漢字の書体に置き換えてみると、楷書や隷書などは形や書き方がある程度決まっていますよね。ですが、モダンカリグラフィーの文字スタイルは規則にとらわれません。形式でいうと創作書道やデザイン書道に近いと思っていただければ分かりやすいと思います」(島野さん)
正解がないのが「モダンカリグラフィー」の面白さのひとつと話す島野さん。
そんな彼女がカリグラフィーに興味をもったのが5年前。そのころはちょうどアメリカを中心に「モダンカリグラフィー」の人気に火がつき始めた時期。元々、書道を学んでいた経緯もあり、日本で誰もやっていなかったモダンカリグラフィーに興味を持ち、独学で始めたのだそう。
では実際に「モダンカリグラフィー」ではどんな道具が必要になるのでしょう。
■モダンカリグラフィーに必要な道具って?
モダンカリグラフィーを始めるにあたり必要になるのがペンとインク。
「私が書いているようなスタイルのモダンカリグラフィーには、まず先の尖ったペン先とペンホルダーが必要です。ペン先は種類によって先のしなやかさが違い、筆圧をコントロールし文字の太さを変えます」(島野さん)
ペン先にかかる筆圧の強弱によって、アルファベットの太い線と細い線を表現していくのだとか。ペン先の向きと角度が肝になり、正しい方向に向けて書くことが重要です。
そして次に必要になるのがインク。ペン先に色を染み込ませ文字を書いていきます。
「私は作品に合わせてペンやインクを使い分けています。インクは水性のものや、アクリルの絵の具、墨を使うときもありますね」と島野さん。
「上達への近道は?」と聞くと、基礎的なペンの方向や角度をきちんとおさえ、繰り返し練習していくことが大切とのこと。
■カリグラフィーを使ってホームパーティーを華やかに
日本ではややブライダルでの利用が多いカリグラフィーも、島野さんはライフスタイル全体に落とし込んだアイディアを展開。
見ればすぐカリグラフィーにチャレンジしたくなるホームパーティーでのアイデアを教えていただきました。
こちらは思わず感嘆の声が出てしまいそうな、カリグラフィーを使ったテーブルコーディネート。
お料理に添えたときも、飾りの一部として盛り付けを華やかにしてくれます。
紙に二箇所切り込みを入れて文字を書き、グラスに差してアレンジ。
お祝いシーンならそのままワインの瓶に名前やメッセージをカリグラフィーで書いても喜ばれるのだそう。
紙にしたためることの多いカリグラフィー。こちらはメノウの石を薄く切り取った「アゲートスライス」の上に耐水のインクで書くというアイディア。ネームプレートやコースターとして使えば、カラフルな色合いでテーブルが華やかになりそうです。
ホストとしてゲストをもてなすのが、主催者の役目。ですが、招かれたときも手土産に手書きのメッセージを添えてみてはいかがでしょう? 「ありがとう」の気持ちがより伝わるホームパーティーになりそうですね。
「ホームパーティーで誰かをご招待するとき、時間をかけて素敵なおもてなしのアイディアを考えると思います。誕生日だったり、季節のイベントだったり。文字を書くという時間をかけたプロセスを通じて、自分の『おもてなし』の気持ちをより相手伝えることができ、カリグラフィーでいっそう素敵にコーディネートできると思います」(島野さん)
■自分の愛せる文字を届ける
いろんなシーンやものに応用できるから、その人のアイディア次第で広げていけるのがカリグラフィーのよい点。テーブルコーディネートに加えたり、お客様にプロダクトを納品する際に手書きのメッセージを添えたり。
島野さんのワークショップに参加する方々は、自分の仕事や生活にプラスアルファできるカリグラフィーの親和性を気に入って通う方が多いそう。
「モダンカリグラフィーは最終的に自分自身が愛せるオリジナルの文字に出合うことがゴールだと思うんです。もちろん、最初から独自の文字を表現するのは難しいこと。繰り返し練習していくなかで、誰にも真似できないその人らしい温もりの文字をつくっていきます。そんな自分の愛せる文字を誰かに手で書いて届けられることがモダンカリグラフィーの魅力です」(島野さん)
ペンを持つのはその人自身。「ありがとう」や「おめでとう」など言葉で感謝やお祝いを伝えるのも良いですが、カリグラフィーはそんな気持ちをより深く相手に届けてくれそうですね。
公式サイト
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 高橋優海(東京通信社)