雑誌やテレビで特集が組まれるなど、猫ブームが起きている昨今。そこに映し出されるかわいい猫たちの姿に癒され、自分も飼ってみたいと思う人も少なくないと思います。

一方で、心ない飼い主に捨てられるなどして、保健所で殺処分されてしまう猫もあとを絶ちません。そういった、行き場をなくしてボランティア団体や個人に保護された猫のことを「保護猫」と言います。

保護猫たち

そんな保護猫をテーマに写真集『HOGO猫』を出したのが、『飛び猫』や『フクとマリモ』など猫の生き生きとした表情をとらえてきた、写真家の五十嵐健太さん。

多くの猫が保健所で殺処分されてしまう現状に心を痛め、「現状を知ってもらうきっかけや、保護猫を飼ってみようと思う人を書籍で増やし、保護猫の譲渡数を増やして殺処分を減らせたら」と、今回の撮影にのぞんだそうです。

■片足を失っても人や猫と幸せに暮らすシュウ

たとえば、行政施設に収容され、殺処分寸前のところを保護猫カフェ「ねこかつ」に保護されたシュウ。保護された当初はガリガリに痩せ細っていて、足に大怪我を負った状態だったそうです。

人に甘えるシュウ

残念ながら片足を切断することになりましたが、その後「ねこかつ」で現在の飼い主に出会い、同居するほかの猫とともに幸せに暮らしています。写真からもわかるように、毛並みもよくなり、痩せていたという面影も感じないほど健康的。

五十嵐さんも、「最初は心配でしたが、体に不自由なところがあっても、普通の猫と同じように暮らしています。高いところにもジャンプして登ります。保護猫も虐待された猫も、元気に生活している姿を写真集で見ていただけたら、と思います」と話していました。

■飼い主のおかげで人が好きになった小春

また、2011年3月11日の福島第一原発の事故後、原発近くの福島県浪江町でレスキューを行うボランティアに保護され、「ねこかつ」にやってきた、小春という猫もいます。当初は人慣れしていなかったそうですが、現在の飼い主と出会い、今ではすっかり人懐っこい猫になったのだとか。

警戒する小春

写真集で紹介されているのは、かつてはひどい状況に置かれていたり虐待されたりしていたものの、現在は新しい飼い主に出会い大切にされ、リラックスした表情を浮かべている猫たち。

五十嵐さんも、そういった猫の変化について「(新しい飼い主に)最初のお渡しで行ったときは、初めての場所なので子猫が物陰に隠れてたりするのですが、お渡し後の訪問2回目の様子を見に行ったときは、落ち着いて飼い主さんの膝の上にいて、安心しました」と話してくれました。

■保護猫カフェで生まれたポムとチョビ

そして、「ねこかつ」で保護された猫が、子猫を出産したケースも。ある団地で野良猫が増えすぎて問題になり、虐待なども起きていたことから「ねこかつ」に相談が入り、臨月のメス猫が保護されたのです。

生まれたばかりの子猫たち

五十嵐さんは「ねこかつ」に撮影しに行ったときにちょうど産まれたての子猫たちがいたことから、新しい飼い主のもとへ巣立つまで、その成長を追いたいと、3か月にわたり撮影したそうです。

母猫に甘える子猫

「親猫も、私が行ったときにはすでに人に慣れており、警戒心はなさそうでした。子猫も産まれたときから人を見ているので、同様ですね。親猫は子猫をとてもかわいがっているようでした。子猫たちは、普段は『ねこかつ』のゲージの中で生活しており、お客さんがいないときなどに少し出して遊んでいました」と五十嵐さん。

書籍でも、子猫たちが生き生きと遊んでいる様子が撮影されています。写真の子猫は新しい飼い主によってポムとチョビと名付けられた兄妹猫。兄妹そろって引き取られることは、新しい環境にも慣れやすく、とてもうれしいことなのだそう。

新しい飼い主とポムとチョビ

「新しい飼い主さんへのお渡しのときは、親猫は特にわかっていないようでしたが、子猫はまだ親猫にべったりだったので、私のほうが寂しく感じてしまいました」と五十嵐さん。

この猫たちは、新しい飼い主のもとで幸せに暮らしていますが、保護が遅れてもし、問題の団地で出産していたら、無事に生きていられたかもわかりません。今も全国のあちこちで、保護されずに劣悪な環境にさらされていたり、施設で殺処分を待っている猫たちがいるということも、事実なのです。

五十嵐さんは、猫の譲渡会つきのイベントを行い、こういった保護猫が少しでも減るようにと現在も活動を続けています。

「新宿京王百貨店での『保護ねこ譲渡会』はとても評判もよくて、譲渡数も約300匹ととても多かったです。現在は東京以外の商業施設でも、他の団体で保護猫譲渡会を提案しています。全国の商業施設で開催できたら、保護猫の譲渡数や知ってもらうきっかけを増やし、殺処分を減らせると思います」と、今後の展望についても話していました。

書籍やイベントやこの記事をきっかけに、少しでも保護猫が減るように。ひいては、そもそもどんな事情があれ猫を捨てるような飼い主が減って、保護される猫そのものがいなくなるように。

これから猫を飼う人もその予定がない人も、飼うときは本当に責任と愛情をもって家族に迎え入れることができるのかどうか、どんなことがあってもその猫を大事にできるのかどうかを、改めて考えていきたいですね。

PROFILE
五十嵐 健太(いがらし けんた)さん
写真家。1984年、千葉県出身。表情豊かな猫の写真を撮影し、テレビや雑誌、新聞などで話題に。日々、全国の猫を撮影し、積極的に展覧会を行っている。
公式サイト
この記事の執筆者
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WRITING :
Mami Azuma
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