人生相談って「お年寄りが新聞に投稿するもの」という地味なイメージを持ちがちだけど、最近、町田 康、津村記久子という名うての芥川賞作家が続けて「悩み」に向き合う本を刊行。
町田さんの『人生パンク道場』は文芸誌の連載で、読者からの投稿に答える形式。津村さんの『くよくよマネジメント』はだれかの相談に乗るものではなく、彼女が自分のくよくよしがちな性格をとことん分析。人生相談されてもいないのに、答えを出しちゃったような味わいがすごい!
2冊の共通点は、「この悩みの何が悩みなのか」に迫っていること。キャリア世代って、仕事では上司からも部下からも、家族だと親からも子供からも(そして夫からも!)、つまり上からも下からも(横からも!)、悩み事を打ち明けられがちだ。で、たとえば後輩からの「家族が冷たい」という相談をよくよく聞いてみると「母が洋服代を貸してくれない」という「金かい!」だったりする。また、夫の「新規プロジェクトが不穏」という悩みも、「実はグループ内のふたりが以前、男女の仲でさ」などという「恋愛かい!」だったりするのだ。
うなずく方も多いと思うが、相談してるくせに悩みを隠そうとする人間は多い。プライドかもしれないし、本当に悩みの核心にたどり着けないでいるのかもしれない。ただの愚痴なら疲れるだけだが、他人の悩みは実は貴重。だからこそ新聞や雑誌に人生相談がある。読んで絶望的な気持ちになるものは載らない。だれかの悩みは必ずだれかの糧になる。人生相談はエンタメなのだ。町田さんの、相談者以上ののめり込みぶり、津村さんの「“くよくよ”と“さばさば”に貴賤なし」「明日の自分を接待する」などの名言にシビれよう!
- TEXT :
- 間室道子さん 代官山 蔦屋書店コンシェルジュ
- BY :
- 『Precious8月号』小学館、2016年
- クレジット :
- 撮影/田村昌裕(FREAKS) 文/間室道子