栃木県日光市、中禅寺湖畔にたたずむ旧英国大使館別荘
栃木県日光市、中禅寺湖畔にたたずむ旧英国大使館別荘

栃木県日光市、中禅寺湖畔にたたずむ旧英国大使館別荘が、復元工事を終え、2016年7月1日より一般公開されています。

明治中期から昭和初期まで、日本に滞在する欧米人の避暑地として人気を集めた日光、中禅寺湖。湖畔には大使館をはじめ多くの別荘が建ち並び、“夏は外務省が日光に移る”といわれたほど、国際的なリゾートとして賑わいました。

『一外交官の見た明治維新』(岩波文庫)などを著し、明治維新にも大きな影響を与えたイギリスの外交官、アーネスト・サトウが日本にやってきたのは1862年(文久2年)のこと。その後、駐日英国公使となったサトウがこよなく愛したのが、生国に気候や風土が似た、自然豊かな奥日光でした。

栃木県日光市、旧英国大使館別荘から中禅寺湖を望む
栃木県日光市、旧英国大使館別荘から中禅寺湖を望む

サトウは1872年(明治5年)に、この地を初めて訪れると、3年後に英文のガイドブック『日光案内』を刊行。1896年(明治29年)には中禅寺湖の南岸に自らの山荘を建て、登山や植物採集にいそしみました。コミック『ふしぎの国のバード』(KADOKAWA/エンターブレイン)の主人公である明治初頭の英国人女性冒険家、イザベラ・バードもこの山荘に滞在し、山荘から眺める風景の素晴らしさを綴っています。

その後、英国大使館別荘となり、2008年(平成20年)まで利用されていた建物は、築120年に及ぶ木造2階建て。一般公開された今、1階はアーネスト・サトウの生涯や彼が愛した奥日光を紹介する展示スペースに。2階はサトウの活躍と同時期、ヴィクトリア調時代であった英国のアーツ・アンド・クラフト運動などを紹介しています。

英国大使館別荘の1階。アーネスト・サトウの生涯や彼が愛した奥日光を紹介する展示スペースに
英国大使館別荘の1階。アーネスト・サトウの生涯や彼が愛した奥日光を紹介する展示スペースに

2階の広縁からは、ゆったりとした中禅寺湖の眺めが広がり、奥のテーブルでは紅茶やスコーンなどの英国式ティータイムが楽しめるほか、隣接する「イタリア大使館別荘記念公園」では、著名な建築家で外交官でもあったアントニン・レーモンド設計による別荘も見られます。1928年(昭和3年)に建てられ1997年(平成9年)まで歴代の大使が使用していた建物は、杉皮張りで仕上げられた、自然に調和する美しいたたずまいも見所。

今週末、どこに出かけよう──まだお決まりでないなら、古き良き避暑地の趣を楽しみに、中禅寺湖へ足を向けてみるのもいいかもしれません。

問い合わせ先

  • 英国大使館別荘記念公園
    TEL:0288-55-0880
  • 住所:栃木県日光市中宮祠2482
    開館期間:4月1日~11月30日
  • 休館日:6月~10月までは無休。4月、5月、11月は毎週月曜休館(祝日の場合は翌火曜日)
    観覧料:大人200円、小人100円(ともに税込)
    問い合わせ先:日光自然博物館
この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2017.9.1 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
クレジット :
文/吉川 純